RFIDソリューションEXPO 2007レポート

さまざまな分野で実運用が始まったRFIDシステム


岡田 大助
@IT編集部
2007年6月15日
実運用フェイズに移行したRFIDシステムが増えてきた。RFIDの総合展示会「RFIDソリューションEXPO2007」で見かけた最新ソリューションをレポートする(編集部)

 2007年5月16日から18日までの3日間、東京ビッグサイトで「第2回 RFIDソリューションEXPO(RIDEX)」が開催された。初めて開催された昨年と異なり、今年は製造、物流、サービス、小売、アミューズメントなどさまざまなジャンルにおいて、実際に運用されているRFIDシステムが展示されていた。その中からいくつかを取り上げて紹介しよう。

【併設イベント レポート一覧】

第4回 情報セキュリティEXPOレポート
http://www.atmarkit.co.jp/fsecurity/special/101ist2007/ist01.html
第10回 組込みシステム開発技術展(ESEC)イベントレポート
http://www.atmarkit.co.jp/fembedded/trend/esec2007/esec07_01.html
第17回 ソフトウェア開発環境展(SODEC)イベントレポート
http://www.atmarkit.co.jp/fwcr/rensai/wcrwatch18/wcrwatch18.html
 

 QRコードとRFIDを適所適材で使い分ける

 一般的なRFIDシステムの主な導入目的に、既存のデータキャリアであるバーコードとの置き換えが挙げられる。しかし、さまざまな要因によって、完全に置換してしまうのは現実的ではない。RFIDに置き換えることによってメリットが得られる部分、デメリットが発生する部分を見極め、適所適材で使い分けることが重要だ。

 デンソーウェーブは、2次元バーコード「QRコード」を開発した企業だ。製造や物流の現場において、QRコードを利用したシステムを構築し、トレーサビリティや品質管理、作業効率の向上に役立てている。固定式スキャナ「QD20」は、レーザーマーカーで印字されたQRコードを1ミリ秒で読み取る。これは、1分間に300メートル進むベルトコンベア上を流れる製品のQRコード読み取りに十分対応できる速度だ。

 レーザーマーカーを使って製品上(基盤や部品)に直接、5ミリ角のQRコードを印字する方法をダイレクトマーキングという。RFIDタグを張り付けられないような小型基盤、金属製部品などにはこの方法が適している。基盤や部品にコードを付与し、管理することで、類似部品の混入を防止や不良品発生時の回収作業の効率化が図れる。

左)基板に印字されたQRコード(画像をクリックすると拡大します)
右)部品に印字されたQRコード(画像をクリックすると拡大します)

 基盤や部品を組み上げたものが製品となるが、製品レベルであればRFIDタグを利用することもたやすい。バーコードは視線が通っていなければ読み取ることができないが、無線を使うRFIDであれば制限がなくなり、納入や出庫時の検品作業、棚卸などの在庫管理を効果的に実施できる。このような適所適材な使い分けを視野に入れ、デンソーウェーブでは、既存のQRコードハンディ端末と同様の使い勝手を維持したまま、UHF帯のRFIDタグに対応したハンディリーダ「BHT-232QWU-CE」を新たに発表した。

左)分速300メートルのベルトコンベア上を流れるQRコードを確実に読み取る
右)QRコードとUHF帯RFIDに対応したハンディ端末「BHT-232QWU-CE」

 低コストな小型センサー付きアクティブタグが登場

 トッパン・フォームズのブースは、意欲的な新製品が数多く出品されていた。まず、500円硬貨とほぼ同じ大きさの小型アクティブタグ「アクトチェイン」は、1分ごとの間欠動作設定の場合、ボタン電池CR2032で約7年の寿命を実現した。この「7年」という寿命の設計は、小学生の登下校管理を念頭に置いている。つまり、入学から卒業まで電池交換が不要なのだ。価格は10万ロットで1個1000円程度を予定している。

 また、アクトチェインには温湿度センサーを組み合わせた「アクトチェインセンサー」、さらにデータ蓄積用に64KBのメモリを搭載した「アクトチェインロガー」も用意されている。こちらは、施設内の空調管理、固定物品の状態計測、生鮮食品や医薬品などの低温物流での利用が考えられている。

500円硬貨とほぼ同じ大きさのアクティブタグ「アクトチェイン」


 MIFAREとFeliCaの上位互換プロトコル「NFC」、実用化へ

 非接触ICカード分野で、NFC(Near Field Communication)と呼ばれる非接触IC用無線通信規格が注目されている。NFCは、ソニーとロイヤルフィリップスエレクトロニクス(現NXP)が共同開発したもので、2003年にISO/IEC IS 18092として国際標準化されている。NFCは、両者の上位プロトコルとして互換性を持つ。

 ソニーといえば、いわずと知れたFeliCaの開発元であり、フィリップスは欧米で主流のICカード規格「MIFARE」の開発元だ。ちなみに、日本国内ではMIFAREは「TypeA(ISO 14443 TypeA)」として流通しており、かつてはNTTのICテレホンカードに採用されていた。

 トッパン・フォームズは2007年9月にUSB接続型のNFCリーダを発売する(予価1500円)。その後、miniSDタイプや組み込みタイプのNFCモジュールを投入する予定だ。例えば、NFCモジュールが入った携帯電話をPCのNFCリーダにかざすだけで、データのやり取りができる。

 トッパン・フォームズでは、独自の拡張機能として、Bluetoothを使ったデータ転送時の機器認証にNFCを使う「Bruetoothハンドオーバー」や、ホットスポットなど無線LANのアクセスポイントとの接続認証にNFCを使う「WiFiハンドオーバー」などを開発している。        

USB接続型のNFCリーダ

 
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Index
さまざまな分野で実運用が始まったRFIDシステム
Page1
QRコードとRFIDを適所適材で使い分ける
低コストな小型センサー付きアクティブタグが登場
MIFAREとFeliCaの上位互換プロトコル「NFC」、実用化へ
  Page2
RFIDを使った引越が主流になる、かも……
光ファイバー1本単位で配線管理の効率化
オンデマンドでICタグラベルを作成できるプリンタ

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