Security Tips | ||
QuickMLでメンバーを容易に追加できないようにする 宮本 久仁男 |
QuickMLとは、手軽にMLサーバを構築、運用するためのRubyプログラムである。利用者も多いが、QuickMLで運用しているMLサーバに対して攻撃を仕掛けてくる人がいるとも聞く。QuickMLのコンセプトと異なるテーマではあるが、そういう攻撃をはじくような設定2つをここでは紹介する。どちらの方法もQuickMLを稼働させているサーバ上にてroot権限で作業する必要がある。
なお、この検証は、QuickMLサーバのプログラムを配布アーカイブからインストール、運用しているような環境を想定している。設定ファイルは/usr/local/etc/quickmlrcに、ML設定ファイルは/usr/local/var/lib/quickml配下に存在する「ML名」で始まる複数のファイルである。
●MLサーバの動作権限を変更し、メンバーを記録した設定ファイルをユーザーが書き込みできないように設定する
QuickMLは、quickmlrcファイルの中の「:user」および「:group」の指定を変えることで、QuickMLサーバの動作ユーザーを変更することが可能である。quickmlrc.sample(設定ファイルのサンプル)中ではrootに設定されている。
これを利用して、
- 動作権限を一般ユーザーのものにする
- メンバーを記録したファイルのみ所有者を変更し、そのユーザーが書き込みできないようにする
としておく。
今回は、QuickMLの動作権限をユーザー、グループをquickmlとし、その中でsample@atmarkitというファイルのみ所有者を変更した。
-rw-r--r-- 1 wakatono root 39 Sep 22 08:07 sample@atmarkit |
この設定を行った状態でユーザーを追加しようとすると、以下のようなエラーがログに残る。
2004-09-22T08:30:59: MAIL FROM:<wakatono@example.org> |
●ML設定ファイルの属性を変更し、QuickMLサーバプログラムからのユーザー追加ができないようにする
この方法は、以下の条件をすべて満たす場合に威力を発揮する。
- 何らかの理由でQuickMLサーバをroot権限で動作させなければならない
- MLサーバにchattrコマンドが使えるLinux系OSを使用している
具体的な方法は、 「ファイルに対する書き込みを『追記モード』でのみできるようにする」というものだ。
まず、メンバーを記録したファイルに対して、root権限でchattr +aを実行する。設定されているかどうかの確認は、lsattrコマンドを使うことで可能だ。
# lsattr sample\@atmarkit |
この属性の付与の仕方はLinuxのext2ファイルシステム独自のものである。ほかのOSでも同様の設定が可能なものもあるので、読者の環境に合わせて試してみてほしい。
なお、このような設定を施した状態でのメンバー追加は、やはり前述の例と同じエラーになる。どちらの場合も、QuickMLサーバは継続して稼働し続けるが、エラーになったメールはそれ以上処理されないので注意のこと。
Security Tips Index |
- Windows起動前後にデバイスを守る工夫、ルートキットを防ぐ (2017/7/24)
Windows 10が備える多彩なセキュリティ対策機能を丸ごと理解するには、5つのスタックに分けて順に押さえていくことが早道だ。連載第1回は、Windows起動前の「デバイスの保護」とHyper-Vを用いたセキュリティ構成について紹介する。 - WannaCryがホンダやマクドにも。中学3年生が作ったランサムウェアの正体も話題に (2017/7/11)
2017年6月のセキュリティクラスタでは、「WannaCry」の残り火にやられたホンダや亜種に感染したマクドナルドに注目が集まった他、ランサムウェアを作成して配布した中学3年生、ランサムウェアに降伏してしまった韓国のホスティング企業など、5月に引き続きランサムウェアの話題が席巻していました。 - Recruit-CSIRTがマルウェアの「培養」用に内製した動的解析環境、その目的と工夫とは (2017/7/10)
代表的なマルウェア解析方法を紹介し、自社のみに影響があるマルウェアを「培養」するために構築した動的解析環境について解説する - 侵入されることを前提に考える――内部対策はログ管理から (2017/7/5)
人員リソースや予算の限られた中堅・中小企業にとって、大企業で導入されがちな、過剰に高機能で管理負荷の高いセキュリティ対策を施すのは現実的ではない。本連載では、中堅・中小企業が目指すべきセキュリティ対策の“現実解“を、特に標的型攻撃(APT:Advanced Persistent Threat)対策の観点から考える。
|
|