第2回 構成が大きく変わったセキュリティポリシー 2.x系

古田 真己
サイオステクノロジー株式会社
インフラストラクチャービジネスユニット
Linuxテクノロジー部
OSSテクノロジーグループ
2006/1/14

 第1回「SELinuxの出自とキソのキソ」では簡単にSELinuxに関する再確認を行いました。今回からはいよいよSELinuxの最新動向についてお伝えします。

 SELinuxのセキュリティポリシーが2.x系に移行

 Fedora Core 4(FC4)、Red Hat Enterprise Linux 4(RHEL4)で採用されていたSELinuxのセキュリティポリシーはバージョン1.x系です。前回紹介したようにバージョン1.x系にはアメリカの国家安全保障局(NSA:National Security Agency)とSCC(Secure Computing Corporation)での研究の流れをくむ「Strictポリシー」とRed Hatが中心となって開発した「Targetedポリシー」などが存在します。

 2005年6月以降、FC5 test1やRaw Hide【注1】ではバージョン2.x系のセキュリティポリシーに変わりつつあります。2.x系では新しく開発された「Referenceポリシー」が導入され、1.x系とはセキュリティポリシーの構成が変更されています。

図1 セキュリティポリシー1.x系と2.x系の流れ

 Referenceポリシーの特徴は、モジュール化された構造です。設定が5つのレイヤに分割され、それぞれ独立して開発を行うことが可能になりました。セキュリティポリシーはベースモジュールとそれぞれのアプリケーション用のモジュールに分割されています。

図2 モジュール化されたReferenceポリシーの構造

【注1】
以前はRed Hat Linuxの開発バージョンがRaw Hideと呼ばれていましたが、現在はFedora Coreの最新開発バージョンがRaw Hideに相当します(参考URL:http://lwn.net/1998/0820/rawhide.html)。

Raw Hideを使用するためにはYumコマンドで最新の開発版リポジトリを選択してアップグレードを行う必要があります。Raw Hideはコアな開発者向けリポジトリですから、通常使用するシステムを構築するのは大変危険です。この意味がピンとこない場合はやめておくのが無難です。

 Referenceポリシーの目標

 FC5からのデフォルトポリシーとなるReferenceポリシーについてもう少し詳しく見ていきましょう。SourceForgeのプロジェクトページでは次のような目標を掲げています(少し意訳しています)。

強固なモジュラー構造:各ポリシーのリソースに対する抽象化されたアクセスとカプセル化を実現する

モジュールごとの明確な方針:方針を明確にして、開発目的とのずれを確認・修正しやすくする

文書化:
ポリシーを理解しやすくするための文書化機能が組み込まれている

開発ツールのサポート:
グラフィカルなツールをサポートして、開発・理解・解析と確認を簡単にする

先進性:
MLS【注2】を含む幅広いポリシー、ローダブルポリシーをサポートする

柔軟なベースポリシー:
OSを保護し、モジュールで定義された部分以外をサポートするポリシーを備える

ポリシーの多様性:
同一アプリケーション用でセキュリティの重点が異なるバリエーションを提供する

Multi-LevelSecurity(MLS):
同一のポリシーソースでMLSとnon-MLSの両方をサポート可能にする

【注2】
MLSはMulti-Level Securityの略で、セキュリティに階級(クラス分け)を導入する考え方です。これは情報の流れに着目したセキュリティモデルで、具体例としてはKen Bibaが提唱した「Biba Integrity Model」(主に情報の書き込みが対象)やBellとLa Padulaによる「BLP Security Model」(主に情報の読み出しが対象)などのモデルがあります。(参考URL:http://www.jpo.go.jp/shiryou/s_sonota/hyoujun_gijutsu/info_sec_tech/c-2-2.html

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Index
構成が大きく変わったセキュリティポリシー 2.x系
Page1
SELinuxのセキュリティポリシーが2.x系に移行
Referenceポリシーの目標
  Page2
Referenceポリシーをセットアップ
  Page3
/etc/selinux/refpolicyのディレクトリ構造
ポリシーモジュール用のポリシーファイルの構成


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