モバイル端末選定には「バッテリー」も重要
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前回の「業務用途で本当に“使える”モバイル端末はどれだ?」では、各種モバイル端末に対して考察したが、端末選定において重要な点を追加しておきたい。それは「バッテリー」だ。動かない端末に意味はない。「業務」において「業務時間中」にバッテリーが空になっては話にならない。交換バッテリーを用意しておくなどの回避方法はあるが、できればバッテリーは長持ちしてほしい。また、「モバイル」であるからバッテリーが軽量であることは大切だが、多くの端末の標準バッテリーは持続時間が短く、オプションの大容量バッテリーは大きく重く携帯性を損ねてしまう。
業務に特化したHT(ハンディ・ターミナル)のOSに、Windows MobileではなくWindows CEが使われる搭載機種が多いのも、バッテリー消耗の問題が理由の1つだ。現状では、利用時間の長い業務の利用で数日持つバッテリーがないため、消耗を防ぐ技術はOS含めてプラットフォームやソフトウェア共通の要素となる。
端末考察の最後に、業務に特化したHTは別として携帯やスマートフォンは機器選定が最重要だ。利用シーンを限定せずに作られている場合がほとんどなので、業務で利用できるかどうかは機器選定にかかっているといっても過言ではない。現状では、機能・重量・サイズ・コストの高バランス端末は一握りといってよいだろう。利用シーンについては、さらに後述したい。
さて前置きはこれぐらいにして、今回はUI(ユーザーインターフェイス)とユーザビリティの視点からモバイルでの業務用アプリケーション/RIAについて考察したい。
いまさら聞けないUI、そしてRIAとの関係
まず、デスクトップPCを基準として「RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)/リッチクライアントの「リッチ」とは何か?」を考えてみよう。そもそも筆者は、「RIAはHTMLの“対義語”として使われたにすぎない」と思っている。インターネットにおいて画面を表示する標準技術であるHTMLは、もともと文書表現であり、入力操作を伴う操作性の良い画面を作れず、「リッチ」ではなく「プア」であることが理由だ。
コンピュータシステムにおいて、「エンドユーザーが操作性の悪い画面を利用することの生産性悪化は、企業の業績そのものを悪化させる」と考えるべきであり、システムの高生産性や効率化によって得られる、人や時間の余裕資源を企業は戦略的に利用すべきである。また、操作性の良い、そして操作していて気持ちの良い画面は、エンドユーザーの「仕事」に対するモチベーションを高める。
□ いまこそ考え直したい、「ユーザーインターフェイス」とは何か?
さらに、「UIとは何か」をあらためて考えてみたい。機械と人間とのインターフェイスは、「HMI(ヒューマン・マシン・インターフェイス)」とか「MMI(マン・マシン・インターフェイス)」ともいわれる。人間の認知能力は昔から大きく向上したわけではないし、するわけでもない。
UIも、機器やインターフェイスを受け持つプラットフォームに合わせた「なだらかな進化」しかしていない。デスクトップPCでの標準インターフェイスであるWindows OSのUIはずっと大きな変化はなく、マウスもキーボードもしかりである。
□ ニールセン博士の定義した「ユーザビリティ」
UIは「インターフェイス」を特性とした用語だが、人間から見た使いやすさなどの点で「ユーザビリティ」という概念がある。いろいろな定義がされているが、Webユーザビリティの権威であるヤコブ・ニールセン博士の「ユーザビリティエンジニアリング原論」(東京電機大学出版局)においては、以下のように定義している。
- 効率性
システムは、一度ユーザーがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである - 記憶しやすさ
システムは、不定期利用のユーザーがしばらく使わなくても、再び使うときに覚え直さないで使えるよう、覚えやすくしなければいけない - エラー発生率
システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム使用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければいけない。また、致命的なエラーが起こってはいけない - 主観的満足度
システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければいけない
要求は多角的で「致命的なエラーが起こってはいけない」「ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう……」といった観点も定義されている。
□ RIAの「リッチ」は「高級」ではなく「有用性」
国際標準化機構のISO 9241-11においてはもっと広義で、例えば「効率(Efficiency)」では「ユーザーが目標を達成する際に、正確さと完全性に費やした資源」といった表現がある。また、ISO 9241-11の後継規格であるISO 13407はインタラクティブ・システムでの人間中心設計に関してプロセスを規格したものである。いずれも、向いているのはユーザーであり人間である。
ユーザビリティの定義は広義で、RIAは「ユーザビリティ要求を満足させることができるもの」であり「リッチ」という用語だけではこれをいい表せていない。きらびやかな画面のみをかえって想像させ、ニールセン博士などの定義とは懸け離れる印象がある。
□ そして、RIAの「リッチ」は「高生産性」
またユーザビリティは、システムのニーズである「有用性」にかかわる部分である。筆者が考える「RIA(中でもAjaxなど単一技術ではない製品化されたもの(※))」は、インターネット・システムのフロントで業務に適したアプリケーションUIを構築する機能を持つものだ。
(※)RIAC(RIAコンソーシアム)参加企業の製品としては、「Flex」「Adobe AIR」「.NET」「Silverlight」「Curl」「Nexaweb」「Biz/Browser」などがある
RIAC/RIAコンソーシアム via kwout
さらに、「RIA技術の提供者が、システム全体に対する「実用性」「互換性」「コスト」「信頼性」といった部分でアプリケーションに関する総合的な支援や保証、そして構築する際の高生産性を提供している」というのも、筆者が考えるRIAの必要条件といえる。
例えば、デスクトップPCでのRIAはPOSで利用されるケースもある。「キャッシュレジスタの制御をどうするのか?」といったことも、「RIA」がカバーする範疇(はんちゅう)だが、Ajaxは画面での単一技術であり同一に語れるものではない。
□ iPhoneは「ユーザ工学」の追求の結果
また、「ユーザ工学」においてのユーザビリティは、以下のように定義されている。
- 認知性−分かりやすさ
- 操作性−取り扱いのしやすさ(使いやすさ)
- 快適性−心地よさ
これらは、端末そのものや画面のUIも含めて、前回紹介したアップルのiPhoneのUI/ユーザビリティに見ることができる。アップルがMac OS以来追求しているのは、こういった視点である。「分かりやすく、操作して気持ちが良い」。iPodやiPhoneの操作感は、この追求の結果ではないだろうか。
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INDEX | ||
特集:新時代の業務用モバイルRIAを考える(後篇) UIとユーザビリティから考える小さい画面でのRIA |
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Page1 モバイル端末選定には「バッテリー」も重要 いまさら聞けないUI、そしてRIAとの関係 |
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Page2 コラム 「老齢社会となる日本の課題とUI」 モバイルでのRIAとUI コラム 「Androidがもたらすオープン性は日本をどう変える?」 |
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Page3 業務用モバイルRIA開発の“課題”とは? モバイルは多種だからこそ人間に合わせた進化が可能 |
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