「Social Media Week Tokyo」レポート

嫌いな人も知らないと損する
9つの「ソーシャル」のカタチ


Social Media Week Tokyoまとめレポート

五味明子
2012/3/19

【6】レシピでソーシャル“メディア事業”に参戦した楽天


楽天 執行役員 メディア事業長 チーフメディアプロデューサー 濱野斗百礼氏

 「楽天はスクラッチからメディアを作ったことが、これまでなかった。だからこそ、ゼロから始めた『楽天レシピ』は、じっくりと強いメディアに育て上げたい」

 約8000万という膨大な数のIDを武器に、ソーシャルメディア事業に本格的に参戦した楽天。中でも、すでに「クックパッド」という圧倒的な知名度を持つ競合がいるレシピ業界に、あえて「楽天レシピ」で挑んだ背景には、当然ながら勝ちにいくための戦略が潜んでいるはずだ。 ここでは、楽天 執行役員 メディア事業長 チーフメディアプロデューサー 濱野斗百礼氏による「楽天のメディアビジネスとソーシャル戦略」と題されたセッションの内容を紹介しながら、楽天のソーシャルメディア事業戦略を見ていきたい。

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 ソーシャルメディア事業を展開していくに当たって、楽天グループの強みとして以下の3つを濱野氏は挙げる。

  1. 国内最大級のマーケットプレイス
  2. 圧倒的な会員数
  3. 楽天スーパーポイント

 この3つの強みを生かすメディア事業として、「infoseek」「楽天レシピ」「楽天ブログ」「楽天Social News」「楽天woman」「楽天みんなの就職活動日記」の6つを現在提供中だ。中でも、楽天がいま最も力を入れて展開しているのが、ソーシャルな性格が強い「楽天レシピ」である。

楽天経済圏とともに、楽天以外のサイトでも決済を可能にする「楽天“準”経済圏」というエコシステムを構築中。ソーシャルメディア事業の展開においても重要な要素になる(濱野氏の講演資料より)

 「ヒト、モノ、カネが回るプラットフォーム、これが楽天のサービスの原点。かつ、ソーシャルメディアで情報を拡散させていくには、元の情報が良いものでなければ意味がない。ソーシャルプラットフォームとはヒトを媒介にするメディアであり、ユーザーの感動や気持ちが伝播していく拡散力が重要。以前は、メディアといえば媒体の大きさに頼る部分があったが、現在は良いコンテンツが自然に広がる傾向にある。楽天レシピは、それを具現化しているメディアであり、ローンチから約1年で35万レシピを集めた理由がそこにある。非常に個の力が強いメディアだ」(濱野氏)

 「ソーシャルメディアは、あえて1つのドメインに集約する必要はなく、他のソーシャルメディアの力も利用して“拡散”させていくことが成功のカギだ」と濱野氏は語る。「あるレシピがおいしいと評判になり、FacebookやTwitterを通して拡散していけば、その普及の度合いはすさまじい。何より、食の情報というのはソーシャル上に載せて中でも広げるというスタイルに非常に適している」(濱野氏)

楽天市場や楽天トラベルといった主要な楽天の事業と、Facebookやmixi、Twitterとの連携を、(優良な)コンテンツを媒介に図っていくのが楽天のソーシャルメディア戦略の基本姿勢(濱野氏の講演資料より)

 では、楽天は実際にどのように楽天レシピをビジネスにつながげているのだろうか。メディア事業であるため、やはり広告展開が重要になるが、従来のように単にバナー広告を張るだけの広告はソーシャルメディアではあまり効果が期待できない。それよりも、広告主や他メディアを巻き込んだ連動型キャンペーンなどの方が成功する確率が高くなるという。

楽天レシピの戦略は“初めにコンテンツありき”(濱野氏の講演資料より)

 その成功例が2011年末に開始したキャンペーンだ。楽天レシピでは、ファミリーマートと雑誌「dancyu」と提携し、お弁当レシピを募集。優良なレシピは実際に商品化するというキャンペーンを展開したところ、わずか2週間で1万8000を超えるレシピが集まった。関連商品の購買にもつながり、高い広告効果を挙げることができた一例である。

2010年10月にスタートした楽天レシピは現在35万レシピを突破(濱野氏の講演資料より)。「SEO的にも強いサイトになりつつある」と濱野氏

 濱野氏は「こういったキャンペーンには楽天が他の事業で培ってきたユーザーDBも積極的に活用したい。これまでは購買商品や利用サービスを基に、年代や性別、居住エリアなどでユーザー属性を分けてマーケティングしてきたが、これからは個人の価値感や好み、ライフスタイルをとらえることが重要になる。つまり、消費者の大半がターゲットになるわけで、楽天のユーザーDBが大きな役割を果たすことができる」とし、楽天自身がメディア事業の一環として広告ビジネスに注力していく姿勢も見せている。

ソーシャルメディアビジネスにおける新しい広告モデルを模索し続ける楽天。ユーザーDBの効果的な活用は今後、最も重要な課題(濱野氏の講演資料より)

 「楽天は、すべての事業・サービスにおいて“購買”が重要なコンセプト。ソーシャルメディア事業も同じ。最終的には購買につなげていけるメディアを目指す」と最後にビジネスの方向性を示した濱野氏。ソーシャルメディア事業において、レシピの次は「子育てなどの分野を狙っている」という。

 「良いコンテンツを持っているユーザーを集めるコツは?」との質問に「ユーザーの声に真摯に耳を傾けること、それがすべて。楽天レシピなら主婦の声を聞く。例えば、“買い物かご”ひとつとっても、最後まで購入してもらうために、楽天レシピでは何度も改善を繰り返している」と回答する。作り手の思いが強くなると、やり過ぎな機能が増えがちなメディアサービスだが、ソーシャルの世界にあっては、それはご法度。本当の意味で使う側の声を受け止めないと成功は望めない世界なのかもしれない。

【7】いいね!より売り上げを増やすソーシャル“コマース”


PowerReviews 創業者兼戦略パートナーシップ部門VP アンディ・チェン(Andy Chen)氏

 Facebookやmixi、Twitterを使ってマーケティングを開始、順調にフォロワー数が増えるものの、実際の売り上げ増にはあまりつながっていない、という企業は意外と多いのではないだろうか。

 「いいね!」のクリック数を増やすのではなく、売り上げを増やすソーシャルメディアの使い方として、いま米国でじわじわと需要を増やしているのが「ソーシャルコマース」というビジネスだ。会社の“ファン”ではなく“お客さま”を増やす。実は、そんな基本的な部分にフォーカスしたソーシャルビジネスは、いままでは、あまり耳にしなかったような気がする。

 このソーシャルコマースの分野で現在、米国で大きくビジネスを伸ばしているPowerReviewsの創業者兼戦略パートナーシップ部門VPを務めるアンディ・チェン(Andy Chen)氏が「米国ソーシャルコマース最新事情 『いいね!』ではなく「売り上げ」を増やすソーシャルコマース活用法」と題した講演の内容を簡単に紹介する。

 PowerReviewsは米サンフランシスコに拠点を置く、設立7年目で従業員数100名ほどの企業だ。26カ国語に対応し、日本ではマーケティングリソース・センターと協業してビジネスを展開している。現在、米国を中心にワールドワイドで5500を超えるWebサイトにソリューションを提供しているという。

5500を超えるWebサイトにサービスを提供するPowerReviews。Toysrusや3M、GAPなど有名企業もユーザーだ(チェン氏の講演資料より)

 PowerReviewsが提供するソリューションは、具体的にいえばソーシャルメディアをベースに、商品に対するクチコミとQ&Aサイトの2種類に特化して、商品の売り上げ増を図るというものだ。

 「商品を購入する前に、その評判を知りたい」というのは消費者であれば当然の心理。しかし「ステマ(ステルスマーケティング)」という言葉に代表されるように、意図的な情報操作は世界中どこでも行われており、消費者は信頼できるクチコミサイトを常に求めている。PowerReviewは、そのユーザー心理に目を付け、あえてネガティブなレビューも掲載する商品レビューサイトをツールとして提供した。これが消費者の信頼を勝ち得ることになるという。

 「レビューサイトで重要なのは信頼性。クチコミを信頼してくれる環境を構築することが第一の作業になる。ネガティブな書き込みを嫌がる企業もあるが、ネガティブレビューがゼロの商品を誰が信用するか、ということを強調して理解してもらっている。お金を払って買った人たちのレビューだからこそ、消費者は信用する」(チェン氏)

 また、同社のレビューサイトではレビューのサマリー(要約)をざっと一覧できたり、評判の高いレビューだけを読める「レビュースナップショット」という機能を備えている。「Amazonのレビューよりも見やすい」と評判とのこと。使う側に立ったUIの例として興味深い。

サービスのローンチ前に約2000名を対象にアンケートを実施(チェン氏の講演資料より)。最も欲しいソーシャルツールは「クチコミとQ&A」という結果を得、これらに特化することにしたという

 もう1つ、PowerReviewsが提供するツールがソーシャルを利用したQ&Aシステム「Social Answers」だ。これは、よくある静的なQ&Aサイトでも、コールセンターへの問い合わせでもない。どんな商品であれ、ユーザーとは取説には載っていないマニアックな使い方をするものである。

 機能や使い方に疑問が生じたとき、それを真っ先に適切に解決できるのは、もしかしたらコールセンターではなく、同じ悩みに遭遇した別のユーザーである場合も多い。質問に回答する期限は基本的に24時間以内、それ以上だとユーザーからの信用を大きく落とすことにつながりかねない。24時間以内に、ソーシャルコンテンツの中からその質問に対する最適な答えを見つけ出す。場合によってはメーカーの製造担当者にもリーチする。「その質問に最も答える資格がある人が迅速に答える仕組み」(チェン氏)が同社の提供するQ&Aシステムだ。

 現在、PowerReviewsはFacebookとの連携を強化する方針を取っている。「Facebookは『信用している人の情報は信用できる』というポイントをすでにクリアしている。興味を持っている商品をすでに友人が使っていたら、そのユーザーが商品を購入する確率はグッと高くなる」とチェン氏。知り合いは信用できるという点を利用し、今後は商品のレビューした人をフォローする機能や、自分のニュースフィードに反映させるなどの機能の拡充を検討しているという。

気になる投稿をしたレビュアーをFacebookでフォローする機能も(チェン氏の講演資料より)

 「タイムラインやニュースフィードなど、Facebookはソーシャルコマースにとって非常にポテンシャルが高い存在。ただし同時に、Facebookはソーシャルメディアの中でもサービスの変容が非常に大きい。われわれも、いまだ学習段階にある」(チェン氏)

 PowerReviewsのサービスを利用して「コンバージョン率が上がった」「質問のトラフィックを大幅に減らすことができた」という声は非常に多い。ネガティブなレビューの公開に及び腰だった企業も、「ネガティブレビューを読んで、その商品の購入を止めるユーザーがいたとしても、そのユーザーは別の商品を購入する確率が高い」ということが分かり、いまでは積極的にレビュー公開に応じているという。

 「『いいね!』は売り上げではない」と最後に、もう一度強調したチェン氏。ソーシャルメディアにどう取り組んでいくか、試行錯誤中の日本企業が多い中、PR的な側面ではなく“売り上げ増”にフォーカスしたソーシャルコマースという分野は、もしかしたら、いまの日本企業が最も欲しているソーシャルメディアの利用スタイルなのかもしれない。

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 INDEX
Social Media Week Tokyoまとめレポート
嫌いな人も知らないと損する9つの「ソーシャル」のカタチ
  Page1
「ソーシャル」の現在が分かる厳選9講演
【1】「バルス」に驚愕!? ソーシャル“メディア”日米比較
  Page2
【2】“プラットフォーム”化するソーシャルメディアの行方
【3】「誰もが主役になれる」mixiのソーシャル“インフラ”
  Page3
【4】ソーシャル“ゲーム”は日本のITを救うのか
【5】本当にコワイ“炎上”、その火消し対策は
Page4
【6】レシピでソーシャル“メディア事業”に参戦した楽天
【7】いいね!より売り上げを増やすソーシャル“コマース”
  Page5
【8】成功事例に学ぶソーシャル“マーケティング”のあり方
【9】IT技術者の想いをカタチにしたソーシャル“グッド”


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