“ソーシャル”において「ビッグデータ」とどう向き合うか
DeNAの取り組みを紹介するセッション「BigData分析への挑戦」では、同社のソーシャルゲーム事業本部 ソーシャルゲーム統括部分析チームに所属する友部博教氏と伊藤慶史氏が、「ビッグデータにどう向き合うか」というテーマで講演した。
DeNA ソーシャルゲーム事業本部 ソーシャルゲーム統括部分析チーム 友部博教氏(左)、伊藤慶史氏(右) |
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会員数4000万人を誇るMobageプラットフォームでは、1日に蓄積されるユーザーの行動情報が20億超に上るという。
■ 効果的な分析、施策のためにデータをどう集めるか
このような膨大なデータに向き合ううえでのポイントとして最も重要なことは、「目の前にあるデータをどう処理するか」ではなく、「効果的な分析、施策のためにデータをどう集めるか」という視点を持つことだと友部氏は指摘する。ただ漠然と集めたデータを統計的に処理するだけでは、「小さいが、大事なこと」を見落としてしまう危険性があるからだ。
「どんなデータが必要か」という視点でデータを集めることが、ビッグデータに向き合ううえでのポイント |
■ メタデータをHadoopで解析
Mobageの場合は、分析・施策のゴールを強く意識したうえで、ユーザーのアクティビティを構造化して分析に必要なメタデータをログに持たせ、質・量ともに良質なデータが蓄積されているという。単にログを記録するだけではなく、どのような分析にはどのようなデータが必要になるかを考え、その仮説に基づいたデータ収集を行うことがポイントとなる。
そして、それらのログやデータはHadoopによって解析されて、アナリストによる分析や施策に利用される。
DeNAのビッグデータ分析システム |
分析に必要なメタデータも含めたログを蓄積 |
■ 多彩なキャリアを持ったアナリストが活躍
分析を担当するアナリストとしては多彩なキャリアを持つ人材が活躍しており、ビジネス戦略やシステム開発など、分析結果をあらゆる方面に生かせる体制を整えているとのことだ。
多彩なキャリアを持ったアナリストが活躍 |
■ プレイを継続するユーザーと離脱するユーザーの特徴の差
セッションでは、ビッグデータを基にした個別ゲーム分析の1つとして、プレイ継続ユーザーと離脱ユーザーの特徴の差を見つける事例が紹介された。
各ユーザーの継続状況と登録情報、バトル回数や仲間数、あいさつ回数などといったアクションのログを集めることで、離脱ユーザーの行動や人物像が継続ユーザーとどう異なっているのかを把握できる。そして、そこからユーザーをつなぎ止めるための対策を考えることにつながっていくわけだ。
ビッグデータを活用した個別ゲームの分析事例 |
■ 「インフルエンサー」の影響力をグラフで可視化
また、分析をプラットフォーム改善に生かす事例として、「インフルエンサー」の影響調査が紹介された。インフルエンサーとは、ソーシャルメディアにおいて、ほかのユーザーに強い影響力をおよぼす人物を指す。
具体的には、「モバ友招待」(プレイしているゲームにMobage内の友人を招待すると、インセンティブが受けられる機能)による影響力を調べて分析したという。その結果、あるソーシャルゲームでは1人のインフルエンサーが1万5000人の登録に影響したことが分かったという。また、あるゲームではインフルエンサーに情報が到達した時点から登録ユーザー数が急増していることが確認できたという。
モバ友招待機能のインフルエンサーの分析事例 |
このように、ソーシャルゲームではビッグデータ分析が極めて重要な意味を持っている。Mobageでは、これからも分析を基にしたゲームやプラットフォームの改善を進めていくとのことだ。
米中韓に着々と拡大するグローバルプラットフォーム
冒頭でも書いたように、DeNAではすでに日本のほかに米国(グローバル)、中国、韓国向けのMobageプラットフォームを展開しており、国内外のプロバイダがグローバル市場に進出するための下地を着々と整えている。トークセッション「グローバル展開、成功の方程式−韓国・中国・米国の特徴と方向性について」では、各国の担当者が一堂に会して、それぞれのプラットフォームにおける取り組みや今後の戦略などについて語り合った。
- 中国担当:任宜氏(DeNA China Vice President Game Division)
- 韓国担当:郭信国氏(DeNA Seoul 事業本部長、Global Game Alliance)
- 米国担当:Masa Hayashi氏(ngmoco LLC Director、X-Border Business Development)
- 須田剛一氏(グラスホッパー・マニファクチュア 代表取締役 兼 グラスホッパー・ユニバース 代表取締役)
- モデレータ:守屋彰人氏(DeNA 社長室、Head of Global Alliances)
左から、守屋彰人氏、任宜氏、Masa Hayashi氏、郭信国氏、須田剛一氏 |
■ 各国におけるDeNAの取り組み
まず米国の状況としては、2008年のDeNA Globalの立ち上げに始まり、2010年にはスマートフォン向けソーシャルゲームのプロバイダである「ngmoco」を買収、2011年7月にMobage Global Androidの提供、2012年3月に同iOS版の提供と、順調にMobageプラットフォームを展開させている。
Hayashi氏からは、SamsungやAT&T、T-Mobileなどといった大手アライアンスとの提携に加えて、ソーシャルネットワークの活用による集客を効果的に実施しており、1日当たりのモバコイン消費量が毎月2倍の成長を見せているなど、巨大市場で多くのチャンスがあることが紹介された。
米国におけるDeNAの取り組み |
中国では、2006年という早い時期からフィーチャーフォン向けのサービスを展開させており、2011年にはWeb版、Android版、iOS版を次々とローンチした。ただし、中国の場合は「Google Play(旧Androidマーケット)のような統一されたマーケットが存在せず、法的な規制も厳しいという事情が、ほかのプラットフォームとは異なります」と任氏は指摘する。
そこでDeNAでは、中国国内の主要プレイヤーと戦略的な提携を積極的に進めることで、あらゆる入り口からユーザーを集める施策を実施している。これによって、現在はユーザー数が指数関数的に拡大しており、大きな成長の兆しを見せているとのことだ。
中国におけるDeNAの取り組み |
韓国も極めて大きな規模のゲーム市場を持っているが、郭氏によれば、モバイルゲーム市場は、まだ十分に育ち切っておらず、今後も拡大の余地が大きく残っているという。DeNA Seoulでは、2011年11月に大手ポータルの「Daum」と提携し、翌2月にDaum Mobageをローンチした。
今後は、Daumサービスとの連携をさらに強化するとともに、大手キャリアマーケットの配信や強力タイトルの投入などによってプラットフォームを成長させていくとの話だった。
韓国におけるDeNAの取り組み |
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INDEX | ||
MobageオープンプラットフォームForumまとめレポート 日本のソーシャルゲームは新たなモデルでも海外展開できるのか |
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Page1 巨大プラットフォームとして成長した「Mobage」の概況 海外展開の秘訣は日本での成功モデル+各国のトレンド |
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Page2 “ソーシャル”において「ビッグデータ」とどう向き合うか 米中韓に着々と拡大するグローバルプラットフォーム |
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Page3 米国での成功の鍵となる4つの要素とは 今後のメインターゲットは「スマホのブラウザ」とHTML5 「ガチャ」に頼らない新たな成功モデルへの挑戦も |
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