■ 各国の人気ゲームの特徴
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すでに各国で大々的な集客の兆しを見せてはいるが、プロバイダの立場からすれば、流行するゲームの内容にどのような違いがあるかという点が気になるだろう。須田氏が「日本の場合、これからはアーケードスタイルが流行するという予測もあるが、各国の状況はどうなっているのか」と質問すると、3名の担当者はそれぞれの国における人気ゲームの特徴を答えた。
任氏によれば、中国では日本のゲームやアニメに対する認知度が極めて高く、カードバトル型ゲームも人気があるなど、コンテンツを売り込む余地が十分にあるという。日本との差異としては、Web版よりもアプリ版が主流であることや、パラメータが細分化されているゲームが人気といった点が挙げられた。
アプライアンス提携により集客の下地が整いつつある中国 |
韓国では、「育成・農場シミュレーション」「スポーツ」「RPG・戦略シミュレーション」「ディフェンス・アーケード」の4つのジャンルが特に人気が高い傾向にあるという。モバイルゲームに関しては、従来は有料アプリが主流だったものの、2011年後半からはフリーミアムなWebブラウザベースゲームに移行しつつあるという。これをもって、日本の成功ノウハウを活用しやすい条件が整ってきていると郭氏は指摘する。
現地の人気ゲームの特徴を把握することが成功の鍵 |
米国の場合には、都市開発やカードバトル、戦略シミュレーション、農園・育成系のゲームが特に人気だが、ユーザー層がさまざまなため、極めて幅広いタイトルが遊ばれている印象だという。しかし、その中でも日本発の「Range of Bahamut」が全アプリ売上1位を記録するなどといった実績を残しており、日本のノウハウを生かすことで十分に勝ち上がることができるとHayashi氏は強調した。
日本発のゲームもグローバルで認められつつある |
米国での成功の鍵となる4つの要素とは
DeNA取締役兼ngmoco CEO Niel Young氏 |
ここで、壇上にはDeNA取締役兼ngmoco CEOのNiel Young氏が登場し、あらためて日本の技術やノウハウが米国でも通用するということを強調した。同氏は、成功の鍵として以下の4つの要素を挙げている。
- カードバトル・イベントのノウハウ
- クロスプラットフォーム展開
- ローカライゼーション
- カルチャライゼーション
特にカードバトル・イベントはマネタイズのための重要な要素であり、日本のプロバイダのノウハウが強く生かせる分野なので、自信を持って参入するべきだという。一方で、ローカライゼーションについては正確なニュアンスでの翻訳が必要なこと、カルチャライゼーションについても現地の文化を勉強し取り入れることが重要であることなどが指摘された。
日本の開発運営ノウハウは米国でも通用する |
「われわれは、皆さまのグローバル展開のお手伝いさせていただきたいと思っています。米国のチームは現地のノウハウを持っています。今後も、皆さまと一緒にすばらしいゲームを開発し、ビジネスを拡大していけることを期待しています」(Young氏)
従来、日本と欧米ではソーシャルゲームのマーケットの性質が異なるため、日本の成功モデルは通用しないのではないかといわれてきた。しかしYoung氏、そして守安氏は、日本のノウハウは決して特殊なものではないと強調している。その証拠として、守安氏は「Rage Of Bahamut」のKPI(重要業績評価指標)が日本のものとかなり近い数字になっていることを挙げた。
「これまではブラウザゲームは欧米では厳しいといわれていましたが、実際にはそうでないことが証明されました。日本のタイトルが、ほぼそのまま通用します。日本のタイトルはなるべく早く欧米でも展開すべきです。すぐにでも意思決定をして、2〜3カ月後にはリリースする。それくらいのスピード感でチャレンジしていただきたいと考えています」(守安氏)
今後のメインターゲットは「スマホのブラウザ」とHTML5と
守安氏はグローバル進出を訴える一方で、ソーシャルゲームの作り方についても、これまでのフィーチャーフォン主体の開発から、スマートフォン主体の開発にシフトしていくべきだと指摘した。同氏によれば、半年以内にスマートフォンによるモバコイン消費がフィーチャーフォンのそれを上回る見込みだという。
その一方で、前述のように欧米でもブラウザゲームで通用するという見込みがあるため、今後のメインターゲットは「スマートフォンのブラウザ」になるという。
ソーシャルゲームの今後のメインターゲットは「スマートフォンのブラウザ」 |
それに伴って、DeNAではスマートフォン向けブラザゲーム開発をサポートする新しいゲームエンジン「Post ExGame(Pex)」の開発を進めており、5月末をめどに公開できる予定だという。従来のゲームエンジンであるExGameは、フィーチャーフォン向けのFlash Liteコンテンツをスマートフォンで再生することを主な目的として開発されてきた。
一方でPexは、スマートフォン上でネイティブアプリ並の表現力を実現することを目的として再設計されており、フィーチャーフォンとの互換性を一部犠牲にする代わりに、パフォーマンスを大幅に向上させているという。
そのほか、JavaScriptフレームワーク「ngCore」の改良や、開発環境「ngBuilder」の大幅なアップデート、HTML5サポート強化なども予定している。HTML5サポートについては、HTML5版のngCoreランタイムも開発中であり、これが完成すればWebブラウザベースでもアプリレベルのコンテンツを提供できるようになるという話だ。
「ガチャ」に頼らない新たな成功モデルへの挑戦も
今回のMobageオープンプラットForumでは、始終一貫して「グローバルでも日本で培ったノウハウが通用します」というメッセージが発信されたことが印象的だった。モバイルゲームやソーシャルゲームに関しては、日本のプロバイダはフィーチャーフォン時代から多くのノウハウを蓄積してきた。それは「決してガラパゴスではなく、グローバル市場をリードするものです」とのこと。このメッセージは極めて力強く、そして十分な説得力を持ったものだという印象を受けた。
その一方で、パネルディスカッションやYoung氏の講演で指摘されたように、現地の文化やゲーム市場のトレンドを十分に把握したうえで、適切なローカライズ/カルチャライズを行うことも重要となる。日本のノウハウが生かせる部分はどこで、カルチャライズ/ローカライズが必要な部分は、どこなのか。それをよく研究したうえで、“最適なバランス”を見つけ出す必要がある。
新しいゲーム要素や、新しいマネタイズの仕組みへチャレンジすることも不可欠だ。折しも消費者庁が「コンプガチャ」の規制を検討しているという報道が世間を賑わせ、DeNAでも「コンプガチャ」「テーマガチャ」の停止を発表したばかりである(参考:コンプガチャ問題は一気に終わるのか DeNA、グリーら相次ぎ廃止宣言)。
現状、多くのソーシャルゲームにおいて「ガチャ」の仕組みは収益を支える柱の1つになっている。しかし、話題となったコンプガチャに限らず、ガチャの仕組みを問題視する声は以前からあり、必ずしも先行きが盤石とはいえない。既存の成功モデルに頼るだけではなく、そこから脱却して新しい価値の提供にも挑戦することも、将来の成長のために極めて重要だといえる。
いずれにせよ、世界的に見てソーシャルゲームが極めて“熱い市場”であるという事実に変わりはない。その中で日本のプロバイダがどこまで戦えるのか、またどのように戦っていけばいいのかという点について、多くのヒントが示されたフォーラムだったのではないだろうか。
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MobageオープンプラットフォームForumまとめレポート 日本のソーシャルゲームは新たなモデルでも海外展開できるのか |
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Page1 巨大プラットフォームとして成長した「Mobage」の概況 海外展開の秘訣は日本での成功モデル+各国のトレンド |
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Page2 “ソーシャル”において「ビッグデータ」とどう向き合うか 米中韓に着々と拡大するグローバルプラットフォーム |
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Page3 米国での成功の鍵となる4つの要素とは 今後のメインターゲットは「スマホのブラウザ」とHTML5 「ガチャ」に頼らない新たな成功モデルへの挑戦も |
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