第11回 読者調査結果
データ/ストレージ管理の課題と、今後求められる対策とは?

アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
小柴 豊
2003/12/13


 「もはや成熟した」との声も聞かれるIT技術の中で、スペック拡大に余念のない製品の代表が、「ストレージ」だ。クライアントPCのエントリ製品ですら数十Gbytesのハードディスクを内蔵する今日、日々蓄積される膨大な業務データを管理するエンジニアは、どのような課題を抱き、それにどう対応しようとしているのだろうか? System Insiderフォーラムが実施した第11回読者調査から、その状況をレポートしよう。

業務データの管理状況:分散管理から集中管理へ

 初めに読者のかかわるシステムで、各種サーバ上の業務データをどのように管理(保存/バックアップなど)しているのか聞いた結果が、グラフ1だ。「ほぼすべての業務データをポリシーに基づいて一括集中管理している」との回答は全体の20%にとどまっている。このことから、大半の業務データは現在企業内に分散保存されていると思われる。ただし「データは部門や業務単位で管理しているが、集中管理の必要性を感じている」読者も35%に達しており、今後データ管理形態のトレンドは、分散型から集中型へと向かうものと思われる。

グラフ1 業務データの管理状況(N=408)

現在利用されているストレージの種類と接続方法は?

 続いて、業務データを管理する上で、現在システム内で利用しているストレージ機器の種類を質問したところ、「サーバ機の内蔵ハードディスク装置」「磁気テープ装置」「外部ハードディスク装置」の順に利用率が高くなった(グラフ2)。これは、グラフ1の結果を裏付けるものといえそうだ。またバックアップなどの用途には長らくテープ装置が主に使われてきたが、低価格・大容量化が著しいハードディスク装置の利用も、順当に進んでいるようだ。

グラフ2 利用しているストレージ機器の種類(複数回答 N=408)

 次にストレージとサーバ機との接続方法を見ると、SCSIなどでサーバ機にストレージを直結する従来のDAS(Direct Attached Storage)形式が、引き続き主流であった(グラフ3)。その一方で、LAN上にストレージを設置して共有するNAS(Network Attached Storage)形式の利用者も38%に上っており、「ネットワーク・ストレージ」という概念が一般に浸透し始めたようだ。ファイバ・チャネルによるSAN(Storage Area Network)形式については、大企業を中心に一部導入が進んでいるものの、全体的な利用率は10%程度にとどまった。

グラフ3 ストレージ機器とサーバの接続方法(複数回答 N=408)

業務データ管理上の課題とは?

 ところで業務データを管理するにあたって、読者は現在どのような課題を抱えているのだろうか? グラフ4のとおり、最も共通した問題意識は「データ量の増加に伴う、ストレージ容量の不足」であった。またそれに続いて「バックアップ実行時のネットワーク/システム負荷の抑制」が上位に挙げられており、業務データ量の急激な増加が、システム運用にさまざまな影響を与えている様子が分かる。読者からは、「デバイス(特にハードディスク)の進化に既存の運用方法が追いつかない」現状を憂慮するコメントが、以下のように多数寄せられた。

  • 特に磁気メディアが、ハードディスク容量の増大化にバックアップ媒体の容量が追いついていない。
  • ハードディスクの大容量化にテープ装置がついてきていないため、バックアップに要する時間が非常に長くなってきている。日中までかかるようになるのも時間の問題であるため、今後システム稼働中のパフォーマンスに問題が出てこないか心配だ。
  • ボリューム増大に伴う処理時間の増大。1年で3倍に増加しており、追いつかない。

グラフ4 業務データ管理上の課題(複数回答 N=408)

データ管理上の課題への対応策は?

 では上述のようなデータ管理上の課題に対して、読者のかかわるシステムでは今後どのような対応を予定/検討しているのだろうか? 近年ストレージ関連のソリューション・ベンダが提唱している代表的な3つのアプローチ(「データをNASに統合して一元管理する」「SANを導入し、ストレージを論理的に統合する」「ストレージ管理業務を、外部プロバイダやデータセンターに委託する」)を提示してたずねてみたものの、いずれも決定的な支持を得ることはできず、「未定/分からない」との回答が大半を占める結果となった(グラフ5)。

グラフ5 データ管理課題への対応策(複数回答 N=408)

 読者がデータ管理課題への対策を見出しかねている原因の1つとして、SAN/NAS/アウトソーシングといったソリューション内容への認知が進んでいないことが考えられる。しかし以下のようなコメントを読んでいると、ソリューションの視点を根本から切替える必要があるようにも思えてくる。

  • 何の考えもなく、とにかくデータを残したがる人が多いため、いくらストレージ容量があっても足りない。データを残す基準の明確化が重要である。
  • 無駄なデータをいかにストレージしないか、という方向の製品はないのか。ストレージのサイズはもはや十分である。
  • 増え続けるデータ量と本当にバックアップすべきデータ(重要度)とをはっきりさせて管理するのが難しい。

 現在のストレージ・ソリューションの多くは、「データは幾何級数的に増え続ける」ことを前提としているが、ストレージ管理者の立場にすれば、その前提自体に疑問を持つのも納得できる。投資対効果が厳しく問われる昨今だけに、今後は「必要なデータを適切な規模で」管理できるソリューションが求められるのではないだろうか? こうしたソリューションの答えとして、ストレージ・ベンダのEMCは、「情報ライフサイクル管理」という情報の状態や価値(重要度)などによって保存するストレージを自動的に振り分けるような概念を提唱している。こうした機能がストレージに搭載されることで、ストレージ管理者がかかえる問題の1つが解消する方向に向かうかもしれない。

データ管理/ストレージについての興味内容は?

 最後に、今後のデータ管理やストレージ環境構築を考える上で、読者が興味を持っている情報をたずねたところ、最もポイントが高くなったのは「RAID構成や冗長化によるストレージの可用性向上」であった(グラフ6)。以下「スナップショット/クローンによるバックアップ&リカバリの実践」「ディザスタ・リカバリのためのポリシー策定やシステム構築」といった、実践的なノウハウに関する情報ニーズが高くなっている。@ITではこうしたニーズに応えるべく、ストレージ関連記事を集約した情報コーナー「@ITチャンネル > ストレージ」を開設しているので、興味のある方はぜひこちらもご覧いただきたい。記事の終わり

グラフ6 データ管理/ストレージについての興味内容(複数回答 N=408)
 
  調査概要
調査方法
System Insiderフォーラムからリンクした Webアンケート
調査期間
2003年10月28日〜11月21日
回答件数
408件
  
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@ITチャンネル
ストレージ
 
「System Insider 資料」


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