第26回 「言葉」を超えた説得力を持つAjaxの存在感と広がり

株式会社ピーデー
川俣 晶

2007/10/24



ハイライト1・世界的なイベント、
「AjaxWorld Conference & Expo」を知ってますか?

 年2回開催される世界的なAjaxイベントである「AjaxWorld Conference & Expo」が、9月23〜26日に開催されました。

 とはいえ、個人的にほとんど意識していなかったイベントであり、私が見ている範囲内でこのイベントについて声高に語るブログなどもあまり見掛けません。なぜでしょうか?

「AjaxWorld Conference & Expo」の講演リストのページ(たくさんのスポンサー企業の名前が左側に)

「疑いがあれば、実際に動かしてみてくれ……」

 漠然とした印象からいえば、Ajaxに関わる人たちの多くは、目の前の問題を解決するために手を動かすタイプが多いように感じられます。だから、知識や経験の幅が狭いことがある半面、自信を持って語る内容には強い説得力が感じられます。その説得力の背景にあるのは、実際に動くプログラムをいつでも提示できる…… という「検証可能」という特長があるからでしょう。「疑いがあれば、実際に動かしてみてくれ……」といえるわけです。

ITバブルの崩壊=「言葉」の信頼度が失われた出来事

 その対極にあるのが何かといえば、有名な誰かがこういったであるとか、大手ベンダの某社がこう語った……といった肩書を背景とする「言葉」といえます。そのような「言葉」を根拠にした主張は、少なくともこの10年程度のスパンで見る限り、極めて信用度が低下しているといえます。いわゆるITバブルの崩壊とは、「言葉」の信頼度が失われた出来事だろうと思いますが、その後、その信頼が回復したとはいえないと思います。

 そのように考えれば、「言葉」を生み出す場であるカンファレンスのようなイベントに、あまり注目が集まらないのもやむを得ないところかな…… という気もします。

AjaxはTCP/IPやHTTPと同じぐらい「当たり前」の技術になった

 しかし、1つだけ間違いないことがあります。Ajaxの名を冠したカンファレンスに大手ベンダが名を連ね、熱心に取り組んでいることをアピールしているという状況は、Ajaxがもはや誰もが手掛けるべき定番技術の1つとして認知されたことを示しています。Ajaxは是か非か、AjaxとFlashとほかのRIA技術のどれが本命か……、といった問題を語る時期は過ぎ去ったということです。

 すでにAjaxとはあって当たり前の技術であり、システム開発時に選ぶことができる標準メニューの1つになったわけです。例えば、システムを構築する際に、誰も「TCP/IPっていいの?」「HTTPっていいの?」という問いを発さず、当然のように活用しているのと同様に、Ajaxもさまざまなシステム構築フレームワークなどの中で、当たり前の技術の一部として使われていく時代になったのでしょう。

 ハイライト2・コンテストの結果発表、そして「世界」へ

 Mash up Award 3rdの受賞作品が発表されています。…… と書くと、軽く読み流されてしまうかもしれませんが、Ajaxですから即座に自分のWebブラウザ上で受賞作品を動かしてみることができます。いま、まさにホットなコンテストでどのような作品が作られ、受賞しているかを見るのは面白い体験になると思います。

最優秀賞の価値とは?

 例えば、最優秀賞の「ONGMAP.COM(オンジーマップ)」は、Google Mapsに極めて多くの情報を重ねて扱えるサービスですが、それだけでなくIPアドレスから利用者の所在位置を割り出すなど、さまざまな技術を複合して使っています。また、基本的に検索範囲が表示されている範囲になるため、ズームレベルを調整することで柔軟に対象範囲を設定できます。これによって、広域の地図と詳細な地図を容易に切り替えられるGoogle Mapsの価値が大きく広がった感もあります。

ONGMAP.COMの使用例

 皆さんも、これに限らず、さまざまな受賞作品を試してみると面白いでしょう。

全「世界」対象のマッシュアップコンテスト

 そして、コンテストはこれで終わりではありません。全世界対象のマッシュアップコンテスト「MashupChallenge」が開かれるそうです。腕に覚えのあるAjaxプログラマは、このコンテストで「世界」に技術力とセンスをアピールしてみてはどうでしょうか?

MashupChallengeのトップページ

 ハイライト3・iPhoneでも存在感を示すGoogle

 この数年、Appleの携帯用音楽プレーヤのiPodは社会的なブームが続いています。その流れで出てきた、携帯電話であるiPhoneも注目を集めています。しかし、どうも私にはiPodやiPhoneの素晴らしさがピンと来ません。個性が強すぎて、好きな人は好きかもしれませんが、趣味が合わないと徹底的に阻害されてしまうような感じを受けます。個人的には、最近購入した「Advanced/W-ZERO3 [es]」の方がはるかに使えるデバイスだ…… という印象も受けます。

 それはさておき、iPhoneといえばアプリ開発にAjax技術を取り入れたことでも話題になったデバイスです。そのような関係上、Ajaxの元祖であるGoogleとの相性は良いのでしょう。Googleは最近、GoogleのAjax開発ツールキットであるGWT(Google Web Toolkit)を使って、フィードリーダーのサービスを公開しました。AppleブランドのiPhoneであっても、Googleの存在感はやはり大きなものになるのでしょうか?

編集部注GWTについて詳しく知りたい読者は、「JavaをAjaxに変換するグーグルのGWTを使ってみよう」をご参照ください。
Google Web Toolkit Blogの「GWT Application Development for the iPhone」エントリー

 ここまで考えて、はたと気付きました。私が「Advanced/W-ZERO3 [es]」を買った強力な動機の1つは、「Mobile Google Maps」が提供されている点にあります。結局、iPhoneが好きでも「Advanced/W-ZERO3 [es]」が好きでも、Googleの大きな存在感に変わりはない…… のでしょうか?



 
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 INDEX
第26回 「言葉」を超えた説得力を持つAjaxの存在感と広がり
Page1 世界的なイベント、「AjaxWorld Conference & Expo」を知ってますか?|コンテストの結果発表、そして「世界」へ|iPhoneでも存在感を示すGoogle
  Page2<そのほかのみどころ> Ajax/JavaScript技術のシェアはどうなっているのか?|そろそろ、E4Xに注目すべき時が来た?|JavaとEclipseでAjaxアプリケーションを作成|懐かしいMMLを使い、ドレミファソラシをAjaxで|たった1行のコードでJavaScriptプログラムを高速化!?







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