製品レビュー
Microsoft Windows Services for UNIX 3.0
日本語版

1.SFUとは何か?

デジタルアドバンテージ
2002/11/20


 Services for UNIX(SFU)は、Windows環境とUNIX環境との相互運用を円滑にすることを目的として開発された各種のサービスやツール群をまとめたパッケージ製品である。Windows環境に追加インストールして使用する。

SFU 3.0を追加インストールしたWindows環境
UNIX互換シェルを起動して、各種UNIXコマンド/ユーティリティを実行したり、コンパイラなどの開発支援ツールを使ったりできるようになる。

 SFUの初期版は「Windows NT Services for UNIX Add-on Pack Ver.1.0a日本語版」として、Windows NT 4.0向けのアドオン製品として発売された。その後、2000年8月に、Windows 2000を対象とするSFU 2.0が発売された。このSFU 2.0については、別稿の「製品レビュー:Windows Services for UNIX 2.0」で詳細をレビューしているので参照されたい。SFU 2.0の主要な機能をまとめると次のようになる。

機能 説明
ファイル共有 NFS(Network File System)を利用し、UNIX環境/Windows環境双方からのファイル共有を実現する。このためSFUでは、NFSクライアント、NFSサーバ、NFSゲートウェイを提供する
Telnetサーバ/クライアント UNIX用の端末制御プロトコルとして一般的なTelnetを使用して、Windows環境からUNIX環境にログオンしてコマンドを実行したり、逆にUNIX環境からWindows環境にログオンしてコマンドを実行したりできるようにする
コマンドライン・ツール UNIX向けに開発され、広く使われている各種コマンドライン・ツールについて、Windows環境で実行できるものを提供する(Korn Shellなど)
NISサーバ Active Directoryと統合されたNIS(Network Information Service、古くはYP:Yellow Pagesとも呼ばれた)サービスを提供し、UNIX環境/Windows環境のユーザー・アカウントやパスワードを共通で管理できるようにする
パスワードの同期 UNIX環境またはWindows環境において、パスワードが変更されたときに、両者を同期させる機能

 このようにSFUの機能には、大きくクライアント向けサポート(NFSクライアント、Telnetクライアント、コンドライン・ツールなど)と、サーバ向けサポート(NFSサーバ、NFSゲートウェイ、NISサーバ、パスワードの同期など)の2つに大別できる。ただしパッケージは1種類のみで、パッケージを購入すれば、クライアント/サーバ双方のソフトウェアを手に入れることができる。

 今回取り上げるSFU 3.0は、このSFU 2.0の後継版で、上記の機能をすべて包含し、ユーザーの声を反映して機能改良/機能拡張した上で、さらにInterixと呼ばれるUNIX互換のサブシステムを統合したソフトウェアである。従来のSFU 2.0では、ほかのWindowsアプリケーションと同じWin32サブシステムを使い、UNIXシェルやコマンドなどをエミュレートしていた(サブシステムの詳細については後述する)。これに対しSFU 3.0では、Interixサブシステムの統合により、Win32サブシステムと対等に位置付けられるOSのサブシステムとして、UNIX互換環境が実装された。従来のSFU 2.0では、大筋はよく似ていても、細部ではWindowsの制限(Win32サブシステムの制限)に突き当たることが少なくなかったが、InterixはWindowsとは独立したサブシステムとして、より互換性の高いUNIX環境を提供する(これに伴い、SFU 2.0でのMKS Toolkitによるエミュレーションは廃止された)。互換性の向上だけでなく、エミュレーション環境からネイティブなアプリケーション実行環境に変わることで、余計なエミュレーション・コードを実行する必要がなくなるので、パフォーマンス的にも有利になるはずだ。

 以下に、SFU 3.0に関する主要なポイントをまとめておこう。

■発売時期/価格
 冒頭で述べたとおり、SFU 3.0日本語版は2002年12月6日より発売開始される(ニュース・リリース)。

 このリリースにあるとおり、パッケージとしては「通常パッケージ」(推定小売価格=2万9800円)に加え、「アカデミック・パッケージ」(同9800円)が初めて追加された。通常パッケージにしたところで、サーバ向けソフトウェアも含むパッケージとしては非常に安価であるが、大学や研究機関などでは、さらに手軽に利用できるようになった。

■120日間限定評価版
 購入前にSFU 3.0を評価したければ、インストールしてから120日間利用できる期間限定の評価版が公開されている。

SFU 3.0日本語評価版のダウンロード・ページ

■SFU 3.0がサポートするOS環境
 SFU 3.0が利用できるのは、Windows NT 4.0 SP6a(Windows NT 4.0 Terminal Server Editionは対象外)、Windows 2000(SP2以降を推奨)、Windows XP Professionalに限られる。従来の16bitカーネルを持つWindows 95やWindows 98 SE、Windows Meでは利用できないし、主にホーム・ユーザーをターゲットとして販売されているWindows XP Home Editionでも使えない。大手ベンダが個人ユーザー向けに販売するPCにプリインストールされるOSは、Windows XP Home Editionであることが多いので注意が必要である。

 また、NEC PC9800シリーズやAlphaプロセッサを搭載したCompaqシステムも動作対象外である。

■動作確認済みのUNIX環境
 一口にUNIXといっても、実際にはさまざまな種類があることは周知のとおりである。マイクロソフトの資料によれば、SFU 3.0は多数のUNIXと互換性を持つが、特に次の環境については、マイクロソフト自身が動作を確認している。

Solaris 2.6および2.7
HP-UX 10.2および11
IBM AIX 4.3.3
Red Hat Linux 7.0

隠れたヒット商品「SFU」

 マイクロソフトの担当者によれば、前バージョンのSFU 2.0は、とりわけ日本では、予想をはるかに超えて売れた「隠れたヒット商品」とのことだ。Windows環境とUNIX環境の相互運用の必要性に迫られている管理者やユーザーがそれだけ多いということだろうか。

 WindowsとUNIXの相互運用について、SFUがWindows側からのアプローチだとすれば、SambaなどUNIX側からのアプローチもある。SFUもかなり安価な製品だが、LinuxとSambaなどのオープン・ソース・ソフトウェアを組み合わせれば、さらに安価に相互運用が可能になるのではないか?

 最終的には顧客の選択になるのだが、マイクロソフトの分析によれば、企業ユーザーの多くは、万一トラブルが発生した際のサポートなどを考慮して、ソフトウェアの提供ベンダを増やすより、SFUを導入して、マイクロソフトから一元的にサポートを受けることを望むという。この傾向は、大規模ユーザーであるほど強くなるとのことだ。

 SFU活用の基本パターンは、「相互運用」と「移行」の2つである。このうち相互運用では、UNIX環境とWindows環境の双方からアクセス可能な共有ディレクトリを実現するNFSの利用を目的とするケースが多いようだ。例えばエンジニアリング分野では、CAD端末としてUNIXワークステーションが導入されているが、ファイル・サーバをIAサーバ+Windowsに置き換えて、ダウンサイジングしたり、逆に、既存のUNIXファイル・サーバ上のファイルをWindows上で動作するCADで利用するという例などがある。

 一方の「移行」は、既存のシステムを、よりコスト・パフォーマンスの高いIAシステムに移行するケースでの利用である。具体的には、UNIX環境で構築されたシステムを、IAサーバ+Windows環境にダウンサイジングする際の移行パスとする。また企業によっては、メインフレームなどで構築されたミッション・クリティカルなシステムをダウンサイジングする際に、いきなりWindows環境に移行するのではなく、いったんUNIXというステージを設けることもあるという。

 マイクロソフトの調査によれば、企業内で使われるカスタム・アプリケーションの中には、ほとんどが標準のCライブラリなどで開発されたものも少なくないという。このようなアプリケーションをWindows環境移行させる場合、一足飛びにWindowsのネイティブ・アプリケーションにする方法もあるが、より少ないコストで移行させるためにSFUが活用されるケースがある。

 例えばマイクロソフトは、FreeBSDをベースに構築されたhotmail(メール・サービス)のシステムを、hotmailの買収後にWindows 2000ベースのシステムに移行する際にSFUのInterixサブシステムを利用した(ただし現状では、かなりの部分がWindowsのネイティブ環境に移行されているという)。この件については、米MicrosoftのWebページで事例紹介のドキュメントが公開されている(事例紹介のページ)。

 なおSFUは、WindowsベースのNASシステムであるWindows Powered NASアプライアンスにも、NFSサポート用として組み込まれているという。ただしWindows Powered NASアプライアンスに同梱されるSFUは、SFU 2.0をベースとして性能向上などを図ったSFU Ver.2.3と呼ばれる限定バージョンである。


 INDEX
  [製品レビュー] 
  Microsoft Windows Services for UNIX 3.0 日本語版
  1.SFUとは何か?
    2.SFU 2.0から3.0へのバージョンアップでの変更点
    3.Interixプロセスと、Win32プロセスのシームレスなプロセス間通信も可能
    4.SFUのインストールとユーザー環境
    5.wgetの移植
    6.bashの移植
 
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