XMLマスターへの道
〜「XMLマスター:ベーシック」試験対策〜
第1回 XMLマスター:ベーシック試験のレベルは?
武田栄子
ウチダ人材開発センタ
2002/10/16
@IT読者の方ならご存じのとおり、「XML(Extensible Markup Language)」は、現在注目されている技術の1つです。BtoBやEAI(Enterprise Application Integration)と併せて語られることが多く、IT技術者としてはいやが応でも知らなければならない技術となりつつあります。
XMLは当初、「HTMLのアップグレード版」のように捉えられることもありましたが、現在ではようやくXML本来の意義が浸透してきたようです。XMLそのものの紹介は、「新入社員のためのXML入門講座」や「技術者のためのXML再入門」などの記事が参考になりますが、本稿はそうした現在注目を浴びているXMLの技術や知識を、第三者的に認定する資格である「XMLマスター」の取得を目指す方や興味をお持ちの方にお送りする連載です。
■XMLマスターとは何か?
XMLマスターは、「XMLのスキルを持った技術者の幅広い育成」を目標に、XML技術者育成推進委員会によって発足された認定制度です。XMLマスターがXML技術者のスキル測定の指針となることで個人の技術力が強化され、XMLの専門技術能力を業界および顧客から正当に評価されるようになることを目指しています。XMLマスターの最新情報は、公式サイトで参照することができます。
XMLマスターの試験は2001年10月から開始され、2002年9月には合格者が2000名を突破しました。このことからも分かるように、エンジニアが注目している資格の1つです。これは@ITが実施したEngineer Life 第4回読者調査で、今後取得したい資格の1位になった、という結果にも表れています。
■XMLマスターの効能
試験に合格すると、次のような特典があります。
- XML基礎技術に関する知識と経験に対して、業界から高い評価を受けられます。
- 個人の技術力の強化により、企業も顧客の満足度を向上させることができます。
- XMLの専門技術能力を正当に評価することで、雇用、昇進、キャリアプランニングに対する確実な指標となります。
- 認定証とロゴ清刷セットが授与されます。
また、XMLはベンダニュートラルな、普遍的な技術です。そのため、単独でこれをエンジニアの「ウリ」とするには弱いものであることは否めません。特に、現在実施されているXMLの基礎技術を対象とした「XMLマスター:ベーシック」レベルではなおさらでしょう。実際には、「JavaとXML」といったように、ほかの技術に加えてXMLを知っている、という技術者の需要が多いようです。
XMLマスターに関する解説は、@ITで過去に「XMLマスターとはどんな資格か?」「特集:3分でわかるXMLマスター」の2本が公開されており、参考になるでしょう。
■XMLマスターのレベル
執筆時点(2002年9月)で実施されている試験は「XMLマスター:ベーシック」と呼ばれる試験です。この試験はその名のとおり、XMLの基礎レベルでの知識を問う位置付けにあります。
そして2002年8月下旬に、「XMLマスター:ベーシック」に続く上位認定資格である「XMLマスター:プロフェッショナル」の発表がありました。2002年11月より開始予定だそうです(プレスリリース)。
ただし、「XMLマスター:プロフェッショナル」を取得するには、基礎レベルである「XMLマスター:ベーシック」の試験と、2002年11月より開始される「XMLマスター:プロフェッショナル」の試験の両方に合格することが必要です。
本稿では、基礎レベルである「XMLマスター:ベーシック」について話を進めていきます。
公式サイトに公表されている「XMLマスター:ベーシック」で前提となる技術水準は、次のとおりです。
- XMLおよびその関連の標準仕様について、その用語、概念を正しく理解していること。
- XMLによるデータの作成を標準仕様に基づき行うことができること。
- スクリプト言語のレベルでのプログラミング能力を持つこと。変数や関数の概念、オブジェクトの概念、アルゴリズムの理解能力を有すること。
「XMLマスター:ベーシック」の出題範囲は、6つのカテゴリに分けられます。
(1)XML XMLの構造や作成方法 |
(2)XSLT XSLTによる変換の仕組み、XSLTスタイルシートの構造 |
(3)DTD 基本的なDTDの構造、DTDを利用したスキーマの定義 |
(4)XML Schema XML Schemaを利用したスキーマの定義 |
(5)XPath XPathを使用したXML構造の表現 |
(6)DOMまたはNamespace DOM/Namespaceの概要 |
40問の出題のうち、約60%が「XML(XMLの構造や作成方法)」の基本部分、残り40%が「XSLT」から「DOMまたはNamespace」までの応用部分という内訳となります。従って、基本的な知識を確実に押さえておくことが得点のポイントです。
■XMLマスターの受験
XMLマスターの試験を受けるには、アール・プロメトリック社のWebサイトから直接申し込むか、試験申込書をダウンロードして必要事項を記入のうえ、FAXまたは郵送で申し込みます。受験料は1万5000円(税別)です。
全国のアール・プロメトリック試験会場で、普段は月〜金曜日の日中に受験できます(会場によっては夜、土・日曜日の受験も可能)。
試験はコンピュータを利用して実施されます。60分間で40問出題され、単一もしくは複数選択で回答します。70%の正解率で合格となり、試験後ただちにスコアレポートが出てくるので、合否をその場で知ることができます。
■試験対策のマテリアル
「XMLマスター:ベーシック」を取得するための手段として、4つの方法を紹介します。
(1)トレーニングを受講
XMLマスターの試験範囲に対応する認定教育コースは、全国のInfoteria
Certified Education Centerや、提携の教育機関で行われています。コストは高いものの、独学だけでは得られないノウハウを習得できます。
(2)市販の対策本や教材を利用
試験の傾向と対策を把握するために、1冊手元にあると便利です。一番低コストですが、内容が試験対策中心となるのが長所でもあり短所でもあります。対策本と教材の一覧が公式サイトに紹介されているので、そちらを参考にして自分に合うものを選んでください。
(3)市販の書籍を読む
試験対策というよりは、XMLを体系的に学習し、リファレンスとして活用する意味合いが強いです。@ITのXML書評記事「書評
目的別で選ぶXML入門書4冊」と本文中にリンクされている過去の書評記事などを参考にするとよいでしょう。
(4)インターネットで情報収集
XMLはインターネットでの利用を前提として策定された仕様です。そのため、XMLに関する情報はWeb上にたくさんあります。WebはXMLに関する情報の宝庫であり、基本的に閲覧は無料なので活用することをお勧めします。
筆者もよく利用しているサイトを以下にまとめました。
- W3C (World Wide Web Consortium)
XMLの仕様はここから始まります。XML技術の基本ともいえるでしょう。 - @IT:XML eXpert eXchange
XML技術者のための情報提供/情報交換フォーラムを展開しています。さまざまなジャンルのコラムが分かりやすく例示されており、日本のXML関連サイトの中では一番の情報量だと思います。 - Infoteria:XMLノート
XMLに関するあらゆる情報を5つのカテゴリに分類しています。必要な情報にアクセスしやすいのが特徴。特に「基本仕様」は各仕様のステータス、日本語訳のサイトが紹介されており情報が分かりやすく整理されています。 - Microsoft:MSDN
Online - XML Developer Center
Microsoft社製品におけるXML技術情報が基礎レベルから応用レベルまで網羅されており、XMLを利用するための製品情報も取り上げられています。
■次回のための予習問題
本稿は、予習問題について解説を行うことで「XMLマスター:ベーシック」を受験予定、および興味のある方への補助教材となるように進行していきます。「XMLマスター:ベーシック」の受験を考えていない方も、XMLを知る手掛かりとしてご覧ください。
最後に、次回のための予習問題を載せています。次回はこの予習問題について解説していくので、チャレンジしてみてください。
予習問題 |
Q1) XMLの起源となった仕様を1つ選択してください。 (a) HTML (b) SGML (c) XHTML (d) XSLT |
Q2) XMLベースの実用化仕様ではないものを1つ選択してください。 (a) SQL (b) SVG (c) SMIL (d) MathML |
(2)XMLの概要と起源、関連規格 |
連載:XMLマスターへの道 |
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
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