XML & Web Services 第10回 読者調査結果発表 〜 RDF/RSSの活用状況と情報統合への取り組み 〜 小柴 豊 アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当 2003/9/2 |
XML & Web Servicesフォーラムでは、先ごろ10回目となる読者調査を実施した。今回のテーマは、blogなどへの利用が進む「RDF/RSS」と、企業システムにおける「情報統合」の2点。最新のXMLトレンドに、ITエキスパートはどのように取り組んでいるのか? さっそくその主な結果を紹介しよう。
■RDF/RSS活用状況は?
はじめにXMLによるリソース記述言語「RDF」(Resource Description Framework)と、その応用でWebサイトの概要などをメタデータとして記述するフォーマット「RSS」(RDF Site Summary/Rich Site Summary)の活用状況を尋ねたところ、「すでにRDF/RSSを作成・利用している」のは、回答者の6%にとどまった(図1)。「RDF/RSSを知らない」人が42%を占めているように、同技術の認知自体が、まだ十分には浸透していないようだ。
ただしその一方で「作成・利用予定はないが、興味はある」との回答も39%に上っており、今後RDF/RSSに関する情報が充実していけば、その活用度も大きく変わっていきそうだ。RDF/RSSの概要や構文に興味のある方は、下記リンク先を参照されたい。
●参考リンク: メタ情報とセマンティック・ウェブ(The Web KANZAKI)
図1 RDF/RSSの活用状況(全体 N=372) |
■RDF/RSSの活用用途は?
ところで読者はRDF/RSSをどのような目的で活用するのだろうか? 現在の用途と今後予定・検討している用途をそれぞれ尋ねたところ、現在はRSSによる「ニュース速報やWebサイト更新情報の配信」や、その「HTML出力/データベース化」が中心となっているようだ(図2 緑棒グラフ)。@ITやそのほかのWebサイトが配信している具体的なRSS情報については、下記リンク先で得ることができる。
●参考リンク:
- @IT新着記事のRSSフィードについて
- 日本で配布されているRSS/RDF(rss-jp.net)
図2 RDF/RSSの活用用途(複数回答) |
一方、今後の取り組み予定を見ると、「個人プロフィールやアドレス帳/スケジュールなどのRDF化」「RDF/RSSを利用したビジネスアプリケーションの開発」といった、活用用途の広がりが予感される(図2 黄棒グラフ)。前者については、個人プロフィールのメタ情報化による知人ネットワークの実現を目指す“The Friend of a Friend (FOAF)プロジェクト”が登場している。またビジネスアプリケーション領域では、インターネット/イントラネット上に散在する各種資源のメタ情報化を進めることで、ナレッジマネジメントやデータ管理などに生かす動きがある。
このようにRDFによるメタデータ化の進ちょくは、コンピュータがその意味を理解して自動処理する“セマンティックWeb”の第一歩として、今後注目すべきものとなるだろう。
■企業の情報統合への取り組み状況は?
さて後半では、企業システムにおける情報統合の現状やニーズを見ていこう。周知のとおり近年の企業システム構成は、ホスト集中からクライアント/サーバ、Webシステムなど、さまざまな変遷を経てきた。その過程で、企業活動を支える情報(データ)の形態や保存先も、多様化/分散化している。
そんな中、業務の効率化/意思決定の迅速化を実現する手段として期待されるのが、情報統合だ。そこで、読者のかかわるシステムにおける取り組み状況を聞いたところ、現在情報統合を行っているのは、「実施済み/進行中」合わせて全体の11%であった(図3)。また「今後行う予定がある/検討・提案中」(18%)、「予定はないが、必要性は感じている」(44%)読者も含めると、全体の73%が情報統合に関心を持っていることが分かった。現在の情報分散状況に対する課題意識は、全般的に高レベルといえそうだ。
図3 情報統合への取り組み状況(全体 N=372) |
■統合が望まれる情報の種類とは?
ところで情報統合を行う場合、統合の対象となる情報の種類/形態には、どのようなものがあるのだろうか? 情報統合に関心を持つ読者を対象に集計したところ、上位に挙げられたのは「異種DBに分散保存されたデータ」「表計算/ワープロなどのオフィス文書データ」をはじめ、「グループウェアのデータ」「テキスト/XMLデータ」など、多岐にわたった(図4)。
データベースやグループウェアはもともと情報を集約するための存在ではあるが、さまざまな業務をシステム化する間に、それらが個々に独立して構築されてきた様子がうかがえる。
図4 統合対象となる情報の種類(情報統合関与者 n=271 複数回答) |
■情報統合の実現方法とは?
では企業内に分散された情報を統合するに当たって、読者のかかわるシステムではどのような方法を採用するのだろうか? 現在利用している方法と、今後の利用意向をそれぞれ尋ねたところ、現在は「必要なデータを特定のデータベースに集約して格納する」および「FTPやファイル転送ツールでデータを転送する」の2つが主流であることが分かった(図5 青棒グラフ)。
一方で読者が今後利用したい方法は現在と大きく異なり、「既存データをXML化し、共通フォーマットに変換して統合する」「SOAPなどのWebサービス技術でシステムを疎結合する」という、XML−Webサービス活用意向が大きな支持を集めた(図5 黄棒グラフ)。
図5 情報統合の実現方法利用状況(複数回答) |
物理的に特定データベースにデータを集約することができれば、情報が扱いやすくなることは間違いないが、多種/大量なデータリソースを持つ場合などは、移行作業に困難を伴う。またFTPや転送ツールを使う方法は、受発注データなど構造化された情報の統合には有効だが、ナレッジを扱うような非定型データの場合には、また違ったアプローチが必要になるだろう。
これら既存手法の限界を超えるものとして、XML & Webサービスの拡張性/柔軟性が期待されているようだ。
■調査概要
- 調査方法:XML & Web Servicesフォーラムからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2003年6月23日〜7月23日
- 回答件数:372件
- QAフレームワーク:仕様ガイドラインが勧告に昇格 (2005/10/21)
データベースの急速なXML対応に後押しされてか、9月に入って「XQuery」や「XPath」に関係したドラフトが一気に11本も更新された - XML勧告を記述するXMLspecとは何か (2005/10/12)
「XML 1.0勧告」はXMLspec DTDで記述され、XSLTによって生成されている。これはXMLが本当に役立っている具体的な証である - 文字符号化方式にまつわるジレンマ (2005/9/13)
文字符号化方式(UTF-8、シフトJISなど)を自動検出するには、ニワトリと卵の関係にあるジレンマを解消する仕組みが必要となる - XMLキー管理仕様(XKMS 2.0)が勧告に昇格 (2005/8/16)
セキュリティ関連のXML仕様に進展あり。また、日本発の新しいXMLソフトウェアアーキテクチャ「xfy technology」の詳細も紹介する
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