.NET Enterprise ServersのXML度を探る

Exchange、Commerce、そのほかのサーバ

■Exchange 2000 Server

 Exchange 2000 Server (ExchangeだけはServerの前に2000が付く。以下、Exchange Server)では、BizTalk Serverと連携して、BizTalkメッセージング・サービスでSMTPによる通信を行う。それ以外にも、Exchange ServerはXMLに関連した機能を備えている。

 XML機能の1つ目は、Web Storage System(WSS)上のデータのプロパティを、XML文書として保存している点だ。WSSとは、Exchange Server上で実現されるファイルシステム。WSSは、ほかのPCから共有フォルダとして見えると同時に、格納された情報はOutlookからもフォルダ内にあるメッセージとしてアクセス可能になる。

 WSSに格納するファイル(情報)には、関連情報としてプロパティを設定することができるが、このプロパティがXML形式になっている。プロパティの項目などはカスタマイズ可能で、プロパティに対して検索をしたり、ワークフロー情報への応用などが考えられるという。

 2つ目はOutlook Web Access(OWA)だ。OWAとは、Internet Explorer 5.0以上のWebブラウザ上で、Outlookを利用しているのと同じようなメッセージングクライアントを実現する機能だ。Webブラウザから自分のインボックスや、パブリックフォルダなどを参照できる。前バージョンまでは、ユーザーの操作ごとにHTMLを生成して送信していたが、Exchange Serverからは、XML文書とXSLのスタイルシートを用いてWebページを表示している。これにより、ユーザーの操作に対してスタイルシートの切り替えで画面表示を変更でき、素早いレスポンスを実現している。

■Commerce Server 2000

 BizTalk Serverが、XML文書の交換を通じた企業間取引を実現するためのサーバなのに対し、Commerce Server 2000(以下Commerce Server)はWebサイトを通じた電子商取引を実現するためのサーバといえるだろう。BizTalk ServerではデータのやりとりがすべてXML文書となるが、Commerce Serverの場合、利用者とはWebページを通してやりとりするため、データをXML文書化する必要性はそれほど高くない。

 それでもCommerce serverでは、XML関連機能を備えている。それはカタログデータの交換だ。Commerce Serverの備えている「カタログシステム」は、利用者に商品一覧を提供し、検索などをするための機能。BizTalk Serverと連携してXML文書形式のカタログ情報をインポート/エクスポートできる(そのほか、CSV、COMにも対応している)。

■Host Integration Server 2000

 Host Integration Server 2000(以下HI Server)は、ホストシステムとWindowsシステムとの連携を行うサーバだ。さらに、HI ServerはBizTalk ServerとCOMやMSMQを通じた連携が可能なため、XML文書データを受け取ったBizTalk ServerがHI Server経由でホストシステムを呼び出したり、ホストシステムのデータをBizTalk Server経由でXML文書化する、といったことができる。マイクロソフトではこれを「XML-to-Host統合」と呼んでいる。

■Internet Security & Acceleration Server 2000

 Internet Security & Acceleration Server 2000(以下ISA Server)は、従来Proxy Serverと呼ばれていたものの進化したもの。ファイウォール機能やキャッシュ機能を備えている。直接XMLに関連する機能は備えていない。BizTalk Serverがインターネットを通じて情報をやりとりするときに、ファイアウォールとしてセキュアな環境を提供するのに使われる、といったところだろう。

■Application Center 2000

 Application Center 2000は、Webサーバの負荷を分散するためのクラスタ機能、および、COMコンポーネントを、クラスタ化されたサーバ上で稼働させることによる負荷分散機能などを備えている。いずれも.NET Enterprise Serversのスケーラビリティを向上させるためのものだ。公開されてはいないが、このApplication Center 2000の内部ではロードバランスのためのサーバ間の負荷情報を交換する際に、XML形式の文書が利用されているという。

 ちなみに、BizTalk Serverも大規模な取引処理を行うためにクラスタ機能を備えているが、BizTalk Server独自のクラスタ機能であるため、Application Center 2000には依存していない。

■Windows 2000

 Windows 2000は、.NET Enterprise Serversのプラットフォームになるものであり、それ自身で特別なXML機能は搭載されていない。ただし、Windows 2000に搭載されているInternet Information Server(以下IIS)は、SOAPをHTTPで送受信するために使われている。

■今後どんなXML機能が追加されるか?

 マイクロソフトから、今後のXML強化プランが発表されているわけではないので、これから.NET Enteprise ServersのXML機能がどのようになっていくのかは想像するしかない。しかし、ここで解説した現在のXML機能で不足していると思われる点はいくつか指摘できる。

 おそらく最初に強化されていくのは、文書などの非定型データのストア部分だろう。数値データなど固定長のデータは、SQL Serverをストアすることに異論はないだろう。しかし、メールのような非定型なデータをXML文書の形式としてストアしていく機能がない。

 すでにOfficeアプリケーションではデータをXML形式にする機能が備わっているため、いずれサーバ側でもそれに対応するXMLストアが用意されるはずだ。Exchange Serverが備えているWSSは、いまでもXML文書をそのまま保存するストアとして機能するが、いずれDOMツリーのようなXML文書を解析した状態で保存するような、XML文書に最適化されたファイルシステムになることもありうる。これはオブジェクトストアに通じるものだろう。

 XMLに最適化されたストアであれば、データを作成したアプリケーションに依存せずに、任意のデータの中の任意の一部だけを簡単に取り出したり、ほかのフォーマットに変換したりすることが非常に容易になるはずだ。Wordで作成したXMLデータの一部をExcelのシートの一部として見たり、HTML化してWebブラウザで見るといったことが、ごく自然にできるようになる。また、「Tahoe」と呼ばれる文書管理サーバ、「Airstream」と呼ばれるモバイルデバイス向けサーバなども、大量の文書を処理するサーバであることから、こうした非定型データを効率よくXML文書形式で格納するXMLストアへの要求を高めるはずだ。

 定型データの扱いもまだ発展する余地があると思われる。SQL ServerのXMLビュー機能は、テーブルの内容をノードに見立ててXML文書に組み立てて見せる機能を持っていて便利だが、その逆のOpenXMLは、XML文書の内容をノードに分解してテーブルに格納するためにストアドプロシージャが必要で、まだXMLとリレーショナルのあいだのハードルが多少高い。XMLバルクロードやXMLアップデートで、これらは改良されると思われるが、さらにXMLとリレーショナルの壁を取り除く方向で進化するだろう。

 まだ.NET Enterprise Serversのラインナップもそろっていない現在、こうした進化はあと1年かそれ以上先のことになるかもしれない。しかし同社の「.NET戦略」を実現する重要なカギを握るのが.NET Enterprise Serversであるならば、こうしたXML機能の進化は確実に訪れるはずだ。

 

Index
.NET Enterprise ServersとXMLの関係
  各サーバのXML機能概要
  BizTalk Server 2000
BizTalkオーケストレーション・サービス
BizTalkメッセージング・サービス
  SQL Server 2000
FOR XML句
XMLビュー
URLクエリ
OpenXML
Exchange、Commerce、そのほかのサーバ
Exchange 2000 Server
Commerce Server 2000
Host Integration Server 2000
Internet Security & Acceleration Server 2000
Application Center 2000
Windows 2000
今後どんなXML機能が追加されるか?
 

 



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