BtoB実用の最先端:RosettaNetとは?
── その仕組みと仕様を探る ──

IT業界と電子機器業界が興したRosettaNet

 RosettaNetには、PCやソフトウェアなどの情報機器業界(IT業界)、電子部品やコネクタなどの電子部品業界(EC業界)、シリコンウェハや半導体などの半導体製造業界(SM業界)らが参加している。地理的には北米、ヨーロッパはもとより、南米のブラジル、メキシコ、アジアでは日本、台湾、シンガポール、韓国などの企業も参加している。

 ある業界内でBtoBの標準が策定される場合、その業界で大きな力を持つ企業がリーダーシップをとって取引先企業に自社仕様の採用を要求していくことで、事実上の標準が出来上がっていくことがある。また、ebXMLのように、国連と業界団体であるOASISが共同で、あらゆる業種業態に対応できるようなBtoBの標準を策定する、という壮大なプロジェクトも世の中では進行中だ。

 しかしRosettaNetでは、下記にあるように業界内の多くの企業が参加し、協力して標準の策定を行うという手段を用いている。

RosettaNetに参加している主なメンバー企業

IT業界
3COM、CISCO、Compaq、Dell、HP、IBM、Intel、NEC、Quantum、Siemens、Solectron、Deutsche Financial、Microsoft、Netscape、AMEX、Lucent、FedEx、UPS、CompUSA、Offic Depot、Ingram Micro、SAP、SONY

EC業界
Altera、AMD、Hitachi、Intel、Lucent、Micron、Motorola、NEC、Philips、Samusung、TI、Toshiba、Xilinx、AMP、Molex、Frametone、AVX、Bourns、Kemet

SM業界
Agilent、Micron、National Semiconductor、TI、Applied Material、凸版印刷、NEC、Philips、Chartered、Adaptec、Amkor、ASE、SPIL、JSR

 これらの企業名をよく見ると、製造メーカーだけでなくさまざまな企業が含まれているのが分かる。例えば、ITメンバーのFedExやUPSはサプライチェーンの中で流通を担う企業として参加しており、CompUSAやOffice Depot、Ingram Microは再販業者や小売業者としてメーカーからの仕入れを行う企業である。AMEXやLucentはエンドユーザーとして参加している。また、ECメンバーの中のAMPやMolexはコネクタメーカーとして、SMメンバーのApplied Materialは半導体装置メーカーであり、凸版印刷は素材メーカーとして参加している。

 ここではよく名前を知られたメーカーを中心に紹介したが、これ以外にRosettaNet対応のソフトウェアを提供するメーカーや、サプライチェーンを実現するためのソリューションを提供する企業などを含めると、ゆうに100を超える。こうした、上流から下流まで、さまざまな企業を結ぶ巨大なサプライチェーンの実現が、RosettaNetの標準によって支えられている。

■4種類の標準規約

 RosettaNetはBtoBのための標準を策定するわけだが、その標準規約は下記のように3種類に大別できる。

Dictionary
XMLでいうボキャブラリにあたる。ビジネス文書で使われる用語の定義

  • 日付、会社名、取引先コード、取引種別など、どのビジネスにも共通で用いられる用語(Business Dictionary)
  • 製品情報、技術情報など、取引上必要な“製品仕様”の定義(Technical Dictionaries)

PIP(Partner Interface Protocol)
企業間で行う取引のビジネスプロセスと、やりとりされる文書の文書型定義などを定めている。

  • 取引先間で情報を交換するためのワークフローの定義
  • 個々のフローで交換される“ビジネス文書”の定義(Message Guideline)

RNIF(RosettaNet Implementation Framework)
通信プロトコル(HTTP、HTTPS)、電子署名、認証など、インターネットを介して通信を実現するために必要な技術要件を規定

EConcert
実際にRosettaNetの標準を利用してBtoBを行う実証パイロット。

 Technology Dictionariesは、IT業界向けやEC業界向けのものが定義されてきたが、これは近々1つの辞書に統合される予定だという。

 企業間で行う取引のビジネスプロセスと、やりとりされる文書の文書型定義などを定めているPIPは、製品情報の入手、見積もり、発注などさまざまな場面ごとに定義されており、現在約100種類を超えるPIPが開発されている(今後も増える予定だ)。このPIPの存在がRosettaNetの最大の特徴だといっていいだろう。

 通信プロトコルなどを定めるRNIFは、現在バージョン2.0まで進化している。

 これらの規約の関係を端的に表現すると、PIPがDictionaryを使用し、RNIFはPIPをインターネット上へ流すための標準として位置づけられる。そして、その実証パイロットがEConcertということになる。

 BtoBのためのこうした標準の策定を行った結果生じたメリットとして、BtoBを実現するためのサーバ製品に縛られない、という点がある。実際に、RosettaNetに参加している企業では、BtoBサーバとしてマイクロソフトのBizTalk Server 2000や、ウェブメソッドのWebMethods、インフォテリアのAsteriaなど、さまざまなサーバを利用しているようだ。いずれのサーバを利用していたとしても、上記に挙げたRosettaNetの標準規約に従っている限り、取引先とのやりとりが可能になる。今後もさまざまなベンダからRosettaNet対応のBtoBサーバが登場してくることだろう。

 次項では、DictionaryやPIPなどの標準規約の内容を見ていこう。

「PIPなど4種類の標準規約の中身は?」

Index
BtoBの最先端:RosettaNetとは?
  なぜBtoBでRosettaNetなのか
IT業界と電子機器業界が興したRosettaNet 
4種類の標準規約
  PIPなど4種類の標準規約の中身は?
共通の用語を定義するDictionary
ビジネスプロセスを表現するPIP
インターオペラビリティのためのRNIF
実証パイロットのEConcert


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