座談会 「XMLの明日」

 3.XMLアプリケーションのモデルが課題

檜山 (XMLをビジネスで使うときに)困るという話では、別のことも感じている。実際にXMLアプリケーションを作るときに困るんですよ。アプリケーションのモデルがないのね。

川俣 それはJavaのような言語の限界でもあるでしょう。プログラム言語の側で、(XMLが持っている)ツリー型のデータ構造をうまく表現する機能を持ち合わせていない。

檜山 開発するアプリケーションでXMLを扱うことは合意しているとして、それを適応する分野もはっきりしているとしてね、そこから先のガイドラインというかフレームワークがないのね。もちろん、それはプログラムを作る側の問題でもあるけど、DOMのエンジンがあったとしても、それはなにかを作ろうとしたときに「ネジがあります」というくらいなもんで。もっとなんかフレームワークがほしい。

川俣 XPath Scriptとかチャレンジはありますね。C#のようなものへの期待もあるでしょう。

新野 (DOMなどの)APIよりもずっと高級なものですね。

檜山 モノとしてコンポーネントが提供されてもいいし、設計手法やフレームワークでもいいと思うけどね。

新野 そこは江島さんの会社のメシのタネになるんじゃないですか?

江島 そうなるんじゃないですかね。もちろん上にいくほどその手法というかワークフレームは広がっているとは思うのですけどね。

檜山 分野ごとにそれが違うのはしょうがないと思う。でも、分野がきまっている、仕様も決まっている。XMLを使うことも明らか。そうしたときに、要求とXMLの機能を重ね合わせると、だいたいこういったモデルで開発するでしょう、といったものがない。

江島 そうそう、ネジはあるんだけどビルディングブロックになっていない。まだ粒度が小さい。

   XMLで失敗する方法ならある

檜山 いまいくつかのXMLを使うプロジェクトがあるのだけど、当たり前だけど、ほとんどの人はXMLを使って動くものを作った経験がない。そうするとXMLを使うことがいつのまにかトーンダウンしちゃう。やっぱりRDBにしちゃおうとか。
 一般のプログラミングに関して言えば、教科書が成立するじゃないですか。例えば広域変数使っちゃいけないよ、みたいな基本事項はあるでしょう。そういったノウハウやTipsが、XMLではあんまり蓄積されていない。ある典型的なプログラム、例えばソートプログラムを作るときには、こういうデータ構造とアルゴリズムで、というセオリーが書けるでしょ。でもXMLではそういうのがまだない。

川俣 私も気になっているけど、SGMLの時代からおもにたくさんの失敗を通じて経験が蓄積されてね、こうしたら失敗するというケースが存在しているにもかかわらず、いまからXMLをはじめた人はそれを知らない。で、同じ失敗にはまるケースが見えるから、なんとかしたいんだけど。

檜山 こうしたら失敗する、のほうはある。けど、こうしたら成功する、という決め手はないなあ。

新野 でも失敗しそうな人を救えるだけでもいいじゃないですか。

檜山 例えば番号でタグ作ると絶対に失敗する。(笑)

川俣 そういうのぜひ原稿で書いてくださいよ。檜山さん。(笑)
  例えば、日本電子出版協会の作ったJapaXという言語がありますけど、これはSGMLの経験のある人がアドバイスしたので、結構すんなりできたという経緯がある。経験のある人がアドバイスするかどうかで、XMLで作る言語の質がそれだけで変わってしまうことがある。

新野 ぜひわれわれもそうした情報の提供に努力していきましょう。


Index
座談会 「XMLの明日」
  1.XMLが分裂してしまう可能性はあるか
今は多くのインダストリーでXMLを取り入れる動きが活発だ。このままインダストリーごとにXMLの規格が分裂してしまう可能性はないのか。それを防ぐにはどうすべきか
  2.自分だけのタグを作るな!
XMLは独自にタグを定義できることが特長だが、それだけでは他社とのデータ交換ができなくなってしまう。独自のニーズを満たしつつデータ交換を実現する方法は?
3.XMLアプリケーションのモデルが課題
XMLアプリケーションを開発する際に、定番の見本や方法論はまだほとんど存在していない


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