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スイッチングハブ (switching hub)

最終更新日: 2002/05/08

 スイッチング機能を持つハブ(集線装置)。パケットをその宛先に応じてインテリジェントに振り分け、ネットワークトラフィックを局所化して、ネットワークの全体的な通信バンド幅を増やすことができる。

 10BASE-Tや100BASE-Tなどのネットワークでは、各ネットワーク機器同士をハブを使って相互に接続しているが、イーサネットではCSMA/CDという通信方式を採用している関係上、ノード数が増えると有効な帯域幅が急速に飽和するという特性を持っている。そこで、実際に通信をするポート同士だけを直結して通信を行い、それ以外のポートへはトラフィックが流れないようにするスイッチング技術が開発された。これを実装したハブをスイッチングハブという。基本的には、ブリッジをマルチポートに対応させたようなものといえる。

 リピータハブでは、あるポートから受信したパケットをすぐに他の全ポートへ再送している。しかしスイッチングハブでは受信したパケットをいったんハブの内部へ蓄積したあと、その宛先を調べ、宛先となるネットワーク機器が接続されているポートだけにパケットを送信する。その他のポートへはトラフィックを流さないため、それ以外のポート上では別の通信を同時に行うことができる。これにより、ネットワーク全体の見かけ上の総バンド幅を増大させることができる。

 通信先ポートの振り分けは、通常はイーサネットのMACアドレスに基づいて行われる。スイッチングハブの内部にはMACアドレスとポートの対応表があり、どのMACアドレスの機器がどのポート上に接続されているかが管理されている。そして、受信したイーサネットのパケットの先頭にある宛先MACアドレスに基づいて送信先ポートが決定され、必要なポートにのみパケットが送信されるのである。MACアドレスとポートの対応表は、イーサネットのパケットを受信したときに、そのパケットが到着したポートとそのパケットに含まれている送信元MACアドレスを元にして自動的に作成される(管理者が特定のポートと特定のMACアドレスの対を追加することもできる)。もしまだ対応表上に正しいエントリが登録されていなければ、受信したパケットはすべてのポートへ伝えられるが、一度でもパケットを受信すると、自動的にMACアドレスを学習し、表を更新する。

 スイッチングハブがパケットをフォワードする方法(受信したパケットを、宛先ポートへ中継・再送信する方法)には大きく分けると、@ストアアンドフォワード、Aカットスルー、Bモディファイド・カットスルーの3種類がある。ストアアンドフォワードは、パケット全体をいったんすべて受信して内部のバッファに蓄積した後、宛先ポートへ再送信する方法である。機構的には一番簡単にできるが、パケットをいったん蓄積するために1パケット分の遅延が生じ、スイッチングハブを多段接続すると、遅延が大きくなるという特性がある。カットスルー方式は、イーサネットパケットの先頭アドレス部分(パケットの一番先頭にある6bytesの部分)を受信した時点で宛先ポートを判別し、その時点からパケットの送信を始める。この方法は遅延が一番小さいが、途中でコリジョンやエラーなどが発生すると宛先ポートにもそれらを伝えなければなければならず、エラーやコリジョンも中継されてしまうというという特性がある。Bモディファイド・カットスルーは、先頭の64bytes(イーサネットにおける最小フレームサイズ)を受信した時点でパケットのフォワード動作を始める。これにより、コリジョンなどは中継されず(イーサネットでは、先頭の64bytesでコリジョンが発生しなければ、それ以後ではもう発生しない)、遅延も最小限ですむというメリットがある。なおいずれの場合でも、宛先ポートのネットワークが使用中ならば、パケットはいったんハブの内部に蓄積された後、ネットワークが空いた時点で送信が行われるので、リピータハブのようにコリジョンが多発して送信が行えなくなるという状況は発生しにくくなっている。

 スイッチングハブを使うと、総バンド幅が増大するという以外にもさまざまなメリットがある。まずパケットをいったん内部に蓄積してから送信し直すので、速度の異なるイーサネット媒体間におけるパケットの中継をすることができる。たとえば、10BASE-Tと100BASE-Tが混在したネットワークにおいて、その中継のために使用できる。また送信と受信を独立して行うことができるので(CSMA/CD方式のリピータハブでは、自分の送信したデータを再度受信することによってコリジョンを検出している。そのため、送信したデータは必ずそのまま受信できなければならない。しかしスイッチング方式ではこの必要はない)、全二重通信方式を実現することができる。これにより、10BASE-Tで最大20Mbps、100BASE-Tで最大200Mbpsのバンド幅を実現することができる。さらに、通信に関与しないポートにはトラフィックが流れないので、セキュリティ的にも単なるリピータハブよりも安全であるといえる。

 また、イーサネットのネットワークのコリジョンドメインを分割することができるというメリットもある。CSMA/CD方式では、コリジョンを検出することによって2つ以上のノードが同時に送信を行わないように管理しているが、この検出を確実にするために、コリジョンドメイン(コリジョンが到達する範囲)というものが定義されている。ハブを使うことによってコリジョンドメインを拡大することができるが、10BASE-Tでは最大4ハブまで、100BASE-Tでは最大でも2ハブしか使用することができない。特に100BASE-Tでは、ハブ間は最大5m、ハブ−ノード間は最大100mしか許されていないので、これではあまり大きなネットワークを作ることはできない。しかしスイッチングハブを使えば、2つのコリジョンドメイン間に挿入して、ネットワークの規模を拡大することができる。

 なお、一般的なスイッチングハブはイーサネットのMACアドレス(OSI階層モデルでいうと、第2層のアドレスに相当)に基づいてスイッチ動作を行っているので、レイヤ2スイッチともいうが、より高位のレイヤ3やレイヤ4のアドレスに基づいてパケットのスイッチング動作を行うスイッチングハブもある。

ブリッジ
ブリッジ
データリンク層のレベルで、2つのネットワーク・セグメント間でネットワーク・パケットを中継するための装置。一方のネットワーク・セグメントから入ってきたパケットの宛先アドレスを調べ、それが他方のネットワーク・セグメント宛の場合には中継するが、そうでなければ何もしない。これによりネットワーク・セグメントを分割してトラフィックを特定のセグメント内だけに抑え込んだり、異なる物理メディア間でのパケットの中継を行うことができる。

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