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BPM導入アプローチと留意点を考える

アビームコンサルティング株式会社 プリンシパル
三箇 功悦

2006/3/17

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BPMシステムの全体イメージ

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 BPMシステムは、既存の各種業務システムと相反するものではない。どちらかというと相互補完する関係にあり、通常は大きく3つの機能から成り立っている。

 まずは、EAI(Enterprise Application Integration)機能である。BPMの業務対象とするプロセスをカバーしているシステムからBPMシステムはインターフェイスを通して当該プロセスの目標値や実績値を効率的に取り込む必要がある。一般には、EAI機能を使用して、既存システムのデータを効率的に変換して、BPMシステムのBPM基本機能へパスする。

 最も大事なBPM基本機能は、「プロセスを具体的に定義して、プロセスフローの作成を支援する機能」「目標値を設定する機能と実績値を取り込む機能」「結果を比較・分析できるモニタリング機能」から構成されている。

 最後のポータル機能は、BPM基本機能で管理されている情報をすべての関係者がさまざまな形で検索・閲覧・共有できる機能である。またセキュリティの観点から認証やアクセス権の管理も重要な機能となる。

図2 BPMシステムの全体イメージ

BPMを導入する場合の主要留意点

 BPMを導入する場合、その企業の置かれている状況に応じてさまざまなアプローチが存在するが、主要な考慮ポイントは以下のとおりである。

(1)基幹システムの再構築との位置関係

 ERPなどの基幹システムの導入とBPMの位置関係を整理しておく必要がある。すでにERPを導入・稼働しているところへ追加的にBPMを実施していくという場合と、本格的なERP導入すなわちBPRをこれから実施してその中にBPMの要素を入れていくのでは、アプローチ方法はまったく異なってくる。

 前者は、導入済みの基幹システムとの親和性の高いBPMツールを選定し、対象となるプロセスを定義し、KPIの設定、実績の把握、対応策の実施を繰り返していくパターンで、プロセスの選び方にもよるが、工数や期間も大きくはない。一方後者は、ERPの導入(BPRの実施)自体が一大プロジェクトであるケースが多い。その作業の一部に継続的要素を埋め込む工夫をするというアプローチになっていく。

(2)対象業務プロセスの範囲の選定

 SOX法対策などで内部統制拡充のために全プロセスを広く網羅的に整理する場合のアプローチと、経営上重要な特定のプロセスに絞ってBPMを導入する場合のアプローチは異なる。また子会社など組織が異なる場合の導入をどのような手順にするかもポイントとなる。いずれにしろ関係組織の長を巻き込み、全社的な展開にしないと失敗する可能性が大である。

(3)BPMツールの有効活用

 BPMツールは昨今、さまざまなベンダから機能の充実したツールがどんどん提供されているので、自社に合ったBPMツールを選定し有効活用することが重要である。ゼロからすべて自前で構築する場合に比較して、コスト面のメリットは大きい。それぞれのBPMツールはそのルーツによって、プロセスの可視化が得意なドローイング系ツール、ワークフローツールから発展した系統、EAIやポータルから発展した系統、BAM(Business Activity Management)として分析・モニタリングが得意な系統などに分類される。しかしながら各社ともにEAI機能、BPM基本機能、ポータル機能を充実し、総合化・統合化しつつある。それぞれのツールには特徴がいろいろあるため予算面も含めて選定は総合的に実施する必要がある。

(4)既存システムとの効率的なインターフェイス

 実績値の把握は、既存システムのデータベース、レポート、ログに存在しているケースが多い。あらためて実績値を現場で再入力してもらうことは不可能ないし非現実的なため、既存システムとの間に何らかのインターフェイスを用意してBPMシステムに渡す必要がある。既存システムに必要な情報がない場合は、それ自体をどのように集計するかから検討する必要がある。データ取得対象となるシステムを本格的に作り直さないとデータが取れない場合も少なくない。

(5)人間系への配慮

 いくらBPMシステムを作ってプロセス変更が容易になったといっても、実際に現場で活動をするのは人間である。人間誰しも、業務プロセスが変わることには抵抗を示すのが普通である。そこで変化に適応するための準備、例えば十分な周知、トレーニング、マニュアルなどは必要不可欠なものとなる。

 また、同時に変化し続けるための動機付けも重要である。当該プロセスのKPIを設定し、実績値を取ってモニタリングしていく過程における個々人の目標設定や人事考課面での配慮は、BPMを成功させるための重要な要素となる。

 BPMをどのように理解しどのような全体感でとらえるかについては、それぞれの個人のバックグラウンドや会社の立場によって異なるところがあろうかと思っている。

 BPMを継続的BPRとして定義した場合、従来の基幹系システム構築時のBPR視点を忘れずに実行してきた人たちの目には、あまり違和感がないコンセプトだと映るだろう。従来の流れに比べ、効果測定の視点とプロセスの可視化(文書化)の側面が前面に出ているという印象は受けるかもしれないが、それらも率直にいって従来から課題視されてきたポイントである。

 そう考えてみれば「BPM」といっても何か特別に新しいことをいっているわけではないといえる。ただ、BPMという言葉でこれらが体系的に整理されて、関係者が同じ単語で話せるようになるのは、それなりの進歩ではないかと思う。

(了)

筆者プロフィール
三箇 功悦(さんが こうえつ)
アビームコンサルティング株式会社 プリンシパル
富山県出身、横浜国立大学経営学部卒、公認会計士
1978年4月にアーサーアンダーセンアンドカンパニーの監査部門に入社、同11月に同社コンサルティング部門へ(旧アンダーセンコンサルティング、現アクセンチュア)。製造会社、リース会社、商社、金融機関、中央官庁などの大規模システムの企画、設計、開発、運用などを多数経験。2000年6月にアクセンチュアを退社、ASPベンチャー会社(サティスコム)を経て、2003年2月からアビームコンサルティングへ。2006年3月現在、同社コンピタンシー統括責任者、プリンシパル。
■要約■
ビジネスプロセス・マネジメント(BPM)を行う場合、全プロセスを一気にBPM化するか、効果が大きいプロセスから徐々にBPM化するか、容易に実現しやすいプロセスからBPM化するかについては、企業の置かれている状況による。

すでにERPを導入・稼働しているところへ追加的にBPMを実施する場合と、本格的なERP導入を行う中にBPMの要素を入れていくのでは、アプローチ方法がまったく異なる。また、内部統制拡充のために全プロセスを広く網羅的に整理する場合と、経営上重要な特定のプロセスに絞ってBPMを導入する場合も異なる。

BPMツールの選定、既存システムとの連携のためのインターフェイス整備も大切だ。同時に人間系への配慮、例えば十分な周知、トレーニング、マニュアルなどは必要不可欠である。

また、同時に変化し続けるための動機付けも重要である。当該プロセスのKPIを設定し、実績値を取ってモニタリングしていく過程における個々人の目標設定や人事考課面での配慮は、BPMを成功させるための重要な要素となる。

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BPM導入アプローチと留意点を考える
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BPMシステムの全体イメージ
BPMを導入する場合の主要留意点
 (1)基幹システムの再構築との位置関係
 (2)対象業務プロセスの範囲の選定
 (3)BPMツールの有効活用
 (4)既存システムとの効率的なインターフェイス
 (5)人間系への配慮



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