アジャイル・エンタープライズへのロードマップ
2007/3/16
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経営とITの融合視点における次世代の人材育成とは
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多くの大学では、研究者ではなく、技術者の育成に力を入れ始めた。経産省委託調査によれば、学生は「講義と実習/演習」「最新技術・一流技術者による教育」「インターンシップ」といった、直接に先端技術に触れ、自ら手と足を動かす場を求めている。学生は分かっているが、実際に大学で行われる講義とは乖離しているのが現状だ。
海外の大学では、高度情報システム技術者のための新しい産学官連携が始まっている。韓国情報省は、1997年にソフトウェア技術者を育成する大学としてICU(Information Communication University)を設立し、カーネギーメロン大学とも提携する。1998年にSAP創業者の1人、ハッソ・プラットナー氏がドイツに同様の大学を設立したほか、アメリカのIT企業もインドに設立している。そして、北アイルランドのクィーンズ大学やアルスター大学が6カ月〜1年間の海外インターンシップに取り組むように、欧米では長期インターンシップが普通に実施されている。
このような流れを受けて、情報システム技術者教育として、「学部・大学院・企業教育の連続化」に取り組んでいきたい。実際に企業で活躍している優秀な技術者が学生に直接、講義・演習することが大事だ。また、講義・演習は、週1回ではダメだと考えている。講義・演習を拡充し、週2〜3回に集中させ、繰り返しチャンスを与えていくべきだろう。
企業では、人はコストではなく、活用や膨らませていくことができる資産ととらえ、人材を尊重する風土が必要になる。企業で、OJT、研修/セミナー、自己学習、知の交流など、いろいろな場を作り伸ばしていってほしい。もちろん、情報システムに不向きな人には別の道を示唆し、育成することになる。一番、力が付く20〜30代に大学だけで過ごすのが良いのか、という問題もあり、産学官で体系化した連続化教育をつくりだすことが重要だ。
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俊敏で柔軟な企業システムの実現に向けた破壊と創造
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まず、アジャイルを「視る」という観点から。NY9・11テロの後、破壊されたペンタゴンの復元というプロジェクトが動きだした。「1年以内に元通りにする」というのがその要求。ペンタゴン復元の達成・実現のために、アプローチとして綿密なタスクを定義し、個々の問題をオーナーとミーティングで調整し、そして課題を先送りせずに反映した。そして、使命感も手伝って、当初の計画を100%実現でき、期間は1カ月以上早めることができた。
私が手掛けたケースでは、現状を打破するために、異なる分野の専門家でプロジェクトチームを結成したことがある。そのときに設定した目標は、生産性2倍、リードタイムを2分の1にするというもの。どういうシナリオを策定すれば調整が要らなくなるのか、オーナー、デザイナー、プランナー、技術者、コピーライターと、おのおのの立場から議論した。結果的に、制作のリードタイムを5分の1にし、技術的な作業をなくすことができた。
計画というものは、機械的にいくものではない。ある判断をしなかったために、どういう重大なことが起きたのかをチャートで表してみた。結果としておかしくなったときに、ある個人やある組織が犯人だと責任転嫁を行うためではなく、マネジメントやおのおののコラボレーションの中で、スケジュールに関して最適な判断を行わないと大変なことになると知るためのものだ。
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それをどう数値化するかということで、「危と機のグラフ」を作成した。これは結果論で作成したものだが、スタート段階では危険度が少ない。これが、構築・設計の段階になると、いろんな事象が出てくる。その中で危と機のグラフは変化するが、その着地点としては安全にいかなければならない。それをどう判断するか、順次変更を加えながらやっていくことで、失敗が避けられると考えている。先ほどのペンタゴンの事例でも、このような計画時にカーブを描き、進行状況によるカーブの補正でリスクを回避するようなマネジメントが行われ、期間どおりにうまくいったのではないか。
次は、このアジャイルをどう「診る」か。今回のテーマを練っていたときに、コンサルティング会社 エム・イー・エルの佐藤秀幸氏と「アジャイルといったとき、計画の観点と、そうでないものとがあるね」という話になった。そこで「戦略経営の父」として知られるH・I・アンゾフが定義した「乱気流水準」に着目し、それと比較される「経営クラフティング」のヘンリー・ミンツバーグの考えを融合して「機敏性の定義」としてアジャイルと対応させてみた。それにより、企業が外部環境の変化などに対して、どういう行動を取るべきかが見えてくると考えたからだ。
5段階ある乱気流水準の1に当たるところは、反復する同一変化としてとらえることができ、機敏性の定義では定型業務のリードタイム短縮や品質保持の機敏性がその要素となる。いわば、昔の行政サービスがそれだ。その定型業務の中では何かが起こったときにどう判断するかという点で人間が介在するアジャイルとなる。乱気流水準3に当たる質的な変化は、例えば1年後、3年後に業界が大きく変化する事象が出てきて、業界全体の再編成が起こるようなときに、それに1年、2年と時間をかけて対応しながら、変化したときに対応するというアジャイル。乱気流水準5に当たる不測事象は、いま計画を立て対応に当たることが成り立たない世界でのアジャイルだ。
どの水準を目指すかは、業界によっても異なる。「アジャイル診断」を行うことで、現状認識や目標設定の方向性、改善ポイントなどを導き出すことができる。具体的には、現状のポジション認識を行い、ロードマップを作り、個々の対応するものをきっちりと押さえていく。いま、これを研究する部会を作ろうとしている。
乱気流モデルと対になってくるのが「成熟度モデル」だ。俊敏な対応をしなければならない会社なのか、じっくり対応する会社なのか、安定しているのかというような見方をしていく。ある会社にこれを持ち込み、どこを目指していくかとなったときに、ある人はいまの会社の水準は5だといい、またある人は1だといった。1だといった人は、いまの規模のままでいけば1だけど、会社の発展などを考慮すると、4や5を目指していかなければいけないということだった。このように、単純に当てはめられるものではなく、どういう方向を目指していくかを自社で認識していくためのものだ。
ITと経営のバランスは「8視点診断」を用いる。これは、上半分が事業・経営の視点、下半分が主に情報システムで構成される評価チャートだ。このチャートのミソは、経営と技術スキル、基盤とシステム基盤、事業とシステム構築、オペレーションと安心のアジャイルのように対になっていること。上と下とをバランスよくやらなければ、作業が効率的ではないということになる。
創造や調整などは、ITではできない。他方、計画や行動といった決められたものをやるのにはITが向いている。その融合を図りながら、どううまくマネジメントしていくか──、これから何を目指すのか──。agileという言葉を辞書で引くと、「機敏」という言葉が出てくる。これは忙しいという意味ではなく、余裕を持った速さだ。内部統制で暗い雰囲気の会社組織になってしまうのではなく、機敏、利口、スマート、優雅、元気な、つまりアジャイルな会社であってほしいと願っている。
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BPMとSOAサイクル基盤を具体化する“上流の戦略/業務設計からシステム構築”の現在と将来を語る
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A-1セッションでは、BPMアプローチの考え方、BPMからSOAの流れで考える意義について、日本および海外のBPMユーザー事例を中心に、コンサルタントとベンダの立場から語った。
まず、日本ユニシスの日沖氏がプレゼンテーションに立ち、「苦労して基幹システムを再構築しても、全員が不満という構図が出来上がってしまっている。その原因としては、共通言語の欠如や全体目的観の共有不足が挙げられる。そこで、いきなり要件定義に入らず、構想策定フェイズを持つことで、目的観を持たずに迷走してしまうことを解消できる。BPMアプローチを適用することで、早いタイミングからビジネスプロセスを可視化し、業務改革のイメージを関係者間で共有化しながら検討できるメリットがある」と説明した。
続いて、日本BEAシステムズの佐々木氏が「AquaLogic BPM(ALBPM)」を導入したJPモルガン・チェースの事例を紹介。「トラッキングとレポート用に行っていたマニュアルプロセスに代わり、自動的にリスクをマネジメントしてプロセスを改善したいと考えていた。ALBPMにより、3カ月で本番システムがサービスインでき、ファイルの受け取りの処理時間が79%も削減され、人員削減につながった」とその効果を語った。続いて松本氏が製品デモなどを行った。
また、佐々木氏はSOAを「BPMをより効果的にするソフトウェアの設計思想・技術」と紹介。日沖氏も「BPMは人と組織の俊敏性を、SOAは技術面の俊敏性を図るものだが、目指すところは同じで組み合わせて活用すべき密接な関係にある。異なる点はそのアプローチと、適応する層にある」と述べた。
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“グローバル・エンタープライズ”へのロードマップを具現化するアクセンチュア/オラクルの取組みのご報告
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A-2セッションでは、攻めの経営時代に不可欠なITマネジメントとSOAの位置付けと、攻めの経営を実現した導入事例について、コンサルタントとベンダそれぞれの立場から語った。
アクセンチュアの白川氏は、「守りの経営から、攻めの経営に大きく経営戦略を転換していく中で、当然ITの位置付けも変わるべきだ。ハイパフォーマンスビジネス実現のためには、Industrialization、Information、Integration、Infrastructure、Innovationの“5つのI”からITを分析していく必要がある。また、SOAの発展段階は、「組織化と企画立案」のフェイズ1から「SOAの工業化」のフェイズ4までを想定している。いま、SOA先進企業はフェイズ3(SOAプラットフォームの活用)にあり、5年後にはSOAが一般化していて言葉自体なくなってしまっているかもしれない。取り残されないためにもいまから手掛けていくべきだ」と述べた。
続いて、日本オラクルの西脇氏が、「顧客を圧迫するのは、ハードウェア、ソフトウェア、インプリ、運用、サービスの5つのコストで、それを解決し、早く変化させていくためには統合が欠かせない。オラクルでは、インフラ、アプリケーション、情報、この3つの統合のシナリオを目指している。また、SOAにはたまたまSOAを手段として使った「SOA Based Integration」と、目的はSOAという「Enterprise SOA」の2つのアプローチがある。オラクルでは、スモールスタートして、段階的に全体をSOA化していける一通りのSuite製品を用意している」と紹介し、国内外の「SOA Suite」導入事例で締めくくった。
Page 1 基調講演 1:経営とITの融合視点における次世代の人材育成とは 基調講演 2/報告 1:俊敏で柔軟な企業システムの実現に向けた破壊と創造 A-1 セッション:BPMとSOAサイクル基盤を具体化する“上流の戦略/業務設計からシステム構築”の現在と将来を語る A-2 セッション:“グローバル・エンタープライズ”へのロードマップを具現化するアクセンチュア/オラクルの取組みのご報告 |
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Page2 B-1 セッション:俊敏で柔軟な企業変革を具現化する日立コンサルティング/SAPの取組みについて B-2 セッション:“As-Is”のモダナイゼーションによる“To-Be”での「SOA基盤によるBPMサイクル実践化」のご報告 パネルディスカッション:『俊敏で柔軟な企業変革』のロードマップ策定支援委員会の発足 |