BPM実現に必須となる組織能力と個人能力を測定する
2007/5/9
アジャイル経営診断プロジェクト“万華鏡”──新たなビジネス創出のためのコラボレーションフレームワークのすすめ
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現在、エム・イー・エルではメタジトリーとともに、アジャイル診断プロジェクト(コードネーム「万華鏡」)を進めています。
万華鏡というものは、その中身は1つ1つでは全然意味がないものです。しかし、それが多数集まり、見え方を工夫することによって、大変きれいなデザインになります。アジャイル診断プロジェクトでも、万華鏡のようないろいろな形でのコラボレーションができればいいなと考えています。万華鏡=「新たなビジネス創出のためのコラボレーションフレームワーク」ということを狙っています。このプロジェクトで実現しようとしている内容は、この図のようなものです。
アジャイル診断プロジェクトのスコープ |
経営コンサルティングの世界では、まずビジョンを集計し、それからビジネスプロセスへと入っていきますが、「具体的な成果物は何か」となると、どうしてもITの力が必要となります。そこでは、コンサルだけでなくIT関連企業の皆さまと一緒にコラボレーションをしてご提案していくことが大切です。
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IT系企業の方々と話をすると、提案の部分で「われわれは情報システムから入るので、経営層に上げるのが大変難しい。経営トップから入れるコンサルティング会社はうらやましい」といわれることがあります。これに関していえば、お互いに必要とされる能力があるということです。
「経営とITの融合」のスタート地点になるものは何か。そこは、やはり現状をしっかりと見極めるということが必要です。そこで、業界全体として「診断プロジェクト」や「診断システム」があるといいのではないかと考え、その仕組みを提案したいというのが今回の趣旨です。
診断システムを使うことにより、会社の経営課題とIT課題が明確になります。その経営課題/IT課題から、実際のビジネスにつながる「ビジネスプロセスの再構築」と「システム構築」という案件が出てきます。そして実際にプロジェクトを進めるに当たり、組織のスキルや能力の向上もテーマになります。このようにビジネスプロセスの改善、システムの構築、そしてスキル・意識の向上といった3つのテーマでさまざまなビジネスの展開ができるのではないかと考え、この診断プロジェクトを今回皆さまに情報提供したいと思います。
診断システムはいったいどういうものを想定しているのか──。これまでIT業界では成熟度モデルの観点から、さまざまな発展がありました。一方、ユーザー企業にとっては、情報システムの装備度も1つの切り口としてあると考えられます。この2つを組み合わせ、ユーザー企業がどのレベルにあるかを判断する。これがITからのアプローチ、考え方の1つです。
経営の側面では診断システムの背景に、H・I・アンゾフ博士が考案した「Strategic Management」(戦略経営)という概念があります。これは、経営者は企業を取り巻く経営環境の変化の度合いをしっかりと確認せよというもので、これはITと相性が良いと考えています。アンゾフ博士は、経営環境の変化の大きさを図のように5つの水準に分けています。
企業の成熟度モデル(CMMと対応) [出典]メタジトリー&JMACの診断シートを加工 |
乱気流水準の1は、ほとんど変化がない状態。水準2は変化があるものの、それはすでに経験しているもの、少しずつ発展しているという状態です。水準3になると、変化の中身は分かっているけれどもスピードが速いという状況です。4は顧客の満足度などの対応だけでは不完全で、「集中と選択」のように既存のビジネスの中でも未知の領域に進出しなければいけません。いわば、「企業家」的なマインドが必要になる状態です。そして5は大きな環境変化を自ら作ることが求められる状態です。
それぞれの環境変化の水準に応じて、戦略・システム・組織能力・企業風土が整備されなければなりません。戦略経営は1980年代に注目され、この環境変化に対応する形で戦略が構築されましたが、実際にはうまくいっている会社とそうでない会社があります。アンゾフ博士が調査したところでは、うまくいっていない会社はシステムや組織能力、企業風土のギャップが大きいことが分っています。
それで「戦略経営とは何か」ですが、この環境変化に対応するための戦略・システム・組織・企業風土のギャップをクローズするための一連の改革といえます。アジャイルを、このギャップをいち早くクローズするために短期間でシステム構築に対応させる動きだと定義付けると、アンゾフ博士が考えた戦略診断システムはアジャイル経営や「経営とITの融合」の部分でも使えるだろうと判断しました。
ということで、IT業界にもともとある成熟度モデルと、コンサルティング業界で概念として使われている乱気流診断的な考え方とを合致させると、経営とITの融合にふさわしい診断システムができると考えました。その診断システムをベースにユーザーのポジショニングを行い、そのユーザーに合った形でのシステム提案やビジネスモデルの構築、研修プログラムへ導く流れができます。それにより業界全体を活性化していきたいと考えています。
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丸山です。これまでのシステム提案は、みんな同じように「5のレベル」一気にを目指すものでした。実は「レベル2でいい」「3でいい」という会社もあり、やみくもにレベル5の提案をするのはムダが多く、お客さんは喜ばず、品質も上がらないのではないかという問題意識がありました。誰もがレベル5を目指すのではなく、まずは、それぞれの会社に適したシステム提案をしなければならない。それが私からの問題提起です。
私は会社を興したときから、システムとコンサルの連携を取ってやらなければいけないと考えてきました。その歴史的な産物が「8視点診断」です。企業のシステムを作るときに、RFPに盛り込まなければならない要素は8つだと定義したことが基になっています。
8視点診断 [出典]メタジトリー&JMACが開発した診断チャートを加工 |
「事業効率」「事業成長」「業務オペレーション」「組織」といった経営の視点が上の項目になります。それに対して、「維持」「システムの更改・構築」「ITスキル・技術」などシステムがどう応じるかが下に挙げた視点になります。バランスよくこの8つの視点があることが、会社として重要なポイントです。
それに外部環境を合わせ、「ゴールをどうするか」といったときに、IT産業の乱気流水準は5ですので、成熟度レベル4を目標として早期に具体的な中長期計画を立て、長い期間をかけて計画を遂行するようなビジネスモデルを採用するのはナンセンスな話です。また、乱気流水準4の自動車産業なら、きっちりと計画を立て、2〜3年の中で計画を遂行するというのが大事かもしれません。そういう個々の状況を踏まえたうえでビジネス提案をしなければならない、と考えています。
そこで「アジャイル簡易診断」を用意しました。質問事項についてデータを入力すると、診断レポートや課題レポートがコックピット上に出力されるものです。
あるSIerで試したところ、結果にばらつきが出ました。このSIerは、親会社が相当大きな会社で、きっちりと計画を立ててやる土壌があります。事業のレベルは3と4の間、経営は2と3、そのほかは3や4という結果で、柔軟性や迅速性が問われる情報システム産業のアベレージとの間でギャップがあります。維持・管理はちょっと弱いだとか、基盤系が弱いだとか、レポートを出すわけです。
例えば環境が水準4にあると、「市場が大きく変わろうとしています。環境の急激な変化が起こる可能性があります」とレポートを出しています。いま、事業やITがどういう対応になっているのかを簡易に診断するわけです。その答えは2つあって、1つは「対応ができています」、もう1つは「その準備が必要です」というもの。
計画性や俊敏性など、少しゴチャゴチャしている状態を、どう軌道修正していったらいいか──。経営とITのギャップ分析で、いろいろばらつきがある中、どう持っていこうかを考えるわけです。戦略のばらつきなら、「会社としてのベクトルが合っていないね」という中で、どう軌道修正するかという話になります。これらを踏まえて、「人をどのように、そこにセットするか」と持っていくのが、この診断ツールの役割です。
簡易診断でやるのが本当に正しいのかという話が当然あります。この診断は「あなたの会社はこうですよ」と断定するのではなくて、「こういう答えが出ていますよ。これは本当にそうですか?」と示すことで、その会社自身が考え、自分のレベルを設定し、それに対して対策を取るために役立てるものです。何か「もやっ」とした形でシステムを作るのではなくて、自分自身の意識がはっきりしたうえでシステムを作るために、焦点が合った形で提供側が提案できる世界をぜひ作りたい、という思いがあります。
現在、どういうスキルがその企業や組織にとって必要かをセットしたときに、資格だけではなく、どう教育をしなければならないかなどを含めた広がりを、KIU研究会として皆さんと一緒になって考えていきたいと思っています。お客さまの情報を取得し、それに対して最適のものを返すという仕組み作りです。新たな企業環境の構築をけん引する役割をぜひ、これをきっかけに考えていきましょうというのが今回の提案です。
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