連載
KIU研究会レポート(6)


APジェネレータが導くシステム開発の新パラダイム

生井 俊

2007/2/20

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モダンシステム(To-Be System)は、既存システム(As-Is System)の可視化の共有よりスタートする

 
Speaker
J-KIT System
ソリューション事業部 マネージャー
李 東源氏
   

 レガシーマイグレーション作業の中で大事なステップといえるのが、既存システムの可視化でしょう。その可視化を実現するツールである「ModernArch」の概略を紹介します。

 まず、レガシーシステムについてですが、古いシステムだから早く変えなければいけないというものではありません。ポイントは、レガシーシステムの中に一番コアになる資産が存在しているというところです。これが、レガシーマイグレーションする際に、最も大事なポイントになるわけです。

 レガシーシステム対策は、新規で開発するのか、追加開発するのか、保守するのかなど、さまざまな考え方があります。現在の運用上で特に問題がなく、レガシーシステムのまま運用を継続した場合、保守における管理リスク、専門管理者が必要であることによる運用コストの増加という問題があります。また、SOA⇒BPM⇒RTEというステップを踏む必要が求められるときが来るかもしれません。その場合、第1歩としてオープン化が必須といえるでしょう。

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 しかし、既存システムをオープン化しようとしたとき、ブラックボックス化しているレガシーシステムの中身をどうすれば可視化できるのか、その内部に存在する資産のどこが再利用できるのか、そしてどこが要らないのかを確実に抽出しなければなりません。このすべての悩みを手作業で行うレガシーマイグレーションもありますが、その場合には工数やハードウェア的な問題、コストなどさまざまな課題があります。弊社では最初のステップを効果的に行うために、「ModernArch(モダンアーク)」というツールを使ってレガシーシステムを分析・可視化することを提案しています。

ModernArchによるシステム近代化の手順

 下の図の左側がレガシーシステムです。その中にあるアプリケーションやデータベース、ハードウェアの情報などは、紙ベースで残っている企業もありますし、残っていない企業もあるでしょう。弊社ではまず、そのすべての情報を把握します。図の中央にあるパーサー(Parser)に情報を掛けると、プログラム情報とデータベース情報に分け、すべてをメタデータ化します。同時にメタデータ化したものをレポジトリに保存します。ここまでの情報分析結果はレポーティングに使えますし、異なる言語へのコンバージョンにも使えます。

システムモダナイゼーションの定義

 分析後、メタデータをBPMに移行していくシステムモダナイゼーションの方案は2つあります。1つ目は、ソースコードをそのまま変換する方法です。例えば、COBOLをCOBOL 85とかCOBOL/2のパターンで変換するタイプです。2つ目は、オープン系に移行させるもので、Javaや.NETに合わせて変換する形になります。

 1つ目の方式では、As-Isのシステムをパーサーの領域に掛けると、「ModernArch」がメタデータを作って、すべてをレポジトリ化します。するとプログラム・グラマーレポジトリの情報と連動しながら、直接コンバージョンが行われます。その結果、JavaやC#など「ModernArch」がサポートしている言語に変換・出力されることになります。これはライン・バイ・ラインの自動変換方式なので、ビジネスロジックをそのまま採用できるところに特徴があります。

 2つ目の方式は、パーシングの結果をそのままオープン系に移行します。分析した結果、ユーザーインターフェイスがあるところは、そのままフォームの方に持っていきます。そして、ビジネスロジックやデータに関係のあるところは、それを分析して、EJB、Info Class、Server Classなどに変換し、コンポーネント化していく形があります。

システム近代化の戦略とコンバージョン

 システムモダナイゼーションの戦略には、5段階があります。最初の段階(下図の一番左)が、分析してさまざまな資産などの情報を算出する「リドキュメント」。2番目がUIにポイントを置き、To-Beを導出する「リフェイス」。3番目がビジネスロジックにポイントを置き、To-Beを作っていく「リプレイス」。4番目が物理的な言語のコンバージョンが行われるポイントになる「リホスティング」。最後が、すべてのフェイズを統合する「リアーキテクト」です。この5段階により、モダナイゼーションのすべてが完了します。

システムモダナイゼーションの戦略

 ModernArchは、これまで紹介してきたパーシング、可視化、コンバージョン、レポートの役割を1つですべてお客さまに提供できるツールです。

 コンバージョンまでの流れを説明していきましょう。まず、As-Isシステムを解析します。内部のアーキテクチャとしては、As-Isシステムが入るとパーサーを通過します。パーサーを通過するときに文法のレポジトリを参照しながらチェッカーを作ります。それらは、すべてメタデータとしてレポジトリに入ります。メタデータを利用して分析し、その結果をWordやExcelファイルととして作成します。ここまでが可視化の段階です。

 レガシーマイグレーションの全体の流れは、データベースとの情報とメタデータの情報などを含めて、さまざまな情報がマイニング作業に入ります。ここでの情報は、データベース情報、画面情報、ビジネスロジックの情報の3つのマイニング情報を意味します。これが終了したら、各レポジトリにメタデータが保存されます。

 この情報をすべて集めて、ModernArchがモダナイゼーション作業を行うことになります。まず、画面情報が終わった後にコンポーネントを設計、作成します。その情報でコンバージョン段階を行い、最後の段階でエラーがあるかなどのテストを行うわけです。その後は顧客と直接システムを検査し、To-Beシステムとしてリリースするという流れです。

 システムモダナイゼーションのサービスは、お客さまが診断・分析、変換、運用などさまざまなパターンで選択できるようになっています。診断サービスでは、基礎診断から診断結果に対する最適なアーキテクチャを導き出すサービスです。分析サービスでは、プログラムの構造分析やビジネスロジックの分析、DB分析などのシステム内部の調査を実施するサービスです。診断サービスと分析サービスを合わせて、トータルの意見としてTo-Beシステムモデリングの在り方を判断することになります。

 その後、変換や運用などのサービスがあります。変換サービスでは、物理的な言語の変換が行われ、その後、総合的なテストを終えて本番までを案内するサービスです。運用サービスは、すべての作業に関して運用ドキュメンテーションを行うサービスです。

 レガシーシステム内部について徹底的な影響分析を行い、その分析結果を新しいシステム──To-Beシステムのモデルとし、最終的にオープン化に至るサービス、それがレガシーモダナイゼーションです。

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筆者プロフィール
生井 俊(いくい しゅん)
1975年生まれ、東京都出身。同志社大学留学、早稲田大学第一文学部卒業。株式会社リコー、都立高校教師を経て、現在、ライターとして活動中。著書に『インターネット・マーケティング・ハンドブック』(同友館、共著)『万有縁力』(プレジデント社、共著)。
■要約■
「経営とITの融合」研究会の第12回会合から、東京大学特任教授の内山氏、J-KIT Systemの李氏のプレゼンテーションの模様をお伝えする。

内山氏は、レガシーシステムを含む情報システムへの投資が止められない理由は、業務プロセスと情報システムが、完全にリンクしているからで、プログラムコードの書き替えに手間が掛かるようになると、ビジネスが思うように変更・改善ができなくなると憂える。

このスパイラルから抜け出すためには、業務プロセスや手順を「知識ベース化」して、システム環境に合ったジェネレータを使ってコードを刷新するという考えが有効だと主張。南米では、ブラジルホンダやブラジルトヨタでは、十数年前にそれを導入していると述べた。

李氏は、マイグレーション・ツール「ModernArch」を使った、レガシーモダナイゼーションの流れを解説した。

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 知識ベースとジェネレータの活用
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