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公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略(18)

債務超過283兆円! 憂うべき赤字国債の深刻度

高田直芳
公認会計士
2011/9/1

国が持っている「打ち出の小槌」は、増税、国債増発、政府紙幣発行の3本立てだ。そのうち今回は、国債について取り上げ、経営分析のノウハウを適用して、その最適残高を模索していきたい。(ダイヤモンド・オンライン記事を転載、初出2009年10月30日)

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 鳩山政権(当時)の誕生によって「JAL問題」や「ダム建設問題」が揉めることは、事前に予想されていた。だが、それとは別に、中小企業などを対象とした「返済猶予制度」が登場したことには、多くの方が驚いたことだろう。

 こうした政策は当然、金融機関の経営を圧迫する。「それなら公的資金を注入すればいい」、というのが亀井金融担当大臣(当時)の発想であったらしい。

 そういえば、いまから9年前の2000年、東京都や大阪府で、銀行に対する外形標準課税(いわゆる銀行税)の強化が行なわれて裁判沙汰にまでなった。それに比べれば今回の制度には公的資金の手当があることから、金融機関にも配慮しているぞ、という理屈なのだろう。

 ただし、その公的資金は、どこから湧いてくるのか。そこが問題である。

 国が持っている「打ち出の小槌」は、(1)増税、(2)国債増発、(3)政府紙幣発行の3本立て。政府紙幣の発行は、先の麻生政権で物議を醸(かも)したが、結局、立ち消えとなった。鳩山政権は、4年間は増税をしないと公約しているのだから、打ち出の小槌の中味は国債増発しかない。

 藤井財務大臣は2009年10月9日に、新規国債発行額を44兆1千億円以下に抑制すると発言していた。ところが、いまでは50兆円を軽く超えるという。国債にも返済猶予制度の恐れが出てくるほどの大乱発である。

 そこで今回のコラムは、国の借金、特に赤字国債について考えてみたい。これに経営分析のノウハウを適用して、その最適残高を模索してみようという、大胆な試みである。

 財務省の役人などが本コラムを見ている可能性はないであろうから、気楽に語ってみよう。

国の貸借対照表には
「内部留保」は存在しない

 国や地方公共団体の財政に、企業の経営分析を当てはめるにあたっては大きな制約がある。それは、国や地方公共団体に「出資」や「儲(もう)け」の構造がないことだ。役人が天下りによって私腹を肥やして「儲ける」のは、別問題である。そのため、国の貸借対照表には「純資産」や「内部留保」という概念が存在しない。

 国の財政を語る前に、純資産や内部留保がどういうものなのかを説明しておこう。今回は、化学業界大手の旭化成の決算データを拝借する。〔図表1〕は2009年3月期の、同社の連結貸借対照表を要約したものだ。

〔図表1〕旭化成の連結貸借対照表(2009年3月期)


  貸借対照表の右下に「純資産の部」がある。内部留保を最も狭く解釈するのであれば、純資産の中にある利益剰余金4183億円が該当する。これに評価・換算差額等47億円を加えることもあるし、会社法では資本剰余金からの配当を認めているため(注)、資本剰余金を含めたものを内部留保とする考えかたもある。

 内部留保をどのような範囲で決めるにしろ、その内容は、「企業が創業以来、貯め込んできた(留保してきた)利益の蓄積額のこと」である。

 それに対し、資本金・自己株式・少数株主持分は、「出資」に該当する部分である。

 旭化成の決算データに、第6回コラム(東芝編)や第10回コラム(メガバンク編)で展開した「最適資本構成タカダ理論」を当てはめると、かなり面白い結果を得られるのだが、今回は残念ながら旭化成がメインではないので割愛させていただく。
(注)拙著『新しい決算書のつくり方』(日本実業出版社)140頁参照。

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