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連載:IFRS対応ITシステムの本質

最初に考えたい総勘定元帳の「松竹梅」

鈴木大仁
アクセンチュア株式会社
2009/7/30

IFRSは企業の会計ルールや業務プロセスなど経営要素全般に影響を及ぼすが、ITシステムでは総勘定元帳が影響を受ける。IFRS対応システムで最初に考えたいのは総勘定元帳の「松竹梅」だ(→記事要約<Page 3 >へ)

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 IFRSは各企業の会計ルールや業務プロセスなどの経営要素全般に影響を及ぼしますが、中でもITシステムは対応工数・プロジェクト期間の面で最も大きな影響を受けます。これから全2回にわたり、IFRSで変わるITシステム、特に影響の範囲が大きい会計システムについて論じます。第1回目は、IFRS対応を検討する上で必要となる情報構造やシステム化の選択肢について説明します。

IFRSで変わるITシステムの機能配置

 IFRS対応はITシステムのデータや機能に多くの影響を与えます。通常のシステム構築プロジェクトで各検討領域別に新業務やシステム機能の設計を進めるのと同様に、IFRS対応も、また領域ごとに個々の検討工程の積み重ねが必須です。以下、システムの主要な検討項目です。

データ面

  • IFRS勘定科目に対応した総勘定元帳や資産マスタの保持
  • 資産取引を含めた各種業務伝票へのセグメント情報の保持など

機能面

  • 収益認識基準への変更に合わせた出荷検収情報の取得
  • 研究開発プロジェクト会計の実施/開発費の資産計上
  • 固定資産簿価/償却計算方法の変更
  • 機軸通貨の適用をはじめとする多通貨外貨換算機能
  • IFRS調整仕訳機能/現行会計基準財務諸表との比較検証機能
  • 英文会計への対応など

 このような個別検討に入る前に、企業はまずはIFRSが求める以下2つの本質を理解し、ITシステムの在り方や範囲を的確に捉え、情報の持ち方など骨組み部分を設計していくことが重要です。

IFRSの本質: 連結に関する基準

 IFRSは連結財務諸表に関する対応が中心ですが、これは帳票類の多くを出力する連結会計システムに閉じた対応だけを意味するわけではありません。連結会計へ情報を提供するのは単体会計であるため、ERPに代表される単体の基幹系業務システムでもIFRS対応の検討が必要となります。連結と単体との会計システムを横断的に考えることは、これまでの日本企業の常識にも変化を与えます。

 具体的には、従来の日本基準を基にした連結会計システムでは、日本基準の連結財務諸表に統一するために、グループ内の関係会社、現地法人が異なる会計基準で報告してくる決算数値を修正仕訳や振替などで調整してきました。このような会計基準間の矛盾を解消する機能の充実度が、優れた連結会計システムの証でした。

 しかし、単体会計の世界も、業務の発生時点からIFRSで統一され、決算数値が一切の組替えや修正仕訳を必要とされずに連結システムにダイレクトに送られたらどうでしょうか。連結システムに求められる機能要件は格段とシンプルになり、グループ内の関係会社、現地法人からの情報収集もスピーディーに実行できるようになります。単体会計システムへいかにダイレクトにデータを取りに行けるかなどの機能の優劣が、連結会計システムの新たな評価基準となるでしょう。

 IFRSはこのようにグループ全体の会計システム間の機能配置や価値基準にまで影響を及ぼします。本質的な思想として、IFRSは本社や関係会社、現地法人といった「法人格単位の会計ルール/経営管理」から、「グループ全体としての会計ルール/経営管理」へと経営の比重を移すべきことを示唆していると捉えるべきでしょう。

IFRSの本質: BS重視で将来価値と現在価値の評価、予測を求める

 2つ目は、BS(バランスシート、IFRSでは財政状態計算書)重視の考え方です。IFRSでは、PL(包括利益計算書)は将来BSと現在BSの連結環ととなり、主はBSです。つまりIFRSはグループ全体で保有している事業の将来価値を予測して、その予測に沿った経営者の計画の下でグループ企業全体の運営をすべきことを示唆しています。連結実績値のみならず、予算編成や業績予測など、計画・予算システムについても、グループ共通のルールづくりや、共通システムの導入が必要になるものと考えます。

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