.NETのプッシュ役を手に入れたMicrosoft
2000/12/23
(12/21/00, 8:22 p.m. ET) By Barbara Darrow, TechWeb
News
Microsoftは、110億ドルでGreat Plains Softwareを買収する計画を明らかにしている。
Great Plains Softwareは中小規模の企業向けに人事や会計、財務などのビジネスアプリケーションを開発するベンダー。この買収が成立すれば“単なる話題作り”と評判がいまひとつだった.NETにとって大きな一歩となりそうだ。
パートナーさえ首をかしげた.NET戦略
これまでMicrosoftは、カスタマーやパートナー各社に対し.NET戦略の売り込みに精を出してきた。同社の主張は、Webで入手できるサービスが何らかの形で機能に変化するというものだ。
複雑怪奇で専門用語を連ねてばかり、さらには実際性に乏しかった.NETの企画に、アナリストやユーザーは戸惑った。“.NETは、ビジョンに毛が生えた程度でいまだに具体性を帯びない”と調査会社Summit StrategiesのDwight Davis氏は語る。パートナー各社ですら懐疑心を隠さない。.NETは説明不可解なために売れないとの声がもれていた。Microsoftはやっと行動に移り始めた。
“.NETを離陸させるためには、ビジネス的な価値をもたせることが必要”と財務・会計アプリケーションを販売するManaged Opsの副社長Tom Brennan氏は言う。“アーキテクチャから見て販売は厳しい。ビジネス・アプリケーションを持たせてキックオフする必要がある”(Brennan氏)。同社はMicrosoft、Great Plainsの両社のパートナーで、両社の融合のニュースを受け、同社の株価は上がった。
MicrosoftがGreat Plainsと技術面で評価してアプローチしたのは、今回が初めてではない。6年前にも、MicrosoftはGreat Plainsにコンタクトをとり、Intuitのエンドユーザー向け会計パッケージ「Quick Books」と競合するMicrosoft Profitというソフトウェアの開発を打診したことがある。MicrosoftはGreat PlainsがProfitを開発する際に当時、誕生しようとしていたVisual Basicを使うように主張した。
Great Plainsの内部関係者によれば、その結果誕生するアプリケーションが安定性に欠け、パフォーマンスのグレードが下がると感じたという。同製品の売れ行き不振で、MicrosoftはGreat Plainsにコードを突き返した。
MicrosoftはVisual Basicの価値を高めるようなレファアレンスを必要としていた、とニューレター配信業社のSoftLetterの編集者Jeff Tarter氏は語る。Tarter氏によれば、今回の話し合いは意味をなすという。
状況の変化に対応を図るMicrosoft
Microsoftは、アプリケーションのホスティングする機能をソフトウェアに付け加え、ソフトウェアの流通を変えようとしている。これまでの流通形態であるハコ入りCD-ROMと混在させようというものだ。“サービスを売るには人手が必要”とTarter氏。“サービスとはひとりでには売れないからね”
そしてGreat Plainsはその空間を埋めることができる。
Windowsベースの会計ソフトの開発を行うFargo N.D.は、アプリケーションと黎明期のアプリケーション・ホスティング市場に精通している。Great Plainsは40社ものASP業者が契約しているホスティング・モデルの可能性を検討していた。
買収の話し合いは、ISV(独立系サービスベンダー)にいらいらしているMicrosoftの絶妙なバランスを覆すことになるだろう。
会計ソフトではGreat Plainsと競合関係であるSage SoftwareとPearchTreeのような企業では、Great PlainsがMicrosoftとパートナーを組んだことに、衝撃を受けたようだ。
競合とパートナーが入り乱れるソフトウェア業界
“この変化は、Microsoftが他社を押しのけてプレイしてきた土俵のルールを変える”と調査会社SummitのDavis氏は言う。“かつてのルールを放りなげた。業界はこの瞬間を予想していた”
21日の会議で、Microsoftの幹部は、Microsoftは他のパートナーに対し公正を保つことを伝えた。“ここ数年、プラットフォームビジネスと同時に、プラットフォーム上のビジネスも行ってきた”とMicrosoft Productivity and Business service groupのJeff Raikes氏は語る。“他社をわれわれのプラットフォーム上でサポートすることに力を入れてきた。たとえアプリケーション分野では競合であっても”
データベース分野では、Lotus DevelopmentのNotes/DominoはMicrosoft Exchangeと競合する。だが、Windows NT/2000上でこれらのアプリケーションが動くと保証している。Oracleのケースも同じだ。OracleとMicrosoftはデータベースで競合関係にあるが、Windows NT/2000バージョンも提供している。
だが、Great Plainsを傘下に収めたMicrosoftは、かつてない競争にさらされることになる。当然、ライバルも増える。ライバル各社は、Great Plainsより規模は小さいが、今回の一件に神経質になっている。
Great Plainsは、Microsoftが巨額を投資して小規模企業向けに提供しているサービス、bCentralを助ける。このサービスは、月に30ドル〜50ドルを支払いユーザーが自社のWebサイトと電子メールのサービスを受けられるもの。
“現在、bCentralにはビジネスアプリケーションはない。だが、機能の付け加えは可能だ”とMicrosoftのEnterprise and Partner Groupの副社長Charles Stevensは語っている。同社はそのつもりはなくても、このような動きは再度Intuitとバッティングを引き起こすと見る人もいる。Intuitは家庭やSOHO向けの財務管理市場ではリーダーで、同社のライバルで買収しようとして話が流れた経緯がある。
さらに、Great Plainsのパートナー社はOracleが会計製品ではライバルになると見ている。
それを予言するかのように、Microsoftの幹部は、今回の買収はOracleに対抗する意図はないとコメントしている。Oracleはエンタープライズ分野ではパワーを握っている。“MicrosoftはOracleがこの件に関して要因となっているということを否定する。だが、Oracleは、他のエンタープライズ向けの企業と同様、ASPというチャネルを経由して市場に参入しようとしている”とDavis氏は言った。
同時に、数年間にわたりエンタープライズでの信用性を高めようと取り組んでいるMicrosoftもまた、SOHOはじめ中規模企業市場に参入を図ってきた。基本的にはMicrosoftはビジネスのあらゆる層に参加したといえる。
あらゆる層で優先順位が高いということはどういうことか、という問いに対し、Stevens氏は“本当の答えは、われわれは総力戦に出るということだ。Sun、Oracleに追随しているが、それとは違うゲームだ”
買収の話し合いは来春が終結する予定だ。
Great PlainsはMicrosoftの1部門となり、現在のCEOであるDoug Burgum氏がその部門のシニア・バイスプレジデントになる。同部門はBusiness Application Division下に位置付けられる模様。この構造は、同社が1999年にビジネス一覧のソフトウェア会社Visioを150億ドルで買収した時と似た構図となる。
[英文記事]
Microsoft
Hopes Great Plains Can Validate .Net
[関連リンク]
Microsoftの発表記事
Great
Plains Software
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