社内システムとWebのインフラ管理を統合する新ツール

2001/5/12
By TIM WILSON, May 4, 2001, Internetweek

 今月に入り、フロントとバックエンドのシステムパフォーマンスを一括表示しながらeビジネスや従来のITシステムのデータを統合する管理ツールがベンダー各社から相次いで発表された。

 その一社にKeynote Systemsがある。同社で製品管理ディレクターを務めるMatt Parks氏は、「基幹業務管理とは、ファイアウォールの中でシステムを管理するだけではない」と語る。「これからの真のパフォーマンス管理とは、エンドユーザーからサーバやアプリケーションまで、データを提供し、レスポンスタイムに影響するすべてのコンポーネントを理解することを意味する」(同氏)。

 同社は、Webサイトのパフォーマンスを測定するKeynote Perspectiveサービスを提供している。また、コンピュータ・アソシエイツやヒューレット・パッカード(HP)など、社内にフォーカスした基幹業務管理システムと統合させての提供も行っている。

 同社によれば、ITスタッフは、KeynoteのWebパフォーマンスデータと社内ネットワークやシステムパフォーマンスデータを組み合わせれば、WebアプリケーションとERPデータベースなどのバックエンドシステムの両方にまたがる問題のトラブルシューティングを改善できるようになるという。

 Keynoteの戦略から、e-ビジネスのインフラをITのインフラとは別々に構築した企業が、両方を別々に管理するのはコストがかかり非効率的であることを認識し始めたというトレンドが浮き彫りになる。

 貨物輸送会社のYellowのIT部門であるYellow Technologiesのシステム開発ディレクター、Robert Hitt氏は、「すべてのアラートを一カ所に集めることがわれわれのゴールだ。どちら側で発生した問題でも素早くトラブルシューティングができるよう、データを相互に関係づけられるようにしたい」と語っている。

試行錯誤の時代から実稼働の時代へ

 McConnell Consulting社長のJohn McConnell氏はこのトレンドを次のように解釈している。「e-ビジネスが出始めたころは、e-ビジネス担当者が実際に運用中のビジネスシステムに影響を与えることなく試行錯誤できるように別々にインフラを構築していた。eビジネスが実稼働に入り、e-ビジネスとバックエンドシステムが連動するようになった。さらには経済の状況も厳しくなった現在、もはや2つのインフラを別々に管理することは合理的とは言えない」(McConnell氏)

 Keynoteの関係者によれば、同社のサービスは、基幹業務管理システムのユーザーが社内アプリケーションのパフォーマンスデータを収集する。収集したデータとWebパフォーマンスデータを関連づけてボトルネックを正確に指摘し、ユーザーのサービスレベルのモニタリングが実現するという。全データを一緒に表示できるため、ITスタッフは問題がファイアウォールの中で発生しているのか、外で発生しているのかを短時間で判断できるようになる。

 McConnell氏は、「Webホスティングプロバイダーを利用している企業の場合、e-ビジネスのインフラの大半がファイアウォールの外にある。こういった企業にとっては、Keynoteのアプローチが有効だ」と語る。Keynoteでは、Webのパフォーマンス問題の約75%はファイアウォールの外で発生していると推定している。

責任追及の減少

 Keynote同様、ベンチャー企業のEntuityも、IT管理組織間のギャップを埋める技術を発表した。Entuityの「Eye of the Storm 2.6」アプリケーションは、Webサーバをはじめとした各種サーバ、アプリケーション、そしてネットワークから管理データ収集し、関連づけてくれる。

 Entuityの共同創業者で社長のJeremy Tracey氏は、「多くの大企業が抱える問題は、Web中心のシステムとレガシーシステムの両方のネットワークのモニタリング、アプリケーションのモニタリング、そしてサーバのモニタリングを、それぞれ別のグループが担当していることだ。これらの担当グループの間でお互いに責任をなすりつけ合うことが頻繁に起こっているのが現状だ」と語る。

 Eye of the Stormの新バージョンは、ネットワークデバイス、接続されたサーバ、そしてこれがサポートするアプリケーションを検知することができる。Entuityによると、集められたデータにより、ネットワーキング機器間、サーバ間、そしてアプリケーション間の関係が明らかになり、IT運営グループがレガシーシステムとWebシステムの両方にまたがる問題をより短時間で突きとめられるのに役に立つという。

 まだ、最終的に下流のデバイスから発生する不可解なアラートではなく、ネットワーク問題の発生源だけを表示するよう、アラートやアラームのフィルタリングも行う。

 Tracey氏の説明によると、最新バージョンでは、IP接続されたサーバやアプリケーションの“検知”を行うという。IPポートを読み、サービスを提供するシステムおよびアプリケーションとこれら相互の接続方法を見つけ出す機能があるからだ。同ソフトウェアは、社内開発もしくは市販のアプリケーションデータの検知はできないが、Eye of the Stormに新たな情報を入力すれば、これらのアプリケーションに関する情報を収集するようシステムを設定できるという。

 「従来の基幹業務管理システムでは、社内のネットワークコンポーネントを“見る”ことしかできず、Webシステムのパフォーマンスデータの収集はできなかった」とTracey氏。Eye of the Stormは既存のシステムに取って代わる可能性があると同氏は見る。

 「Eye of the Stormを用いれば、バックエンドシステムが1つダウンしたときに発生する影響がユーザーにわかるよう、両方のシステムのデータを結合させることができるからだ」(Tracey氏)

 McConnell氏は、Entuityの考えは正しいが、ホスティングプロバイダやサプライチェーンパートナーなどの第三者が関与する複雑な企業システム環境で、Entuityの製品がどのようなパフォーマンスを見せるのかについては懐疑的な見方をしている。

 「ベンダー各社はこのようなタイプの統合を何年も前から約束してきた。彼らがいまもこれらを投入し続けているということは、裏を返せば、まだどこも適切な機能を実現していないということだ」(McConnell氏)

 専門家によると、Webサーバや社外にフォーカスしたアプリケーション同様、基幹業務管理プラットフォームの多くもファイアウォールがネックになるという。パフォーマンスを適切に出しながら、同時にエンドユーザーの必要に応じてデータのブロックを解除するようファイアウォールを管理することは難しいからだ。

 BMC Softwareでは、「BMC Patrol for Cisco Secure PIX Firewall」と「Patrol for Check Point Firewall-1 Version 1.2」の2つの新製品でこの問題に対処する。

 同社プロダクトマネジャー David Samia氏は、「社内のユーザーに向かう一部のトラフィックは、適切に(ファイアウォールの)ポリシーがセットされていないためにファイアウォールにブロックされてしまう可能性がある。ファイアウォールが用意されているかどうかを教えてくれるツールは数多くあるが、適切なトラフィックを受け入れているのか、拒否しているのかを教えてくれるツールはない」と語る。

 社内のポリシーが特定のデータ(ビジネスに欠かせない在庫や注文情報)の社外送信を禁じるよう設定されたファイアウォールが、サプライチェーンのパートナー同士のコミュニケーションを難しくしている可能性がある。専門家によると、エクストラネットやプライベートオンライン取引所の台頭により、多くのファイアウォール管理者はこれまでのルールの修正を余儀なくされるだろうという。

サービス管理ツール

 BMCは、先に発表されたフロントエンドとバックエンドの両方のシステムにまたがるサービスレベルを管理するツールのデモも行った。

 BMCのサービスレベル管理ディレクター Dick Manasseri氏は、「われわれは、エンドユーザーがパフォーマンスの低下を感じているとき、インフラのどの部分に問題が発生しているのかがIT担当者にわかるようIT管理データを関連づけたい。これが実現すれば、ファイアウォールの外側でも内側でも、IT担当者が問題が生じたときにその発生源を特定するのに役立つ」と語る。

 BMC、Entuity、そしてKeynoteの新ツールは、ユーザーが自分の管理データをより総合的に表示するのを支援する。しかし、これらが統合管理を妨げる人的要因を解決してくれないことはMcConnell氏も認めている。

 「e-ビジネスの担当者とIT管理の担当者のコミュニケーションを増やすことがカギだ。彼らの多くは依然として縄張り意識が強く、自分たちの縄張りに他人を入れさせたがらないからだ」(McConnell氏)

[英文記事]
No More Boundaries

[関連リンク]
Keynote Systems
Entuity
BMC Software

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