Itanium正式リリースで、各社が関連製品を発表

2001/5/31

 PC/PCサーバの世界にも64ビット時代の波が押し寄せつつある。5月30日、インテルのIA-64アーキテクチャの先兵となる「Itanium」の正式リリースを受け、業界各社から関連製品のリリースがいっせいに行われた。

インテルが発表した64ビットCPU「Itanium」

■インテルの64ビットCPU「Itanium」

 Itanium(コード名「Merced」)は、インテル初の64ビットプロセッサだ。これまでリリースしてきたPentiumシリーズなどの32ビットプロセッサ(IA-32)とは異なり、IA-64として新たな製品ラインに位置付けられている(「IA」はインテル・アーキテクチャの意)。当面、Itaniumがターゲットとするのは、ハイエンド・サーバ(バックエンド・サーバ)やハイエンド・ワークステーションの分野であり、これまでUNIXマシンやメインフレームが得意としてきたところだ。同社にとって、Itaniumでこれらの牙城を崩したい考えだろう。今回発表されたItaniumは、733MHzと800MHz版の2製品。半年におよぶパイロットリリースを終え、いよいよ市場への投入が開始された。

 Itaniumの特徴の1つは、EPICと呼ばれる命令の並列処理アーキテクチャによる高速動作が可能な点。また、同社の32ビットプロセッサに比べ、浮動小数点演算の高速化やメモリ空間の拡大による大量のデータ処理が可能になっており、主に科学技術計算やバックエンドのデータベース、処理の集中する基幹サーバなどで威力を発揮する。

■HPはItanium対応hp-uxとワークステーションを同時リリース

 当初からItaniumのプロジェクトの共同開発を続けてきたヒューレット・パッカード(HP)からも、Itanium対応hp-uxと、Itanium搭載ワークステーションが発表された。

ヒューレット・パッカードのItanium搭載の「hp workstation i2000」

 今回発表されたのは、「hp workstation i2000」。Itanium-733MHz(×1)またはItanium-800MHzを搭載したワークステーションだ。「Microsoft Windows XP 64ビット版(ベータ版)」と「RedHat Linux Rel.7.1(ベータ版)」のほか、初のItanium対応商用OSとなる「hp-ux11i バージョン1.5」が添付される。

 HPでは、Itaniumの共同開発時に、同社のRISCチップである「PA-RISC」のアーキテクチャを導入しており、コンパイラ部分など、他社に比べての技術的アドバンテージも高い。今回発表されたItanium版hp-ux11iでは、PA-RISC版hp-ux11iで動作していたアプリケーションのバイナリ/データ互換も実現しているという。同社では、これらによりItaniumサーバへの移行が比較的容易に行えるようになるとしている。

■マイクロソフトは64ビット版Whistlerの早期導入プログラム

 ハイエンド市場でのシェア拡大を目指すマイクロソフトからも、開発中の64ビット版Windows 2002(コード名:Whistler)に関する早期導入プログラムの発表があった。

 Windows 2000 Serverの次期バージョンとなる、Windows 2002 Serverの64ビット対応製品のベータ版を使用して業務システムの構築をめざす企業ユーザーに対し、同社とインテルによるコンサルティングと技術サービスを提供していくという。対象となるのは、基幹システムの構築/評価のノウハウをもつ企業の集まったECA協議会(Enterprise Computing Association)のメンバー企業。ユーザー自身による評価と構築方法の分析を行うことが目的で、同プログラムによる成果はホワイトペーパーとして公開される予定だという。


 多数の会社からItaniumを支持するリリースが発表されたが、まだまだ順風満帆とはいえない状態かもしれない。性能面から見ても、64ビットの性能を生かせるアプリケーションの登場がまだまだこれからなのと、単純には比較できないが、IA-32系の1GHzを超えるクロック周波数をたたき出すプロセッサ群を見てしまうと、733MHz/800MHzというクロックは、どうしても見劣りがしてしまう。また、これまでUNIXワークステーションを開発/販売してきたメーカーにとって、まだまだ実績の少ないItaniumを既存製品とどう差別化していくか、悩ましいところだろう。

 だが、Itaniumが真価を発揮するのは、実績を積み、量産効果で大幅にコストパフォーマンスが上昇したときだ。おそらく、McKinley(コード名)と呼ばれるItaniumの次世代バージョンが出るころには、市場における大きな勢力となっている可能性が高い。

(編集局 鈴木淳也)

[関連リンク]
インテルの発表資料
ヒューレット・パッカードの発表資料(Itanium対応hp-ux)
ヒューレット・パッカードの発表資料(Itanium搭載ワークステーション)
マイクロソフトの発表資料

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