あと1カ月で歴史に幕を下ろすインフォミックス

2001/6/9

 4月24日に米IBMは、インフォミックス・ソフトウェア(以下インフォミックス)のデータベース事業を買収すると発表した。この発表に基づき、来月には日本も含め、全世界のインフォミックスのデータベース製品、テクノロジ、従業員、顧客がIBMに移管される見通しだ。インフォミックスは1980年から続いた歴史に、事実上の幕を下ろす。

ソフトウェア事業部長の平井氏「これからはインフォミックス製品も届けられる」

 日本IBMが6月8日に都内で開催したパートナー向けのカンファレンス「DB2 Partners Day 2001」で、同社は初めて国内向けにインフォミックス買収の具体的な内容を発表した。ソフトウェア事業部部長の平井康文氏は集まったパートナーに向かい「インフォミックスの買収で、製品群のポートフォリオが広がる」と、買収によるシナジー効果をアピールした。

 米IBMのバイスプレジデント・ソフトウェアグループ・アジアパシフィックのアンドリュー・ダットン(Andrew Dutton)氏は、「DB2とInformixのシェアを合わせると、分散データベースの分野ではアジアパシフィックでナンバーワンになる」とし、「インフォミックスの名前はこれからIBMブランドに変わるが、中身はインフォミックスのままだ。継続していくことを約束する。(インフォミックスの顧客に)DB2を無理矢理勧めるようなことはない」と、製品の継続を強調した。

 アンドリュー氏によると、最終的な両社の契約への調印は、6月8日の夜に開かれる株主総会の後だという。

「Informix製品は継続する」とDutton氏

 IBMは過去にロータスやチボリといった独立系のソフトウェエアベンダを買収してきた歴史を持つが、今回のインフォミックス買収はそうした例とは異なる。ロータスやチボリは会社として存続しているが、インフォミックスは会社としては事実上なくなるからだ。また、ロータスやチボリの製品に直接競合する製品をIBMは持っていなかったが、DB2と、インフォミックスの製品であるInformixとRed Brick Warehouseは直接競合する製品だ。

 こうしたことから考えると、IBMが徐々にDB2と、InformixおよびRed Brick Warehouseのラインナップを統合していく(もしくは整理していく)ことは十分あり得る話だ。IBMは、「Informixポートフォリオ 今後の方向性」という文書の中で、「Informix製品からキーとなる技術をDB2に統合」すると明言しており、製品の統合も示唆しているように思える。 しかし、大規模なシステムの運用に用いられるデータベースの場合、それには数年といった長い時間がかかるだろう。

 一方、オラクルのような、インフォミックスの競合ベンダにとっては、今回の買収でライバルが1つ減ったと楽観視できるものではない。それよりも、IBMの顧客が増え、テクノロジが強力になった要素の方が重要だ。IBMはこの日も、オラクルと比べて圧倒的な低価格と、TPCベンチマークで評価された高いパフォーマンスを示し、オラクルに強い対抗心を表した。オラクルへのプレッシャーは一層高まるだろう。

インフォミックス株式会社取締役副社長の白石美成氏は、IBMのパートナーに向かい、自社の歴史と製品を紹介した

 インフォミックスは、かつてはリレーショナル・データベース分野のトップベンダとして成功し、技術的にも高い評価を受けた会社だった。しかし1990年代の後半からは、トップの座をオラクルに奪われ、データベースエンジンの会社から、インターネットに対応したソリューションベンダーへの転身を模索していた。こうした状況での買収で、恐らくもっとも得をしたのはインフォミックスの顧客だろう。自社の重要な業務を支えている製品のベンダがなくなり、バージョンアップやサポートが打ちきられることは、顧客にとって考えたくもないシナリオだ。

 Informixが世界最大のコンピュータ会社の製品となることで、少なくともインフォミックスの顧客はこうした心配から解放される。そして、中期的にIBMがInformixからDB2へのスムースな移行プランを提供できたとしたら、そのプランに乗る顧客も多いと予想される。

 IBMはいかにDB2とInformixのラインを統合し、どのように顧客にそれを受け入れてもらうか。今回の買収の正否はこの点にかかっているよう見えるが、その答えがでるのは数年先だ。

(編集局 新野淳一)

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