[Interview]
JRunとNeoで再スタートを切るAllaire創業者

2001/6/14

 今年1月、「JRun」や「ColdFusion」の米Allaireは米マクロメディアに合併されることを明らかにした。買収したマクロメディアは「Dreamweaver」や「ShockwavePlayer」などのビジュアル関連製品のベンダーで、この2社の組み合わせに驚いたユーザーも多かった。

 そしてこの春、Allaireの代表2製品の新バージョンが発表された。「JRun 3.1」と「ColdFusion 5.0」だ。マクロメディア・ブランドとしては初めてのリリースとなる。これまでAllaireの製品を日本国内で取り扱ってきたアイ・ティ・フロンティアが開催したイベント「ネットフロンティア2001」のために来日した、ColdFusion開発者で旧Allaire創業者のJeremy Allaire氏(現米マクロメディア CTO)に新製品、新体制での戦略などについて話を聞いた。

ビギナーからエキスパートまでカバーする製品群

――マクロメディアとの統合理由は? 
「マクロメディアの持つデザインでの優位性とAllaireの開発分野での優位性を統合することにより相乗効果を図る。2社の合併により製品の幅が広がった。プログラミングからグラフィックスのデザインまで、Webアプリケーションのライフサイクルに合わせ、エンド・ツー・エンド・プラットフォームを提供できる」

Allaire氏は弟のJ.J. Allaire氏とAllaireを設立した。Allaireは「BUSINESSWEEK」誌で情報技術社Top100に選ばれたこともある

 世界に200万人のユーザーを抱える新生マクロメディアの提供する製品は、Webアプリケーションの4段階のデザインサイクルに合わせた、デザイン、開発、配信、表示の4分野に分けられる。デザインでは「Dreamweaver」「Fireworks」「Flash」、開発では「Dreamweaver UltraDev」「Coldfusion/JRun studio」、配信では「ColdFusion Server」「JRun Server」、表示では「Flash Player」「Shockwave Player」と、合計14製品がそろった。合併によるメリットは、この守備範囲の広さを製品に反映できることという。  

 「例えば、Flashをアプリケーション・サーバと組み合わせてユーザーに新しい提案ができる。HTMLでは表現に限界がある。Flashはユーザーインターフェイスとして優れているし、軽量で、プラットフォームやブラウザを選ばないというメリットもある」

 現在、同社ではFlashとWebアプリケーションの連携を提案しており、CFML用のFlashコンポーネント開発ツールキット無償提供も開始したという。

バージョンアップした主力製品

――ColdFusionの最新版について
「ColdFusion 5.0は2年振りのメジャーリリースとなる。顧客からの要望を盛り込み、生産性の向上、管理の容易さ、パフォーマンスの向上の3点の特徴を持たせた」

 生産性の向上については、ユーザー定義機能、複数のクエリーを統合するクエリーによるデータ統合、検索機能としてVerityの検索エンジンの搭載がある。

 構築するシステムが大規模化するにつれ、管理という課題は重要度を増す。同社では、ファイルやデータ・ソースといった全アプリケーションをパッケージ化してCARファイルとして提供し、運用性を高める。その他、監視、分析といった機能も備えた。

 パフォーマンスに関しては、サーバ・アーキテクチャを大きく改善し、これまでの3倍の高速化を実現した。また、データベース間のやりとりについても、データベースドライバ・アーキテクチャを一新した。

 また、マクロメディアの「Generator」を搭載、データのグラフィックス表示やチャート表示が可能となるなど、統合のメリットも反映されている。

JRunのロゴも一新した

――「JRun 3.1」について
「JRunは、ダウンロード数、販売本数から見ると最も使用されているJ2EE準拠アプリケーション・サーバだ。また、他社に先駆けてJSPなどの先端機能を取り入れてきた実績もある。これまで、先進性、低価格、使いやすさで他社製品との差別化を図ってきたが、新バージョンでもその特徴は変わらない」

 JRun 3.1はJ2EE1.2に完全準拠し、EJBサポートを強化した。アプリケーションの動的配布・更新が行えるほか、IA64にも対応済みだ。

「Neo」で新カテゴリを創出

――今後のサーバー戦略は?
「JRunをベースに進めていく。ColdFusionの次世代版とも言える「Neo(コードネーム)」の開発に着手したところだ。また、Webサービスという点では2002年にはマイクロソフトの.NET関連の技術が重要になってくると考える。.NETとの連携、相互運用性も強化する」

 「Neo」は同社の次世代のプラットフォーム製品と位置付けられる重要なプロジェクトだという。「Neoは全く新しいカテゴリの製品。100%J2EE上で開発され、BEAの「WebLogic」などあらゆるJ2EEサーバ上で動くものとなる」。

 同社はNeoで、IBMやBEAといったハイエンドのアプリケーション・サーバを提供するベンダーとのアライアンスを視野に入れている。「J2EEがコモディティ化(一般化)してきた現在、アプリケーション・サーバ・ベンダーにとって重要になるのは付加価値の提供。Neoを自社のアプリケーション・サーバに組み込めば、CFML、Flashとの統合といった付加価値を付けることができる」。NeoはJavaで書かれているが、同氏がこの日実演したデモでは、C++のColdFusionより早く走っていた。

 Neoはマクロメディアの将来を左右する製品となりそうだ。非Javaプログラマーでも利用できるマス・マーケットを対象に、Flashと統合し、プログラミングとデザインが融合した開発環境の実現を目指す。Neoの具体的な製品化についてはまだ未定だが、統合による効果を示すことができるかどうか、大いに期待したい。

(宮下知起、編集局 末岡洋子)

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