マイクロソフトに対する判決がライバルに与える影響

2001/7/3
By Mary Mosquera, InternetWeek Jun 29, 2001(1:55 PM)

 マイクロソフトが分割を回避したことを大々的に報じる大見出しが出回る一方で、高等裁判所はこの巨大ソフトウェア企業が独占企業であり、強い圧力をかける戦略によりライバルやカスタマーを不利な立場に追いやったとの判決を支持した。独立研究機関、Precursor Groupのインターネットアナリスト Bill Whyman氏は、「これで同社には前科がついた」と語り、少なくともある程度の制限措置が必要になるとした。

 業界アナリストによると、マイクロソフトに課される制限措置で、ほかのライバル各社が多少のメリットしか享受しない中、特にメリットが大きいのがマイクロソフトの最大のライバル、AOL Time Warnerだという。AOLは統合機能を大幅に増やす作戦を進めている。

 現時点で想定される裁判の行方は、マイクロソフトが司法省のどちらかが最高裁判所に上訴する、地方裁判所で裁判を継続する、もしくは両者が和解する、の3つの可能性があるが、Whyman氏によると、どの流れになろうとマイクロソフトは行動に制約を受けることになるという。

 6月28日の判決では、マイクロソフトと米司法省および各州の両方がある程度のポイントを獲得した。コロンビア特別区巡回高等裁判所は28日、会社分割の是正措置と、OS市場における独占的立場をブラウザ市場にまで拡大しようと試みたマイクロソフトの違反行為を破棄した。しかし、マイクロソフトは独占企業であり、コンピュータメーカー各社に対するライセンス供与の制限といった不法な商慣習を用いてその独占的立場を維持したという政府や、ジャクソン(Thomas Penfield Jackson)米地方裁判所判事の主張は支持した。

 同裁判所の7人の判事は、より適切な是正措置を検討し、マイクロソフトが競争を排除するためにWindowsにWebブラウザ(Internet Explorer)を組み込んだとの抱き合わせの申し立てを再考するよう、この裁判を別の地方裁判所に差し戻した。司法省の上級幹部によると、裁判所は、“統合によって得られる”とマイクロソフトが主張する競争を促すメリットが、政府の主張する反競争的効果を上回るかどうかを判断することになるという。

 先のPrecursor Groupのインターネットアナリスト、Bill Whyman氏は、「分割は回避したものの、マイクロソフトにとっては、この点がこの裁判で最も重大なポイントになる」と語る。

 しかし同氏は、一度事態が白紙に戻れば今後は悪材料が増えてくるだろうと見る。「要するに、それが裁判所の命令する是正措置であれ、和解交渉であれ、.NETを複雑にする行動制限から同社は逃れられなくなる」(Whyman氏)

 将来的には、マイクロソフト裁判ではAOL Time Warnerが勝者になる、と同氏はいう。「AOLはAOLサービスに音楽やゲームからストレージまで、あらゆるアプリケーションをバンドルできるようになる。これらはみな、マイクロソフトがアプリケーションをバンドルしたのと全く同じでデスクトップに急速に浸透し始めたばかりだ。ここでの違いは、マイクロソフトは行動制限を受け、AOLは受けないということだ」(Whyman氏)

 同氏によると、米サン・マイクロシステムズ、米シスコシステムズ、および米オラクルといったソフトウェアプラットフォームを保有するほかのベンダもメリットを享受するだろうという。

 だが、Guernsey Researchの会長兼アナリスト Chris Le Tocq氏は、マイクロソフトには時間という味方があるという。つまり、訴訟が最後までもつれた場合、行動に関する是正措置が課されるまでに1〜2年かかる可能性があり、そのころの技術市場がどうなっているのかは、だれにもわからないというのだ。

 ただし、同氏は、「裁判が開始された2年前からマイクロソフトの行動に大きな変化はあまり見られない」と語り、今後も同社から行動の変化は望めないという。

 サン、オラクル、RealNetworks、そしてLinuxデベロッパーのRed Hatといったライバル各社は、マイクロソフトが独占企業であるとの地方裁判所の判決を高等裁判所が支持したことである程度は元気づけられる。Le Tocq氏によると、この認定によってマイクロソフトは攻撃的な態度を弱めるべきであるという点に少なくとも注意するようになるはずだという。「独占的な立場を利用しようとすると独占行使と疑われるからだ」(Le Tocq氏)

 マイクロソフトは、自社の.NETサービス戦略が裁判所の判断の影響を受けるかどうかの評価をはじめるだろう。「もしマイクロソフトが.NETアーキテクチャはWindowsプラットフォームの独占と同じと見なされるかもしれないと感じれば、同社は.NETを進める作業に注意するようになる。.NETで何ができるかできないかは、同社がどれだけ危険にさらされていると感じるかによる」(Le Tocq氏)

 Le Tocq氏によると、10月25日にリリース予定のマイクロソフトの次期OS、Windows XPにAOLが搭載されないという事実と、同OSがユーザーをほとんどMSNサービスだけに連れて行くことはリスクになるという。「マイクロソフトは綿密な調査を受けたくないのだ」(Le Tocq氏)

 同氏によると、デスクトップアプリケーションの成長が全く見られないことから、Webサービスと、Webサービスに対してお金を支払う用意のあるユーザーを獲得していることを示すことは、マイクロソフトにとって重要なことだという。

 米国消費者連盟(CFA)のリサーチディレクター、Mark Cooper氏によると、新たにスタートする裁判では新たな証拠の提出が許されるため、マイクロソフトのXPと.NETの両構想が細かい詮索を受けることは確実だという。

 「製品を新たなパッケージにまとめて普及させることの技術上の必要性と効率性を示すか、もしくは多くの重要なコンポーネントを削除できないことを示すことは、マイクロソフトにとって非常に困難なことになる」(Cooper氏)

 Cooper氏によると、裁判所が各種機能性を寄せ集めるマイクロソフトのような企業に対し疑いを抱いているという。効率化のためにはシンプルな特定の技術コンポーネントを統合するだけで済むからだ。同氏は、1つの製品にする代わりに異なる機能を持つ異なるパッケージを異なる価格で販売すべきなのだと述べている。

[英文記事]
Follow-Up: How Does The Microsoft Ruling Impact Competitors?

[関連リンク]
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