[Interview]
インテルの技術は、携帯アプリの発展を促進するか?

2001/7/20

 NTTドコモの「iモード」の成功に見られるように、今日の携帯電話やPDAによるデータ通信の盛り上がりは、新たなビジネスの可能性を予感させる。だが、年々複雑化する機能の数々と製品サイクルの短期化のおかげで、端末やアプリケーションを開発するメーカーにとっては、大きなプレッシャーがかかりつつあるのも事実だ。

 その中で、PC/サーバ向けプロセッサで実績をもつインテルが「インテル パーソナル・インターネット・クライアント・アーキテクチャ(インテルPCA)」というワイヤレス通信に対応した携帯端末向けのアーキテクチャを発表し、関連各社の注目を集めつつある。PCAは、携帯端末の構成要素を「データ処理」「メモリ」「通信」の3つのブロックに分け、それぞれに独立した開発/拡張が行えるものだ。開発者にとっては、開発期間の短縮や、プラットフォームをまたがった横断的な開発、さらには高級言語を使用した効率的なプログラミングが可能となる。

 今回は、携帯通信に関する展示会「ワイヤレス・ジャパン」(主催:リックテレコム)での公演のために来日した、米インテル 上席副社長兼ワイヤレス・コミュニケーションズ&コンピューティング事業本部長 ロナルド・J・スミス(Ronald J.Smith)氏に、PCA登場の背景や、この分野におけるインテルの取り組みについて話を聞いた。


米インテル 上席副社長兼ワイヤレス・コミュニケーションズ&コンピューティング事業本部長 ロナルド・J・スミス氏

――なぜいま「PCA」というアーキテクチャが必要なのか?
「これまでPCの分野では、プロセッサ能力が向上することでリッチなアプリケーションを走らせることが可能になるという歴史を繰り返し、発展を続けてきた。そして、PCのもう1つの成功要因が、オープンなアーキテクチャを採用し、アプリケーションの発展を促してきた経緯にある。携帯などのワイヤレス分野でも同じことがいえるだろう。データ処理におけるインテルの強みを生かし、開発者に役立つオープンなアプリケーション・プラットフォームを提供していきたい」

――メーカーや開発者にとってPCAを用いるメリットは?
「ワイヤレス分野での開発スタイルは、従来の組み込み分野の『端末の開発→アプリケーションの開発→形式認定の取得』といった長い開発プロセスにしばられる傾向が強かった。実装される機能の複雑化も進み、これからは新しい開発環境を整えていかなければならない。PCAでは、通信/機器/アプリケーションといった要素の同時開発が可能となり、互いに独立している。PCAの利用で開発期間の短縮が可能になり、製品サイクルの短縮化に対応できるようになるだろう」

――NTTドコモのiモード対応機の大量回収に見られるように、端末の機能の複雑化と開発サイクルの短期化による弊害と思われるトラブルが増えてきたが、これについてどう考えるか?
「データサービス向けのアプリケーション開発である以上、これらは避けられない問題だ。この分野では、柔軟に開発できるスケーラブルさは重要な意味をもつ。(毎回、1から作り上げるのではなく)PCAのようなプラットフォームで基礎を作り、その上に新しいアプリケーションを載せていくことで、これらの問題を回避できるようになるだろう」

――PCAに対するメーカーやキャリアの反応はどうか?
「キャリアでいえば、ブリティッシュテレコム(BT)、スカンジナビア半島で著名なソネラ、韓国のKGなどから、すでに賛同をもらっている。日本のメーカーでは、ワイヤレスジャパンの基調講演で上演したビデオにあるように、NEC、三菱電機、サイバードといった携帯端末やその上で動作するアプリケーションを開発するメーカーから賛同の言葉をいただいている。発表前の製品のため詳しいことは言えないが、そのほかにもさまざまなメーカーと提携を行っている」

――ワイヤレス向けアプリケーション実現における懸案事項にはどのようなことがあるか?
「これまでのネットワークは、音声は音声、インターネットはインターネット、ワイヤレス通信はワイヤレス通信といった具合に、それぞれが別のネットワークを形成していたといえる。将来、これらはやがて1つのIPによるネットワークへと統合されるだろう。事業者はこのことを意識すべきだ。近年、携帯キャリアの1加入者あたりの音声通信による収入は減少傾向にある。これらを補う形で、データ通信による需要を喚起し、新たな収益源を確保する必要が出てくる。データ通信に需要があることは、日本のiモードや欧州のSMSで実証済みだ。これから解決すべき課題は、『インターネットや社内に蓄積されたデータ/アプリケーションをいかにワイヤレス向けに再利用できるか』『セキュリティはどう確保するか』『PC/PDA/携帯端末の間でいかにデータの同期をとるか』といったことだ」

――iモードなど日本の現状を見る限り、データサービスのメインはコンシューマ向けが主流だいえる。今後、モバイルのデータサービスがビジネスアプリケーションまで浸透するのに必要だと思われることは何か?
「携帯電話事業者などのキャリアは、もっとデータサービスの重要性を認識すべきだと思う。そして、コンテンツ提供のために、独自のネットワークを形成すべきではない。あくまでインターネットという存在は1つだということだ。今後、キャリア(を含むサービス・プロバイダ)はますます『アプリケーション・サービス・プロバイダ』となることが求められるだろう。インターネットという共通の基盤を使って、いかにビジネスを進めていくかがカギとなる」

(編集局 鈴木淳也)

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