絶好調のVisor、その一方でハンドスプリングは体制縮小へ

2001/8/17

 現在、ハンドスプリングのPalmデバイス「Visor」シリーズが、低価格戦略のおかげで好調な販売を記録している。しかしその一方で、ハンドスプリング日本法人の大幅な縮小が8月末に行われる予定だ(以下、「ハンドスプリング」は日本法人を指す)。ただし、8月末以降も製品の供給やサポートには大きな影響はないという。

9800円という激安価格で販売され、好調が続くVisor Deluxe

 ハンドスプリングは6月、7月、8月と、この3カ月の間、各モデルで毎月5000円から1万5000円の値下げを発表し続けてきた。その結果、普及モデルの「Visor Deluxe」は2万4800円が9800円になり、カラー表示が可能な「Visor Prism」も4万9800円が2万4800円になるなど、ラインナップ全体にわたって希望小売価格を大きく低下させた。その結果、爆発的とも言えるほど好調な売れ行きと、それに伴うシェアの向上が実現されている。同社のこのアグレッシブな低価格戦略は日本独自のものであり、シェア向上を目的としているが、現時点で同社のこの目論見は成功しているといえるだろう。

 しかしその一方で、ハンドスプリングは8月末に大きな体制の変更を行う模様だ。複数の情報源から得た情報によると、ハンドスプリングは8月末までに、現在13名の社員数を大幅に減らし、同社が中心となってマーケティングや販売促進、ビジネスモデルの構築などを行っていた体制を改める。具体的には、同社の販売代理店である関東電子が、現在のハンドスプリングの流通体制を引き継ぎ、ハンドスプリングは米本社とのパイプ役に徹することになるようだ。

 気になるのは、製品供給の維持と低価格戦略の行方だ。

 今回のハンドスプリングの低価格戦略は、こうした体制縮小によって浮くコストを低価格化の原資にしたと解釈することができるが、同時に、販売体制引き継ぎに向けた在庫整理の面もあるだろう。とはいえ、すでにほぼ半額にまで下げた製品の価格を引き上げることは容易ではない。少なくとも新しいモデルが登場するまでは、引き続き低価格戦略は続くと見るべきだろう。もちろん、新モデル後も続く可能性はある。

 また、関係者によると流通体制が変更になるだけで、製品供給自体はいままで通り行われ、店頭販売などへの影響はないという。サポート体制も最初からアウトソースされているため、エンドユーザーへの実際の影響もほとんどないだろうという。スプリングボード対応など、周辺機器開発に関するハンドスプリングからの開発支援体制についてはなんらかの影響があるようだが、現在サードパーティからの発売が予定されているような周辺機器などについても、おそらく発売に大きな影響はないだろうとしている。

  ハンドスプリングは昨年の6月14日に設立されたばかり。わずか1年での体制縮小は、日本のPalmデバイス市場が1年前に予想されたほど楽観的なものではなかったことを示している。調査会社の米IDC日経マーケットアクセスのレポートでも、今年のハンドヘルドデバイス市場の伸び悩みが伝えられており、こうした市場停滞の波をかぶる格好になったといえるだろう。

(編集局 新野淳一)

[関連リンク]
ハンドスプリング
米IDCのレポート
日経マーケットアクセスのレポート

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