キーは“分離”にあった―地震対策に画期的な解決策登場? 

2001/12/13

 地震は日本人が日常レベルで恐れていることの1つ。例えば阪神淡路大震災レベルの地震が発生し建物が崩壊した場合、当然、ストレージやサーバなど情報システム機器も例外なくがれきの下に埋もれることになるだろう。ビルそのものが耐震構造を持つものも少なくないが、全ての企業がすぐに実行できる対策とはいえない。現在、地震王国日本でとられている情報システム機器の地震対策としては、機器をベルトで固定する、機器をラックに入れ、ラックごとボルトで固定する、などがある。だが、それらの対策がどのくらいの有効性を持つのかは未知数で、地震発生の際に固定部に機器の重量の約2.5倍の付加が加わり、震動や衝撃波を吸収することは困難とされてきた。

J.M.McFatridge氏 「完璧は有り得ないが、完璧に限りなく近い製品」と自信をのぞかせる

 米ワークセーフテクノロジーズはこの課題に取り組むこと約10年、耐震プラットフォーム「ISO-Base」の製品化にこぎつけた。コアとなる技術に関して特許を取得した同社は2000年8月にISO-Baseを正式に発表、1年間で約4000台を販売した。今回、日本国内で販売を行ってきたBestソリューションズと提携した伊藤忠テクノシステムズ(CTC)は12月12日、製品の紹介および日本での販売戦略について明らかにした。

 ISO-Baseはコンピュータ機器の下に設置することにより、地震発生時の震動や衝撃を吸収する。米国で行ったNEBS(Network Equipment Building Systems)認定の震動テストでは、マグニチュード7.0〜8.3に相当するZONE4という環境で、震動に耐え、テストをパスした。

 同社 Sales Rep. J.M.McFatridge氏は、製品のカギはプラットフォームの中心部分にある特許取得技術「Ball-N-Core」とした。Ball-N-Coreは、スチール製ボールベアリングを円すい状のくぼみを持つロードプレート2枚で上下にはさむという構造を持つ。あらゆる方向からの震動を受け入れつつ、滑らかな水平横運動を行うことにより、機器が倒れることを防ぐ。今年3月、米シアトルで発生した地震(マグニチュード6.8)では、ISO-Baseを導入中だった同社顧客のボーイングの企業データセンター内の、ISO-Base導入済みだった4割は被害を免れたという。

2枚のプレートとボールから成るISO-Base 実際に製品上に機器を設置して揺らしてみると、水平横運動を行った

 同製品が採用している“基礎分離”という技術は、地震による地盤の動きや震動を建造物から“切り離す”ことにより、衝撃波などが伝わることを防止/軽減するというコンセプトに基づく。建物の除震技術としては最新で、建築家など専門家が注目している技術だ。

 ISO-Baseの設置は、機器をISO-Base上に載せるだけでよい。リフト装置やスロープ装置により、稼働中のシステムでも設置が可能なほか、データセンターのレイアウト変更にも対応できる。

 対荷重は1セットで1トン。種類は、奥行きの長さに応じ、36インチ、39インチ、48インチ、60インチと4種類ある。価格は1セット50〜64万円。CTCではiDCやxSPなどを対象に販売し、初年度5000台の出荷を目指す。

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CTCの発表資料

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