急ブレーキがかかるストレージ、打開はソリューションに

2002/1/24

 IT業界に限らず世界的に景気の減速化が指摘されている。そのような状況にもかかわらず、これまでは業績が好調だったストレージ市場だが、ここにきてかげりが見え始めた。それまで絶好調だった大手EMCが昨年第3四半期には赤字となるなど、不況の影響を免れられなくなってきた。

 1月23日、都内で開催された「Japan StorageVision 2001」では、減速するマーケットの中で、ストレージ関連企業にとって成長の機会はどこにあるのかが主なテーマとなったようだ。

ジョン・マッカーサー氏 「ストレージは複雑。評価から管理までのトータルサービスが求められる」

 世界のストレージ動向についての講演を行ったのは、米IDC ワールドワイドストレージリサーチ グループバイスプレジデント ジョン・マッカーサー(John McArthur)氏。同氏によると、これまで順調に成長を続けてきた世界ディスク・ストレージ・システム市場は2001年、市場規模が約2億5000万ドルとなり対前年比18.2%減となったという。また、2001年に出荷された総ディスク容量も、前年が成長率80%だったのに対し、2001年は20%にとどまったという。「ドットコム崩壊の影響、景気全体の減速化、通信業界のスランプなどにより、投資は急激に減少している」(マッカーサー氏)。

 いまストレージ関連企業に求められることは、必要性を説くこととニーズを満たすこと。ストレージ・システムが生む価値を示すことにより必要な投資であることを説明する必要があるという。「企業はこれまで以上に自社のビジネスを動かすシステムにフォーカスすることが大切になる。データの容量は増えているのだから、ストレージの必要性には変わりない」とマッカーサー氏は語る。

 ニーズを満たすということは、ストレージ・システムのソリューション化につながる。企業の最大の関心事はリスク減少とコスト削減。SAN、NASなどのネットワーク・ストレージ・システムはそれに寄与するものといわれているが、システムだけを提供するのでは顧客ニーズにマッチするとは言えない。「システム、管理ソフトウェア、サービスといったコンポーネントを組み合わせてソリューションとして提供することが求められる」(マッカーサー氏)。分野としては、データのレプリケーションへのニーズが高まるという。例えば、これまでデータレプリケーションの対象外だった電子メールに対しても、レプリケーション化が進むとマッカーサー氏は予想する。それ以外の成長分野としては、データの暗号化、ストレージ・リソース管理などを同氏は挙げた。

 今後の業界動向としては、SSP(ストレージ・ソリューション・プロバイダ)ビジネスの台頭がある。システムベンダ、ソフトウェアベンダらがこの市場を狙っており、アプリケーション統合、コンテンツ・マネジメントやコンテンツ配信と組み合わせたサービスが展開されるという。また、ベンダのサービス市場へのシフトもある。現在、EMCやIBMといったベンダがストレージ・サービスに人員を増やし投資を行うなどして積極的に取り組んでいるが、こういった傾向は今後さらに強くなるようだ。

 IDCでは、2002年の中盤にはIT業界の景気は持ち直すと見ている。ストレージシステムの動向としては、DASは減少し、SAN、NASがそれぞれ年平均成長率7%、13%で成長し、2005年には2つを合計した市場規模がDASの市場規模を上回ると見ている。

 日本市場については、「特異。米国および世界の動向がそのまま当てはまるとはかぎらない」とIDC Japan ストレージシステムズ リサーチャー 森山正秋氏。DASの割合が非常に高い(34%、米国は8%)が、2001年より、ネットワーク・ストレージ市場が成立されつつあるという。森山氏は、「2001年の日本におけるディスクシステム全体の市場は0.7%増加した」と述べ、オープンシステムが市場を牽引するため、今後の見通しも悪くない、と印象を語った。

(編集局 末岡洋子)

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IDC Japan

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