組み込み市場制覇に向け、準備を整えるマイクロソフト

2002/2/20

 マイクロソフトは2月19日から2日間、組み込み用Windows OSについてのデベロッパ・カンファレンス「The Windows Embedded Developers Conference」を開催している。カンファレンスのオープニングを飾る基調講演では、米マイクロソフト Embedded and Application Platform Group General Managerのトッド・ウォレン(Todd Warren)氏が、同社の組み込み機器市場への取り組みと、組み込み機器向けプラットフォームの新製品「Microsoft Windows XP Embedded マルチリンガル ユーザーインターフェイス版」と「Microsoft Windows CE .NET日本語版」の発表を行った。 また、コンシューマ市場に向けた次世代の構想、“フリースタイル(Freestyle)”および“ミラ(Mira)”についても、明らかにした。

コンポーネント化により柔軟性を実現したWindows CE .NET

トッド・ウォレン氏 「ソースコードを開示するなど、コミュニティに貢献していく」

 ウォレン氏は、組み込み市場の昨年の成長率は180%であり、成長の著しい市場であると述べた。同社は世界50カ国以上、1200社以上のパートナーと共同で作業を進め、7万5000人以上の開発者とコミュニティを形成し、コミュニティに対して協力する姿勢であることを強調した。

 同氏はまた、先日発表した、開発環境「Visual Studio .NET」により、PCの世界と組み込みデバイスの世界を融合でき、Pocket PCやMicrosoftTVにおいても完全なソリューションを提供できると自負しているとも述べた。そして、PC、サーバ、アプライアンス、モバイル機器、エンターテイメント機器、コミュニケーションデバイスなどのすべてをWebサービスによって連動させていくというビジョンを示した。そのためには、「コンポーネント化されたリッチなOS」「さまざまなデバイスとシームレスに連携できる統合性」「リッチなアプリケーションとサービスを提供すること」の3点が重要であり、リッチなアプリケーションやサービスにより、組み込みデバイスの差別化が図れるとした。

 Windows XP Embeddedは、Windows XPと同じバイナリをベースとしており、信頼性が30倍向上した。開発者が必要な機能を選択し、フットプリントの小さな組み込みデバイスを開発できる。Internet Explorer 6.0やWindows Media Player 8.0、DircetX 8.1や、IEEE802.1xなどに対応したほか、Webサービスに必要となるXML、SOAP、Passportといったネットワークサービス技術にも対応。Embedded特有の機能として、ヘッドレス(モニタ、キーボード、マウスなし)やコンパクトPCI、CD-ROM/FlushROMからのブートなどにも対応している。

 Windows CE .NETは、Windows CE 3.0の後継となるモバイル機器向けのOS。Bluetooth、IEEE802.11などをOSレベルでサポートするなど、無線ネットワークに対しての機能が強化されている。XML 3.0をサポートし、Webサービスをスマートデバイスに組み込むことができるほか、.NET Compact Frameworkもサポートする。

“ミラ”搭載機は今年末にも登場

搭載機を抱えた古川亨氏(左、米マイクロソフト アドバンスト・ストラテジー&ポリシー日本担当 バイスプレジデント)とホワイト氏(右、同エンベデッド アプライアンス プラットフォームグループ シニアディレクター)

 同社は同日、プレス向けに同社のコンシューマ市場向けの構想および戦略を発表した。これは、米マイクロソフトの創業者兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクトのビル・ゲイツ氏が、1月初めに米国で開催されたCES(Consumer Electronics Show)で明らかにしたものだが、日本でその概要が発表されたのは今回が初めてとなる。

 同社が発表したのは、“フリースタイル(Freestyle)”と“ミラ(Mira)”(両方とも開発コード名)で、コンピュータの家庭への浸透を目指す“eHome”構想の一環を成す。フリースタイルは、新しいユーザー・インターフェイスで、通常のPCの機能をすべてサポートした家庭内の“メディア・センター”へのアクセスを可能とする。TVに搭載されると、TVのスクリーン上で、電子メールのチェックやビデオ・オン・デマンド機能などの操作ができる。

 ミラは、家庭内のどこからでもWindows XPの機能が利用できるようにする表示テクノロジで、モニタやTVに“インテリジェンス”を付加したもの。この“インテリジェンス”にあたるのが、Windows CE .NETと無線接続規格の802.11b。Windows XPを“ターミナル・サーバ”とし、アプリケーションやデータはこのサーバ上に存在する。Tablet PCが、全アプリケーションやデータをローカルに格納したノートPCの進化形であるのため、まったく新しいカテゴリと言える。

 同社によると、ミラのパートナーは現在8社。この中には、松下電器産業など日本のメーカー4社が含まれている。今年末にもミラ搭載の製品が市場に登場する予定で、価格は500〜800ドルあたりになる予想だという。

(編集局 松山雅明、末岡洋子)

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マイクロソフトの発表資料

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