[Interview]
IPアドレスの枯渇は、いつやってくるのか?
2002/3/23
最近、IPv6関連の動きが慌しい。実験サービスながらも、多くの商用プロバイダから接続サービスの提供が始まっており、インフラの構築は徐々に進みつつある。また昨年は、シスコシステムズが自社ルータ用のOS「IOS」のIPv6正式対応を表明したほか、マイクロソフトがIPv6スタックを標準搭載した最新OS「Windows XP」を発売するなど、普及に向けた動きが着々と進みつつある。
今回は、そのIPv6普及活動において中心的役割を果たしているアジア・グローバル・クロッシング リージョナル ディレクターの荒野高志氏にインタビューを行い、「IPv6はいつやってくるのか?」「普及のためにどのような課題があるのか?」などの疑問を中心に、現在の活動内容やIPv6の未来について話を聞くことにした。
――IPアドレスの枯渇が叫ばれていますが、いつIPv4のグローバル・アドレスが枯渇すると考えていますか?
割り当て可能なIPアドレスの残りと実際の消費量の伸びから計算して、以前までは2006〜2007年くらいだと考えていました。ところが、最近では欧米圏での経済の停滞もあり、アジア圏での消費の伸びの高さを考慮に入れても、もう少し遅い2009〜2010年くらいではないかと考えています。
IPv6の普及活動に奔走する、アジア・グローバル・クロッシング リージョナル・ディレクターの荒野高志氏 |
――かなり急迫していると思っていましたが、案外先なのですね
従来まで、CIDRなどで割り当て可能なグローバルIPアドレスを節約する試みが行われてきましたが、その抜本的な解決策として登場したのがIPv6です。その最大の特徴は、ほぼ無限ともいえる広大なアドレス空間でしょう。ただし、IPv6はそのままでは使用できません。既存のIPv4ネットワークからのトランジット(移行)にかかる準備期間として、5年ほど必要だと思われます。つまり、余裕があるように見えても、実際の勝負の分かれ目はここ1〜2年ほどなのです。
――IPv6への移行で、どのような問題があるでしょうか?
IPv6のグローバルIPアドレスをどのように割り当てるかという、「アドレス・ポリシー」が完全に決まっていないことが挙げられます。これが、いままさに私が取り組んでいる問題です。IPv6の暫定アドレス・ポリシーは2年半ほど前から運用されていますが、大きな問題点が2つあります。1つ目は、従来のIPv4のアドレス・ポリシーの考え方を踏襲したものになっていること。「おかわり8割」という感じで、すでにアドレスの割り当てを受けている場合、それがなくなるギリギリまで、新しいアドレスの割り当てを受けられないというものです。アドレスが潤沢なIPv6に、このルールは向きません。2つ目は、決まっていないことが多過ぎる点です。
――ISPの中には、すでに接続実験サービスの提供を開始しているところがありますよね
そうです。すでに商用プロバイダがサービスを開始しているのに、世界的に危機感が薄いのです。比較的IPv4アドレスが潤沢な米国に比べ、使用量の伸びが高いアジア圏が深刻だといえるでしょう。そこで、日本側から積極的に提案を行っていこうということになりました。
――具体的には、どのような活動を行われたのですか?
従来まで、アドレス・ポリシーはAPNICのような組織がトップ・ダウンで決めていました。今回は、もう少しボトム・アップで決めていきたいという考えもあり、2001年6月くらいから「IPv6オペレーション研究会(日本インターネット協会のIPv6ディプロイメント委員会のWG)」「JPNIC」「WIDE」「JANOG」など、日本でIPv6関連の活動を行っているいろいろな組織にヒアリングを行い、意見をまとめました。2001年8月に台北でAPNICの会議がありましたので、そこで提案を行うことを目標に準備を進めたのです。
(編集局 鈴木淳也、大内隆良)
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