「PCを日常生活の中心に」ビル・ゲイツ

2002/4/25
April 18, 2002, 4:40 p.m. ET By Stuart Glascock, InternetWeek

 マイクロソフトはPCを全家庭のリビングルームの主役にしたいと考えている。そのために、コンシューマにとって使いやすくて見栄えが良く、耐久性のある液晶画面を装備し、リモートコントロール可能なワイヤレスデバイスをハードウェアデベロッパにデザインしてもらいたいと考えている。

 これは、毎年開催されるイベント“WinHEC”(Windows Hardware Engineering Conference)で同社 会長兼チーフ・ソフトウェア・アーキテクト ビル・ゲイツ(Bill Gates)氏が発信した重要なメッセージの1つだ。

 ソフトウェア業界最大手のマイクロソフトは、先週米シアトルにて開催されたWinHECにおいて、PCを日常生活とうまく共有できるようにデザインされた各種技術を披露した。これらの技術を使用することで、自分のPCを利用して音楽を聴いたり写真や映画を見ることができるようになるという。このビジョンでは、Windows用のリモートコントロールデバイスと軽量のワイヤレスモニタが重要なハードウェアコンポーネントとなる。

 2500人の参加者を前にしたゲイツ氏は、「多用途PCエコシステム」に言及した。同氏によると、PCは当初の目的である生産性向上のためのデバイスから、ビジネス、エンターテイメント、そしてコミュニケーションにとって有用なものへと発展したとし、TV、PC、そして各種の周辺機器などのスタンドアロンデバイスは早晩減少し、「相互接続された操作性」を持つコンピューティングの世界が台頭するだろうと続けた。

 PCは「膨大な数へと増加しつつあるスマートデバイスの司令塔になろうとしている」とゲイツ氏は言う。「われわれは“デジタルの10年”を通じて、このトレンドが加速すると見ている。スタンドアロンのPC、TV、電話、および関連デバイスは、相互接続されたコンピューティングの世界に取って代わられることになる」とした。

 ゲイツ氏は、マイクロソフトはワイヤレスネットワーク標準に重点を置いており、Bluetoothキーボードやマウスを開発することを発表した。この新しいハードウェア製品は今年後半に発売される見込みという。また、「Windows XP Bluetooth」SDKも5月にリリースする。このSDKは、デベロッパによるWindows XP対応Bluetooth互換デバイスの構築を支援するものとなる。

 さらに、同社の「Mira」および「Freestyle」技術をベースにした多数の新型デバイスについても言及し、コンシューマ向けにサラウンド効果とHDビデオを提供する次世代のWindows Media(コードネーム:「Corona」)のデモを行った。MiraはホームPCにワイヤレス接続される薄型軽量ディスプレイスクリーンで、一方のFreestyleは家庭のメディアセンターとして機能するPCを開発するための技術となっている。ゲイツ氏はNEC、富士通、東芝、および台湾のWistronなどをMiraの新たなパートナーとして発表した。

 そして、PCと電話は一段と密接に統合されるようになるとし、Windows Messengerの「友だちリスト」を使ってPCから携帯電話へ電話をかけるVoice over IP電話のデモを行った。

 「これまで、家庭でのPCは書斎に置かれていた。画面は1つしかなく、その用途は職場での仕事とほとんど同じようなものだった。われわれはもっと用途を拡大し、複数のPCを家庭内のさまざまなものに接続したいと考えている。PCをどこでも利用できるようにする」(ゲイツ氏)

 もう1つのデモでは、複数モニタの使用によって生産性が向上することを披露した。米マイクロソフトのプロダクトマネジャの主張によると、2台のモニタを利用することで業務での生産性が20〜50%向上するという。さらに、複数のアプリケーションや写真、もしくは画像のパノラマ表示を行う超薄型平面スクリーンのプロトタイプも展示した。

 ゲイツ氏は懸念の声が上がるセキュリティについても触れた。先日、同社が改めて約束した「信頼できる」コンピューティングに言及し、エンドユーザー向けの新しいエラー報告手順や、ISVおよびIHV向けの新しい「Windows Error Reporting」ポータルなど、セキュリティ改善に向けた取り組みの概要を参加者に示した。

 同イベントでは、ゲイツ氏の基調講演に続いては、米インテル社長のPaul Otellini氏が、セキュリティ向上の推進など、ゲイツ氏と同様のテーマについてアピールした。製品のロードマップ関連としては、「Banias」というコードネームを持つ新型チップが来年出荷されることを明らかにした。これは、インテルとしては初めてモバイルプラットフォーム専用にデザインされるチップとなり、低消費電力と長時間のバッテリ寿命を実現するという。

[英文記事]
Microsoft Pushes Convergence Theme At WinHEC

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