「.NETフェーズに入っても、マイクロソフトはPCを裏切らない」

2001/12/14

 「マイクロソフトは今後もPCをコンピューティングの中核ととらえる」――COO就任後初来日した米マイクロソフト 社長兼COO リック・ベルーゾー(Richard Belluzzo)氏が強調した言葉だ。今年2月にCOOとなった同氏は現在、ビル・ゲイツ(Bill Gates、会長兼 チーフソフトウェアアーキテクト)氏、スティーブ・バルマー(Steve Ballmer、CEO)氏とともに、同社の“頭脳”という大役を担う。12月13日、同氏は都内で会見を開き、今後の戦略を明らかにした。

リック・ベルーゾー氏 9月の来日予定はテロ事件発生で中止、「年内に来日できて光栄」と語る

 ベルーゾー氏はまず、IT業界全体についてコメントし、その中でのマイクロソフトの現状について語った。「今年1年はIT業界にとって厳しい年だった。だが、変化の芽は誕生しつつある。新しいデバイスやオンライン・サービス、アプリケーションなどは、次の“デジタル時代”のビジネス・チャンスを生むだろう。技術の統合が進行しているのだ」(ベルーゾー氏)。そして、「マイクロソフトは大きな変革期にある」と続けた。これは、言うまでもなく、PCが唯一の主役ではなくなった“ポストPC”時代に向けた戦略として、同社が昨年6月に打ち出した“.NET”構想を中心に同社が進めている一連の動きだ。

 ベルーゾー氏は、この“変革”を成し遂げるため、4つの事項を優先課題として進めていると述べた。PC、エンタープライズ/サーバ、コンシューマ、開発者だ。PCでは、日本で先月に発表された主力OS「Windows XP」など、エンタープライズでは、.NETサーバ群およびWebサービス技術が中心となる。コンシューマとは、来年2月に発売のゲーム機「XBox」や家庭用STB(セット・トップ・ボックス)を、開発者とは.NETプラットフォームにサービスを構築するツール群を指す。.NETは4分野に共通した土台となる。

 このうち、PC以外は同社にとって新規分野となる。特にエンタープライズに関しては、「最大のマイクロソフトの変革」とし、製品単体の技術開発・改良はもとより、パートナー戦略を重視していることにも触れた。

 会場で行われたプレスとの質疑応答は以下のようなものだった。

ベルーゾー氏は、HPに23年勤務した後、SGI、そして1999年にMSに加わった

――サン・マイクロシステムズが主導となり進めている認証技術“Liberty Alliance”をどう見ているのか? (動向が注目されていたAOLが“Liberty Alliance”に参画(「AOLがLiberty Allianceに参加、サン陣営へ」参照)したばかりである)

 “Liberty Alliance”とは何を目的にしたものなのかを見極めている段階だ。われわれは、ユーザーの使い勝手を向上させる目的で、数年前に“Passport”を開発した。“Passport”は、いま利用できる素晴らしいソリューションだと考えている。今後も、技術改良を続けていく。WebサイトからWebサイトへ移行しても認証を行う必要がなくなるなど、ユーザーに大きなメリットをもたらすものとなるだろう。

――マイクロソフト製品のセキュリティ・ホールを突いたウイルスメールがまん延しているが、これについてどう考えるか?

 これまでも、セキュリティは最大の課題の1つだった。だが、6カ月前、取り組みをさらに強化する必要があるという結論に達し、セキュリティレベルを上げる対策をとることにした。取り組みとしては、1)製品単体のセキュリティレベルを上げるため開発を行うこと、2)ユーザーとの関係を密にし、トレーニングなどのサポートを行うこと、3)ポリシー策定に関し、政府をはじめ企業や組織のポリシー策定の手助けをすること、の3点だ。これらを軸に、技術をベースに積極的に取り組み、セキュリティに関して業界でリーダーシップをとっていきたい。

――エンタープライズ事業に関しては、厳しい声も上がっているが……。

 製品のイノベーション(革新)、改良が必要だし、ビジネスそのもののやり方も変えていく必要がある。ソフトウェア開発会社とパートナーを組んで、ソリューションを中心に展開する方向を考えている。

 これまでマイクロソフトは、デスクトップPCのコンシューマを獲得したが、この分野では顧客は政府や企業。一定のポジションを確立するまでに数年はかかると見ている。引き続き、重点投資を行っていく。

――4つの優先課題で最も力を入れている分野はどれか?

 PCだ。PCは引き続き中心であり続ける。例えば、ブロードバンド時代に可能となるリアルタイム・コミュニケーション。PCがその用途を発揮できる良い例だ。今後も、この分野に最大の投資を行い、最高レベルの優先度で事業を展開する。

(編集局 末岡洋子)

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