IBMを追撃する組織づくりへ、ヒューレット・パッカード
2002/6/5
日本HP経営改善推進/TCE推進部 部長兼社長補佐 柴田憲伯氏 |
6月4日、「eEnterprise Tokyo2002」(主催 IDGジャパン)で特別講演を行った日本HP経営改善推進/TCE推進部 部長兼社長補佐 柴田憲伯氏は、新生日本ヒューレット・パッカードの組織改善の戦略的方向性を明らかにした。
現在、新生HPが組織改善の旗印に掲げているのは「TCE」(Total Customer Experience)という標語だ。企業活動のすべての局面において最も重要視されるのが顧客であり、顧客のあらゆる要求を満たし、満足度を向上させることが、企業存続の基本的な要素である、とする立場である。
柴田氏は「TCEの立場に立って企業改革を行っていくと、これまでわれわれが行ってきた、供給者中心のビジネス展開がいかに無駄の多いものだったかを改めて認識させられる」と悔恨の念を込めてつぶやく。
柴田氏によると、この顧客中心のビジネス展開という立場は当然のこととして受けとめられがちだが、実行している企業は皆無に等しいという。
新生HPでは、このTCEの立場を確立する方法論として、「VDS」(Value Delivery System」の実践を徹底させる。簡単に説明すれば、顧客が要求するあらゆる付加価値を提供するための仕組み作りのことである。
VDSを実践するためには、1社単独でのビジネス展開では不可能だと柴田氏は言う。
「顧客が、ある製品なりサービスなりを獲得する際の意識・行動の流れを考えてみるとよい。興味から始まり、(製品・サービスの)選択、発注、待機、(企業からの)納品、使用、支払い、保障、廃棄などの一連の流れをすべて1社だけでサポートするには膨大なコストがかかることがわかるだろう。品質を保つことも困難である。顧客のし好もさまざまに変化する。つまり、パートナー戦略はVDS実践のカギを握っていることになる」。
また、「Webサービスを活用することで、顧客の興味を引くための広告・宣伝活動、パンフレット制作のコストは削減されるだろう。さらに、営業活動、事務手続き、デリバリーコストなどを削減しながら、一方で顧客の満足度を高める仕組みを構築することも可能である」とし、ITを活用したCross Organizationの構築を急ぐべきとの意見を示した。
さらに、柴田氏は、パートナーとの協調、ITの活用による新しいビジネス戦略の実践環境において、今後、マネジメントを行う役職に求められる最大の能力は、指揮権が存在しない組織の集合体の中でいかに、全体をまとめあげていくか、という高度なコミュニケーション能力にある、と看破した。
合併によって、新生HPの従業員数は6500人に膨れ上がる。旧HP1社だけでも困難な企業改革への道のりは、合併によりさらに難しくなった。しかし、新生HPが最大のライバルと目するIBMを凌駕するには、確かに、サービス・ビジネス強化を想定するTCE活動の推進は大きな意味を持つ。HPにとっては、今年が正念場になりそうだ。
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