eビジネスの徹底追求で成功しつづけるシスコ

2002/7/17

 インターネットの寵児(ちょうじ)とされる米シスコシステムズは2001年、自社システムに積極的にネットワークとWebアプリケーションを取り入れて活用した結果、17億ドルのコスト削減を実現した。現在、売上高を社員数で割った社員一人あたりの生産性は年間54万ドルで、同社はこの値を70万ドルに持ち上げるよう、今後もさらなるeビジネス化を追求し実行していくという。同社の日本法人はSI事業者ら5社と組み、同社が実践してきたノウハウを日本に紹介するプログラム「インターネット・ビジネス・ソリューション(IBS)イニシアティブ」を発足させた。「重要なのは、どんなアプリケーションを導入するかではない。プロセスにチャレンジし、カルチャー(文化)にしていくこと」と同社 代表取締役社長 黒澤保樹氏は語る。

 シスコが発表したIBSイニシアティブは、同社がITを駆使して生産性を向上させ、コストを削減したベストプラクティスの蓄積を社外に紹介するというもの。「インターネットを通じて日本経済を活性化すること、顧客の成功に貢献することは、シスコのミッション」(黒澤氏)という理念がベースとなっているという。

シスコシステムズ 代表取締役社長 黒澤保樹氏

 このイニシアティブの促進にあたり同社がパートナー関係を結んだのは、伊藤忠テクノサイエンス、キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、新日鉄ソリューションズ(NSSOL)、TIS、電通国際情報サービス(ISID)の5社。

 具体的には、シスコが顧客企業にコンサルティングを行い、個々の案件に最適なパートナーがシステムの実装などの実作業を行っていく。コンサルティングの部分では、ネットレディ(Net Ready)かどうか、インターネット・ケイパビリティ(Internet Capabilities)を評価するICAPなど、シスコ独自の各種指標を用いて行う。だが、同社はこれによりコンサルティングビジネスに乗り出すわけではない。あくまでもイニシアティブであって、同社の「収益に直接つながるものではない」(黒澤氏)と主張、売り上げ増への間接的な貢献などの効果を期待して行うとしている。今回のシスコのように、システムや技術がどれだけコスト削減に貢献するのかを身を持って示すことでマーケティング的効果を狙う手法は、オラクルなども積極的に行っている。先進的、革新的といった企業のイメージアップにつながるだけでなく、説得力のある宣伝にもなる。

 3年前から同イニシアティブを開始しているという米国本社では、すでに200〜300社を手がけた実績があるという。同社の取り組みとしては、オンラインでの受注、セルフサービスによる注文した商品のトラッキングサービス、eラーニングを利用した従業員のトレーニング、従業員向けポータルなどがある。例えば、出張に行く際、承認プロセスはなく、社員がポータルから所定の手続きをすれば、自動的に上司に報告される。また、ポータルに用意されているトラベルの情報ページは各航空会社やホテルなどのシステムと動的に連動しており、安い商品を選択するような仕組みになっているという。このようにIT化に積極的に取り組んだ結果、現在、同社のオンラインでの受注率は92%に達しており、顧客からの問い合わせも、セルフサービス型のWebアプリケーションへの誘導により、電話による問い合わせはほぼ半減したという。米国では、CIOや企業の経営陣から、このようなシスコの経営モデルに関する興味や高い関心が寄せられ、このイニシアティブ発足に至ったようだ。

 このような、合理性を徹底追求した米国型システムが日本のビジネス文化や風土に沿うのかという疑問がわくが、シスコの黒澤氏は、「日本は遅れているわけではない。慎重に進める国だ」と語る。パートナー各社は「できる・できないは別として、実行していくことが大切」(ISID 常務取締役 木村裕氏)「ここ1年で確実に経営者の意識は変わってきた。アプリケーションやシステムにしても、導入すると、具体的にどこにどのような効果があるのかについて、事前に説明を求められることが増えた。システムによる効率化に前向きになってきたのではないか」(NSSOL 基盤ソリューション第三事業部長 藤本英文氏)などとコメントし、ニーズはあるとの見解を示した。

(編集局 末岡洋子) 

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シスコシステムズ
伊藤忠テクノサイエンス
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング
新日鉄ソリューションズ
TIS
電通国際情報サービス

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