「移動通信は今後もバラ色」とドコモの立川氏

2002/7/19

 携帯電話キャリアとしては日本最大手のNTTドコモ。iモードの成功により、現在世界で最も知名度の高い日本企業の1つともいえるだろう。3Gサービス「FOMA」の滑り出しは不発に終わっているが、同社 代表取締役社長 立川敬二氏によると、今後も「移動通信業界はバラ色」という。

NTTドコモ 代表取締役社長 立川敬二氏

 7月17日より3日間、東京で開催されている「ワイヤレス・ジャパン 2002」にてNTTドコモの立川氏は講演を行い、携帯電話をはじめとした移動通信業界の動向および同社の戦略について語った。

 昨年後半より、携帯電話の出荷台数や新規契約数の伸び悩みなどから、“ケータイ神話”は終わり「成長鈍化」と言われているが、立川氏はこれを「安定化」と言い換える。「これまで急成長してきたが、安定成長になったと認識すべきだ」(立川氏)。実際、年間純増数は1996年以来5年間、1000万人規模を維持してきたが、2001年度は8000万人と2割減となった。だが、人口普及率は6割に達している。これまでのような急激な成長が見込めないのは当たり前のことだ。

 さらなる成長・発展のためには、ビジネスの土壌や方法を変えなければならない。携帯電話の次なるターゲットは何なのか? 立川氏はこれに対し、マルチメディア化、ユビキタス化、グローバル化と3つの軸を挙げる。マルチメディアとは音声から非音声のことで媒体を広げること。ユビキタスとは人対人ではなく、人対機械(例:iモード)、機械対機械と利用対象を広げることだ。そしてグローバル化は文字通り、国や地域の枠を超えることを意味する。また、個人がけん引してきたモバイルを今後、企業にも広めていくという。そのニーズについては、「生産性の向上、新規ビジネスの創出の2つの点で利用価値がある」と立川氏は言う。

 立川氏はこの日、1点目のマルチメディアについて、iモードやiアプリ、モバイルECのCmodeなどを紹介ながら詳しく語った。そして、今後のモバイル・マルチメディアは、コンテンツ層、アプリケーション層、プラットフォーム層、ネットワーク層、端末層の5つが垂直統合し、それぞれの層で展開する企業が結合して、サービス展開していくべきとした。つまり、これまでのネットワーク層と端末層という2層モデルから、コンテンツをはじめとした上の層の重要性が増してきたといえる。

 そのマルチメディアサービスを実現するのが3Gだ。現在、標準として5つの形式があるが、立川氏は標準が乱立する現状を遺憾としているようだ。ちなみに、欧州と共同で標準化策定作業を進め、CDMA Direct Spred(W-CDMA、欧州ではUMTS)方式を採用する同社としては、米国やアジアのキャリアとパートナーシップを結び、グローバル化を推進していくという。3Gは今後20年程度主流技術となるといわれているが、4Gにおける方式策定では「統合した方式になる」と立川氏は述べた。携帯電話のIMT-2000のほか、無線アクセスや無線LANも統合されていくという。

 同社は、3Gサービス「FOMA」を世界に先駆けて開始したものの、加入者数は予測していたほど好調に推移していない。このようなことを意識してか、「慌てずじっくり育てていきたい」とコメント。3Gについては、「端末の多様化も不可欠」として、先日発売開始したPDAタイプの「FOMA SH2101V」を挙げ、今後も多種多様な端末の登場を見込んでいるようだ。

 10年目を迎える同社は今年、経営改革にも乗り出す。事業やサービスを見直し、自動車電話などニーズの低いものを統合させていくという。最後に立川氏は、「移動通信の将来はバラ色。いま体制を整えておけば、10〜20年は成長できる」と述べた。

(編集局 末岡洋子)

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