[eXcelon Forum 2002開催]
XMLによる統合のメリットを示すエクセロン

2002/7/31

 XMLデータベースベンダの日本エクセロンは7月30日、都内でユーザーカンファレンス「eXcelon Forum 2002」を開催した。BtoB、そしてWebサービスと、流行のキーワードは入れ替わるが、その核となるXMLの普及は、実際は進んでいないという声もある。XMLサーバ「Extensible Information Server」、オブジェクト指向データベース「ObjectStore」などの製品を持つ同社は、一時はBtoBなどXML応用分野へのシフトを見せかけたが、今年のカンファレンスでは基本に立ち返り、XMLが実現する統合のメリットを再度提示するものとなった。

米エクセロン CEO ジョー・ベリーニ氏

 基調講演を行った米エクセロンのCEO、ジョー・ベリーニ(Joe Bellini)氏はまず、企業におけるWebサービス導入の時間軸を示した。「導入スピードは鈍化したものの、来年半ばまでは企業内のアプリケーション統合に用いられ、2005年にはWSDL、UDDIを用いた企業間のシステム連携に用いられるようになるだろう」(ベリーニ氏)。Webサービスは、注目や関心を集めながらも実装という意味ではなかなか進まない。ベリーニ氏はその壁を、いかに収益と結びつけるかというビジネス面、セキュリティやトランザクションなど技術面の2つに絞り、講演のテーマとした。

 最初にベリーニ氏が強調したのは、Webサービスではなく、XMLそのものの導入メリット。最大手保険会社の仏AXA(アクサ)やBtoCのアマゾンなど同社の抱える顧客によると、XML導入のメリットは大きく3つあるという。1つ目は、シリアルではなくパラレルでの処理が可能となることから、ビジネスプロセスのサイクルタイムが短縮された点。2つ目が、統合作業を行う対象が個々のアプリケーションではなくXMLのバックボーンに集中することにより、システム統合にかかるメンテナンスやサポートなどのコストが削減されたという点だ。例えば、スイスのある保険会社では、削減率は80%にも達したという。3つ目は、XMLによりミドルティアをLinuxに置き換えるなどしてハードウェアコストが削減したというケースだ。これも、アマゾンでは50%、つまり半減という結果が出ているという。

 このように、収益という点ではWebサービスを待つまでもなく、XMLだけでも十分に投資の回収が可能であることがわかる。では、技術的に見ると、XMLそしてWebサービスのメリットとは何だろうか?

 ベリーニ氏はアプリケーションアーキテクチャの歴史を振り返り、1980年代から3つの時代に区切って定義する。最初の1980年代はホストベースの時代。ハードウェア、DB、OS、ネットワーク管理、システム管理、アプリケーションサーバ、レポーティング、インテグレーション、ワークフロー/ビジネス・プロセス・モデリング、ビジネスロジック、そしてプレゼンテーションというアプリケーションを構成するアーキテクチャは、すべて一体化したものだった。1990年代、その大きな固まりの下の部分、つまりハードウェア、DB、OSを切り離すという、クライアント/サーバ時代をもたらしたのがオラクルだ。「ハードウェアに依存せずに共通のデータベースを持つことにより、データの相互運用が可能となった」(ベリーニ氏)。だが同氏は、このモデルは、ビジネスバリューという観点から見ると、「最悪のモデルだった」と続ける。その理由は、「アーキテクチャ移行のためのコストがかかるわりにはビジネスロジックをアプリケーションと切り離せないためにビジネスバリューは生まないから」という。

 そして誕生するのがWebベースのアプリケーションサーバ中心のモデルだ。1990年代末に流行となったこのモデルでは、さきのアプリケーションの固まりがすべて分解可能となる。これは、製品やサービスのビジネスプロセスを市場の変化に応じ、自由に変更可能となることを意味する。つまり、前の変化で達成したデータの相互運用性に加え、新しいアーキテクチャはビジネスプロセスの相互運用を実現するものなのだ。そして、ビジネスのバリューは、先には分解できなかった、アプリケーションサーバから上の6層(アプリケーションサーバ、レポーティング、インテグレーション、ワークフロー/ビジネス・プロセス・モデリング、ビジネスロジック、プレゼンテーション)にある。前回の変化ではSQLが重要な標準だったように、今回の変化でも重要な標準がある。しかもそれぞれの層に対応した形で複数ある。J2EEや.NETはアプリケーションサーバ層に相当し、XMLはインテグレーション層に相当するものとなる。

 ベリーニ氏は最後に、「XMLは標準ベースの技術。簡単に使えて、多大なメリットをもたらす」と述べ、XMLの実現するビジネスプロセスの相互運用性の時代が、必ず訪れることを強調する。「オラクル時代、アーキテクチャの移行は5〜6年かかって実現した。今度は2〜3年で実現するだろう。世界経済の状況が芳しくないため、予測より遅れているが、このシフトは現実に起こっているもので、新しいアーキテクチャへの移行は必ず実現する」。

(編集局 末岡洋子)

[関連リンク]
日本エクセロン

[関連記事]
「XMLで何ができるのか?」に答えるとエクセロン (@ITNews)
アクセンチュアが唱えるWebサービス2005年普及説(@ITNews)
BtoB、ターニングポイントは来年?(NewsInsight)
開花には最低3年が必要、Webサービスの現実(@ITNews)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)