アジアで電子認証のデファクトを狙うエントラスト
2002/8/28
米エントラストの電子認証ソリューションを販売するエントラストジャパンは、東京を本部にして、アジアでの営業活動を活発化させると発表した。すでに米エントラストはエントラストジャパンへの出資比率を上げ、それをもって中国本土、香港、台湾をターゲットに電子認証ソリューションを売り込んでいく。
米エントラストの会長兼社長兼CEO ビル・コナー氏。「中国、日本がアジアの2大市場。日本は本部としてアジア市場の財務、プロダクトの責任を持つことになる」と述べた |
世界全体のIT投資が落ち込む中で、アジアのセキュリティ製品の売り上げは好調。米エントラストの会長兼社長兼CEO ビル・コナー氏によると、日本市場は「セキュリティ製品に対する関心が増大しており、エントラストジャパンの売り上げも堅調に伸びている」という。米エントラスト自身も2002年第2四半期のソフトウェア収益は第1四半期から11%の伸び。主力のWebポータル向けセキュリティ製品は前年同期比126%の大幅な増加になっている。
米エントラストはアジア拡大の本部となるエントラストジャパンの人員を充実させる。導入企業からのサポートを受け付ける人員を現状の12人から3倍に拡大、製品のカスタマイズを担当するプロフェッショナルサービスの人員も6人から15人に増員する予定だ。
今年4月に開設した日本独自の開発センターを活用することで、これまで半年から2年かかっていた製品のローカライゼーションの作業時間を短縮させる。米国での製品発売とほぼ同時に日本でも製品をリリースできるようにするという。Webページへのシングルサインオンを可能にするポータル向け製品「Entrust GetAccess」を携帯電話コンテンツ向けに対応させる「Entrust GetAccess Mobile Server」も近くローカライズして発表するという。
米エントラストがアジアでの事業を拡大する理由は、アジアでの電子認証ソリューションの売り込みが日本に比べて容易だからだという。米エントラストが中国などで狙う市場は政府系機関、金融、病院施設。いずれも政府の規制が強い市場だ。しかし、システムを一度導入して実績となれば、民間企業への導入に結びつく可能性が高い。政府が導入すれば地方自治体や公共機関に広がる。金融機関へ納入すれば関係する取引企業へも広がり、デファクトを勝ち取れる可能性もある。アジアでは自国の電子認証ソリューション企業が育っていないケースが多いため、システム全体を一括して受注できるというメリットもある。
一方で外資系企業に対するハードルが高いといわれる日本では、政府系機関へのシステム導入は難しい。大手システム会社など同業のライバルも多く、大規模な案件を一括して受注するのは困難だ。
エントラストジャパンにはセコム、米エントラストほかに、NTTデータ、ソニー、オリックス、トヨタ自動車、大手都銀など多数の企業が出資している。エントラストジャパンは、国内ではこれらの幅広いチャネルを生かして、システム会社とのパートナーを強みに販売拡大を進めるのが基本戦略。アジア本部の責任者はエントラストジャパンの代表取締役COO ブラッド・オーモンド氏が務め、それぞれの国で最適な事業戦略を探る。
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