[Gartner SYMPOSIUM
ITxpo2002 -IT投資の『選択』と『集中』-開催]
サーバコンピューティング、5年後の主役の座を射止めるのは?
2002/10/25
いまから5年後、2007年のサーバコンピューティングはどうなっているのだろうか。10月24日に開催されたガートナージャパン主催のイベント「Gartner SYMPOSIUM ITXPO 2002」の「エンタプライズ・サーバの戦略的選択」セッションで、リサーチディレクターの栗原潔氏は、単にテクノロジの進化にとどまらないサーバとサーバ市場の姿を描いた。
5年後、技術的な面で注目されるのは、NUMA(Non-Uniform Memory Access)アーキテクチャと、グリッドコンピューティングの進化だ。
NUMAとは、複数のマシンが巨大な1つの仮想マシンとして稼働する技術。従来のクラスタでは、複数のマシンそれぞれにOSが稼働しており、それぞれが協調動作するものだが、NUMAアーキテクチャで接続されたマシン上で動作するOSは1つである。一方、グリッドコンピューティングは宇宙からの電波を分析するSETI@homeのような大規模な分散処理のプロジェクトとして有名だが、現在のところパターンマッチングのような、分散して処理しやすい分野、特に科学技術計算などの分野でのみ使われている。
ガートナーの予想では、NUMAがハイエンドSMPサーバを置き換えることは考えにくいとしながらも、中規模以下の要件ではコストパフォーマンスの高いNUMAサーバが利用される可能性が高いという。一方のグリッドコンピューティングは、企業コンピューティングで要求されるOLTPやデータウェアハウスなどの処理には対応するためのブレークスルーが必要だが、それらを実現した後に登場する第二世代のグリッドコンピューティングは、バーチャルデータセンターとでも呼ばれるべき、現在のものとは全く異なる技術になるのではないかと予想されている。
栗原氏が「長期的な大革命」と最大のトピックとして取り上げたのが「PBCS(Policy-Based Computing Services)」。このままサーバ技術が高度化していくと、その複雑性を人間が管理できなくなり、それが性能や可用性、運用性向上のボトルネックになるという。その解決策として、サーバの管理性を飛躍的に高めるのがPBCSだ。
PBCSとは、自己管理、自己修復機能を持ち、ビジネスのルールに基づくポリシーに従って運用できるサーバシステム。例えばサーバ自身が、あらかじめ設定されたパフォーマンスに対する不足を認識すると、自己チューニングや資源再配置を行う。パフォーマンスを指定する方法として、マシンごとのプロセスの反応速度や優先順位などを指定するのではなく、「会計システムの反応速度」といった、より業務に近い言葉で指定できるようになる。ガートナーの予想では、PBCSは2010年まで段階的に実現されていくという。
2007年におけるサーバOSのシェアでLinuxは、Solaris、HP-UX、AIXに肩を並べるOSとしてシェアを拡大するという。ただし、企業向けのサーバアプリケーションの品ぞろえについては引きつづき十分なものではなく、Webサーバ、アプライアンス、グリッドコンピューティングなどの特定領域が中心になると予想された。AIXはIBMの注力により、Solarisに肉薄ないし凌駕(りょうが)するというが、中でも最大のシェアの伸びを示すのはWindowsだ。現在の32%のシェアを39%にまで拡大する。
Windowsの今後の課題として、セキュリティの向上と、エンタープライズ機能の充実が指摘された。Windows .NET Server 2003はWindows NT 5.1に該当するマイナーチェンジで、本格的なアップグレードは2006年のLonghornになるという。Longhornではワークロード管理やダイナミックパーティショニングなどが入ると見られるが、それでも機能面でまだUNIXに追いつかないと予想された。
(編集局 新野淳一)
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