[Interview] SASのデータ分析ソフト「JMP」とは?

2002/11/12

 SASインスティチュート ジャパンは、探索型データ分析ソフトウェア「JMP バージョン5 日本語版」を12月に出荷する予定だ。同社は昨年初めて日本語版(バージョン4)を投入したが、それから約1年でのバージョンアップとなる。

米SASインスティチュートの共同創設者兼取締役副社長のジョン・ソール氏

 JMPは、企業の製品企画開発部門や品質管理部門、医療・製薬業界、大学などの教育機関でよく利用されていたが、最近はビジネス分野での利用も多くなってきているという。こうした分野でのデータ解析は、汎用機やパワーのあるUNIXなどで高額なデータ解析ソフトを利用するのが一般的。が、数万件レベルのデータ解析では費用がかかりすぎ、そう簡単に導入することはできない。また、一般のデータ解析ソフトでは、データの傾向、仮説をある程度立ててから分析する必要があり、高度なデータ解析、統計解析の知識が必要とされる。

 JMPは、ある程度の知識は当然必要とされるが、データをさまざまな形で見ていくことで、データの傾向・意味を見つけることに主眼が置かれている。そういう手軽さもあって最近の日本での売り上げは、毎年倍増しているという。

 今回のバージョンアップでは、パーティション(決定木)、実験計画(I-最適化計画、BayesのD-最適計画)、クラスター分析、生存時間(信頼性)分析などのデータ解析が追加された。

 パーティションは、データを2つのカテゴリに分類して分析する手法。例えば男女別に分類したあと、男性を既婚者・未婚者で分類し、さらに既婚者を、といったように分類する。その中で、どのような傾向があるのかを分析するもの。実験計画は、特に製造業などでよく使われるデータ解析手法の1つ。例えば、ある製品の材料について、その材料の組み合わせや、温度、圧力によって材料がどのように変化し、製品に適した基準になるかを知りたい場合がある。その基準を探すために行うのが、この実験計画になる。クラスター分析は、データ間の距離や類似度などを図り、そこからデータをグループ化していく手法(グループ化することをクラスターという)。データマイニングなどでも使われる。生存時間分析は、医薬関連で使われることが多い分析手法で、生物や工業製品の寿命を分析するもの。

 価格は13万5000円(教育機関向け価格は5万4000円)で、有償アップグレードも用意されている(一般が5万8000円、教育機関向けが2万9000円)。また、新しく年間ライセンス版を用意する。これは、常に最新ソフトウェアとテクニカルサポートを提供するというもので、多数のライセンスを必要とする企業に最適だという。このライセンスでは、ライセンス期間にバージョンアップしてもバージョンアップ料金は必要なく、いつでも最新のバージョンを利用できる。

 今回、米SASインスティチュートの共同創設者兼取締役副社長で、JMPの生みの親であるジョン・ソール(John Sall)氏、同社 JMP事業部のセールス・マーケティング・ディレクタ クリスティン・ナウタ(Kristin Nauta)氏、それにSASインスティチュート ジャパン JMPジャパン事業部 事業部長の井上憲樹氏に、JMPバージョン5の特徴とともに今後の戦略などについて話を伺った。


――SASとは異なるクライアントPCで稼働する「JMP」をなぜ開発しようと考えたのか?

ソール氏 1980年代後半までは、プログラムを記述して分析するソフトウェアしかなかった。そこで当時、世に出始めたばかりのGUIがデータ分析で使えるのかどうかを社内で調査し、その成果を製品化した。われわれが注目をしたのは、グラフィックスとインタラクティブ性をデータ分析ソフトの世界に持ち込み、統計の実験ができるかどうかだった。

――JMPの製品のキーワードである「Discover(発見)とExplorer(探索)」とは、どのような意味か?

ソール氏 一般的に統計解析は、仮説が正しいかどうかを検証するためのものと考えられている。しかし、重要なことは、すでに知っていることよりも、新しいことを発見する、またその過程に意味があると考えたのだ。

――JMPを使うユーザー層は。

米SASインスティチュート JMP事業部のセールス・マーケティング・ディレクタ クリスティン・ナウタ氏

ナウタ氏 大企業が多い。業種も半導体、電子機器、家電、化学、その他製造といった分野だろうか。米国では、JMPはいくつかの産業の事実上の標準(スタンダード)となっている。日本では、1998年に井上氏が担当するようになり、売り上げは毎年倍増している。

――データ分析というと、純粋な科学技術計算といったイメージがあるが。

ソール氏 もちろん、純粋な科学技術計算もあるだろうが、製品設計や製造現場などで幅広く使われている。今回のバージョンアップでも、そうしたユーザー向けの機能アップが図られている。

――今回のバージョンアップの特徴は?

ソール氏 特にパーティション(決定木)、ニューラルネット、PLS(Partial Least Squares)の機能を新たに追加した。また、従来の実験計画やクラスター分析の機能を拡張した。どちらもユーザーから希望が多かったものだ。このクラスのソフトでこうした機能を持つのはJMPだけだろう。

――昨年のバージョンアップから約1年ほどしかたっていないが、バージョンアップが早くなった理由はあるのか?

ソール氏 ユーザーからの要望に合わせていくと、どうしても早くなる。今後は、1年から1年半ぐらいの間隔でバージョンアップしていくことになると思う。

――そのために年間ライセンス版を用意するのか?

SAS インスティチュート ジャパン JMP ジャパン事業部 事業部長 井上憲樹氏

井上氏 今後、バージョンアップが1年から1年半で行われ、そのたびにバージョンアップ料金を払うのは、企業など大量に購入している層には負担が重い。そのため、年間ライセンス料を支払ってもらうことで、年間サポートと新しいソフトが発売されてもそのまま利用できるようなライセンスを用意した。

――今後のバージョンアップではどのような機能が盛り込まれるのか?

ソール氏 現在、ゲノム解析向けの製品の開発を考えている。例えばその製品では、SASシステムとの連携ができるようにする予定だ。JMPでは、今後もユーザのニーズに合わせた機能拡張を考えている。

[関連リンク]
SASインスティチュート ジャパンのJMPの情報ページ

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