SASの新戦略、「インテリジェンス・レイヤー」でビジネスを拡大へ

2001/12/5

 SASインスティチュートジャパンは12月3日、都内で事業戦略記者説明会を開催し、同社の新戦略などを明らかにした。

SASインターナショナルアジア太平洋地域副社長 フィリップ・ベニアック氏は、「SASは25年間、常に変革を求められている」という

 まず、SASインターナショナルアジア太平洋地域副社長 フィリップ・ベニアック(Phillip Beniac)氏があいさつに立った。ベニアック氏は、「現在、SASジャパンの売上高は、SAS全体の10%、アジア太平洋地区の40%を占めているが、これを2005年までに、それぞれ20%、50%の割合にしたい」と抱負を述べた。その実現を支えるものが、現在同社が全世界で展開している「インテリジェンスレイヤー」(Intelligence Layer)だという。

 続いて10月にSASインスティチュートジャパン 代表取締役社長に就任したばかりの堀昭一氏が、同社の今後の事業戦略を説明した。

 同社は、今年になって統計解析システム「SASシステム V8e」を市場に投入した。このシステムは、オープンシステムアーキテクチャを採用したことで、今後、大きくビジネスが変わるという。「だれもがSASシステムにアクセスできるようになった。これを武器に、SASジャパンはパートナーとともにビジネスソリューション分野に進出できる」と堀氏は語り、今後オープンシステムアーキテクチャをコアとして、ビジネスを展開していく戦略を明らかにした。

SASインスティチュートジャパン代表取締役社長 堀昭一氏は、「当社の既存の技術を基に、ソリューションを拡大する」と語った

 次に、現在SASが全世界規模で提唱しているインテリジェンスレイヤーのコンセプトを説明した。すでに多くの企業では基幹システムを導入済みである。その大量のデータを分析するため、SAS V8eを導入している企業も多い。このオープンシステムアーキテクチャを採用したSAS V8eに、企業の顧客、組織、サプライヤなどに関するソフトウェアが載る(例えばCRMやSCM)。つまり、SASの製品が企業の基幹システムのデータとビジネスアプリケーションを結びつけることになる。堀氏は「V8eなどのSASのソフトが企業のビジネスを支える」と述べ、インテリジェンスレイヤーとは、企業の基幹システム上に載るアプリケーションなど(ビジネスレイヤー)の共通基盤にSASシステムがなるという。

 その戦略を推進するため、同社はビジネスソリューションの本格展開とパートナービジネスの拡大、社内組織体制の整備を行っていく。

 ビジネスソリューションでは、2002年上半期に財務会計ソフトの「CFO Vision ソフトウェア」の投入、現在ベータ版の評価を進めている医薬業向けのゲノム解析ソリューション、通信業向けの顧客解約防止ソリューション、製造業向けの品質管理ソリューションなど、業種別にソリューションを提供していくことなどが挙げられる。

 パートナービジネスの拡大では、同社が全世界規模で展開しているQPP(Quality Partner Program)制度導入の促進、コンサルティングファームとの協業、ハード/ソフトベンダとのパートナーシップの確立を挙げる。ソフトベンダとの協業のモデルとして同社が挙げたのは、米ブルーマティーニソフトウェア(日本ではネットイヤーグループ)との提携だ。両社の強い分野を組み合わせることで相乗効果があれば、今後も他社と提携していくという。

 最後の社内組織体制の整備では、ソリューションビジネス強化のため、マーケティング本部の新設、オープンシステムアーキテクチャ移行に伴う社員教育投資を行う。

 これら3つの戦略を実施することで、堀氏は、「SASは現在、世界でパートナービジネスを20%に引き上げたいと考えている。しかし、日本は新規案件の30%がパートナー経由であり、低いわけではない。これを来年はさらに30%台に引き上げる」と語った。

 しかし、同社の課題も浮かび上がった。全世界で展開を図っているインテリジェンスレイヤーという考えだけでは、日本でSASのソリューションを浸透させるには力不測ではないかという指摘に、「それはそのとおりだ。現在、それが何かを考えているところだ」と堀氏は述べたことだ。今後、同社がこの指摘への回答を示せるか、注目したい。

(編集局 大内隆良)

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