MSのスマートディスプレイが登場、普及を危ぶむ声も
2003/1/15
マイクロソフトは離れた場所にあるPCをワイヤレスで操作して、アプリケーションを実行させることができる「Windows Powered Smart Display」(スマートディスプレイ)を発表した。既存のPCを電話機の親機と位置づけた場合、液晶ディスプレイを見ながらコードレスで利用する子機の使い方ができる製品。マイクロソフトにとっては昨年のタブレットPCに続くコンシューマ向けの大型製品だが、「タブレットPC以上に普及に時間がかかるのでは」と指摘する声がすでに出ている。
スマートディスプレイの利用イメージ。キッチンでWebのレシピを参照しながらお料理 |
スマートディスプレイは親機のPCで表示されるデスクトップ画面をワイヤレスで受信して、搭載する液晶ディスプレイに表示するデバイス。ディスプレイはタッチスクリーンになっていて、ペン入力などで親機のアプリケーションを操作できる。PCのディスプレイだけを持ち歩く形で、親機がある場所から離れてリビングやベッドルームでアプリケーションを実行させたり、Webや電子メールを利用できる。ノートPCよりも軽量なのでソファーに寝転がるなどリラックスした姿勢でPCの機能をフルに利用できるという。
スマートディスプレイはWindows XP Professionalのリモートデスクトップ機能を利用。親機のPCにはWindows XP Professionalをインストールしておく必要がある。スマートディスプレイにはWindows CE .NETをベースにしたOSである「Windows CE for Smart Displays」が搭載されている。スマートディスプレイにはキーボードは搭載されないが、ソフトキーボードの機能があり、電子メールなどの文字入力をサポートする。親機とのワイヤレス機能は当初IEEE 802.11bをサポート。802.11a、802.11gなど、高速な通信手段もサポートする予定で、親機でDVDを再生して、スマートディスプレイで閲覧するという使い方が可能になる。親機のPCとスマートディスプレイの間の通信は暗号化され、「セキュリティの問題はない」(マイクロソフトのニューメディア&デジタルデバイス本部 マーケティング部 部長 御代茂樹氏)という。
マイクロソフトのニューメディア&デジタルデバイス本部 マーケティング部 部長 御代茂樹氏 |
スマートディスプレイの製品はまず、NECと富士通が発売する。NECの「スマートディスプレイ SD10」は10.4型TFT液晶を搭載し、重さは約1.5キロ。キッチンなどで利用することを想定して防滴仕様になっている。PCの周辺機器として2月6日に出荷する。NECのWebストアでは9万9800円で販売される。富士通は単体ではなく、デスクトップPCとセットで販売する。
マイクロソフトではスマートディスプレイに対していつものように自信たっぷりだが、急速な普及を予想する声はほとんどない。機能の面からではなく、環境面から普及が難しいと予測される。普及が遅れる理由の1つは、コンシューマ向けのPCにWindows XP Professionalがほとんどインストールされていないということ。企業向けは別にしてコンシューマ向けではHome Editionがほとんどで、スマートディスプレイを使える環境になっていないのだ。マイクロソフトでは、「XP Professionalを搭載するホームPCは多くなってきている。HomeからProfessionalにアップグレードさせるプログラムも提供している」と説明するが、スマートディスプレイのためだけにXP Professionalにアップグレードするユーザーは少数だろう。
NECの「スマートディスプレイ SD10」 |
普及を妨げるもう1つの理由は価格。NECが発売するスマートディスプレイ SD10は9万9800円。あと5万円も追加すればノートPCが購入できる価格だ。ノートPCなら自宅外でも利用できるが、スマートディスプレイは親機があって初めて動作する周辺機器。量産が本格化して、価格が下がるまでは一般のユーザーが手を出すのは難しそうだ。
XP Professionalが必要だったり、ワイヤレスLANに対応することを考えると、スマートディスプレイはホームユースではなく、エンタープライズ分野での利用が期待できるようにも思える。カスタマサポートでの活用などのソリューションが生まれる可能性がありそうだ。
(垣内郁栄)
[関連リンク]
マイクロソフト日本法人の発表資料
NECの発表資料
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