Webサービスを統合したグリッドの標準規格が決定

2003/3/5

 分散したコンピュータをネットワーク接続し、リソースを共有することで大規模処理を可能にするグリッド・コンピューティングの国際標準規格が、3月4日から東京で開かれている国際会議で決定する。グリッド・コンピューティングは学術研究分野での利用が先行しているが、国際標準規格が決まることで産業界への拡大が期待される。

グローバル・グリッド・フォーラム会長のチャーリー・キャトレット氏

 会議を主催するのは、米IBMや米アルゴンヌ国立研究所、米オラクル、英国のUK e-Science Programme、富士通、NECなど日米欧の企業や研究機関が組織する「グローバル・グリッド・フォーラム」(GGF)。3月4〜7日の予定で、グリッド技術の標準化を図る第7回目の国際会議「GGF7」を開催する。GGFはこれまで欧米で会議を開いてきた。アジアで開くのは今回の東京が初めてだ。GGF会長でアルゴンヌ国立研究所のチャーリー・キャトレット(Charlie Catlett)氏は、「GGFには日本の研究者の参加が多く、技術的なリーダーシップを発揮している」と東京開催の理由を説明。国際標準規格が決まることで「グリッド技術のフレームワークとなり、研究が進むだろう」と述べた。

 最終案として決定されるのは米IBMなどが策定した「Open Grid Services Architecture」(OGSA)。グリッド管理ツールを開発する「Globusプロジェクト」の代表で、OGSAの策定にかかわった米シカゴ大学情報科学教授、アルゴンヌ国立研究所 シニア・サイエンティストのイアン・フォスター(Ian Foster)氏は「OGSAはグリッド技術におけるTCP/IPだ。OGSAが基盤になって相互運用性を実現できる」と説明。さらに「グリッド技術はオンデマンドでリソースにアクセスするための技術。また、Webサービスは分散コンピューティングの基本的な問題を解決する技術で、OGSAはWebサービスとグリッド技術を統合した規格といえる」と述べた。

 フォスター氏はグリッド技術の標準規格が決定されるメリットとして、「グリッド技術の潜在性がビジネスの分野で発揮できる。異機種間でリソースやデータを共有することで、規模のメリットを産業界も享受できるようになるだろう」と指摘。「OGSAに準拠した製品をベンダが積極的に投入できるようになるだろう」と述べた。OGSA策定後は「アプリケーション固有のサービスをグリッドで提供することが課題になる。科学、産業界にグリッド技術のトータル・ソリューションを実現できるようになるだろう」と語った。

(垣内郁栄)

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