みんなで踊ろうMVCダンス

2003/5/24

豆蔵会長の羽生田栄一氏(左)と建築家 中埜博氏(右)

 ソフトウェア工学研究会パターンワーキンググループは5月23日、早稲田大学理工学部で設立記念セミナーを開催した。主査は豆蔵会長の羽生田栄一氏。ソフトウェアのパターンに関する実践、研究、学際の3つのタスクを通した活動を開始するとともに、ソフトウェア開発と共通項の多い建築分野のエンジニアとも共同活動やフィールドワークなどを展開していく予定。

 今回の設立記念セミナーで基調講演の演壇に立ったのは、建築家であり「まちづくりカンパニー・シープネットワーク」でパターンランゲージを用いたコミュニティ・デザインを追求する中埜博氏。
 
 UCバークレー校で、パターン・ランゲージの創始者として著名なC.アレクサンダー氏に師事した経歴を持つ中埜氏は、街の構造とその街の住人の関係を例にあげながら、街の住人にとっての理想的な街づくりのプロセスを、自身の体験を通して解説した。
 
 「個々の住人の小さな願いをボトムアップ方式で合意形成ルールに育て上げ、少しずつ修復を繰り返していくことで、理想的な街を作り上げる」と中埜氏は言う。このプロセスは、あくまで建築分野におけるコミュニティの再構築についての話だったが、住人の願いをソフトウェア開発における要件とし、その要件の共通項をまとめて、練り上げていったのが(建築でもソフトウェア開発でも共通の意味である)パターン・ランゲージということになる。合意形成ルールとは、完成品に対する開発スタッフ間の共通の目標、修復の繰り返しはまさに、インクリメンタルな開発手法にほかならない。

 また、中埜氏は「設計段階ではイメージのわきにくい事柄は、住人(ユーザー)に実際に体験してもらうことで、設計の修正を加えていくことが重要」だとし、言語(記号)だけではなく、体験の重要性を訴えた。このことも、ソフトウェア開発の状況に対して重要な示唆を与える。

MVCモデルを体を使って体得できる「MVCダンス」の実演

 「結局、建築もソフトウェア開発も、生物学的な視点からとらえるのが一番妥当なのではないか、と考えている。すなわち、すべての生物には遺伝子が存在するが、その遺伝子は、少ない要素で多様な組み合わせを生み出していることは周知の通りだ。ここでいう、遺伝子の少ない要素というのが、まさにパターン・ランゲージであり、パターンの組み合わせによって、多様な建築、多様なソフトウェアが生み出される」と話す。

 中埜氏の講演を受けて、羽生田氏が、ソフトウェア開発の身体性に基づくパターン教育の試みを発表、MVCモデルを体を使って体得できる「MVCダンス」の実演を行った。Model、View、Controllerに扮(ふん)した聴講者たちが、MVCそれぞれの動作を行い、相互にコミュニケーションをとることで、本来抽象的な概念を具体的に学習できるという。

(編集局 谷古宇浩司)

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(社)情報処理学会 ソフトウェア工学研究会 パターンワーキンググループ

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