インテルの“情シス部”に学ぶ正しいクライアントPC管理
2003/5/29
ノートPCが6万5000台、デスクトップPCが3万5000台という膨大なクライアントPCを世界中のオフィスで使っているインテル。PCの買い替えやメンテナンス作業、セキュリティ対策など、管理の方法を間違うとコストが一挙に膨れ上がる。インテルの情報システム部(以下、情シス部)は、どのようにクライアントPCを管理しているのか。インテル日本法人の情報システム部長 海老澤正男氏が「一般企業でも参考になるPC管理のベストプラクティス」を明らかにした。
インテル日本法人の情報システム部長 海老澤正男氏。「情報システム部は単なるサポート組織からビジネスに直接貢献することが求められる」と述べた |
インテルのPC購入の基本は「Buy High」。つまり、発売されているPCの中でできるだけ高スペックのPCを購入するということだ。過去にはスペックが低い低価格PCを購入していたが、OSをWindows NTからWindows 2000にアップグレードさせようとしたらパフォーマンス不足に直面。そのため「予定よりも早いアップグレードを行うことになり、2万台分のPCで約4000万ドルの予定外出費になってしまった。事実上、PCの耐用寿命を短くしていた」(海老澤氏)という。このような「過去の苦い経験」から上位機種を購入する方針に転換。現在は、将来のOSやアプリケーションのアップグレードにも余裕を持って対応できるよう上位機種を購入しているという。性能上の余裕だけでなく、新機能を利用できることから「トータルで見ると安くなる」(海老澤氏)というのもBuy Highの理由だ。
インテルではこのBuy Highの方針に基づき、2003年中にインテル社内で利用されているクライアントPCの3分の1に当たる3万5000台を、最新のCentrinoプロセッサ搭載ノートPCと、Pentium 4プロセッサ搭載のデスクトップPCに入れ替える予定。基本的には3年〜3年半の期間でPCを入れ替えていくという。インテル日本法人はすでに95%の社員がノートPCを使っているが、そのノートPCも順次、Centrino搭載ノートPCに交換していく。海老澤氏によると、社内の情報システムに割かれる予算は多くの一般企業と同様にインテルでも増えていないが、「企業競争力維持のためプランを遂行する」という。
利用期間が長くなり故障したPCを、修理するかそれとも買い換えるかという選択も情シス部が悩むところだ。インテルでは、この選択のために「修理可否判断ツール」を開発。PCの性能も考慮に入れて、修理費、またはPC買い替えにかかるコストを計算し、決定するという。
そもそもインテルが社内のクライアントPCについて、このような管理手法を取り入れたのは、ハード、ソフト、サポートなどPC1台当たりのTCOが、一般的企業に比べて2倍以上の高コストになっていたことがきっかけ。1995年に判明したという。特にPCのトラブルでエンドユーザーの作業が中断されて発生する時間ロスが増大していた。そのためインテルでは上記のPC管理手法に加えて、社内のサポートスタッフがリモートでPCにアクセスし、障害を解決する取り組みを実施。時間ロスによるコスト増大を防ぐようにした。PCにリモートアクセスするサポートセンターはマレーシア・ペナンにあり、日本語を話す現地スタッフが常駐しているという。
インテルはTCOを年率10%削減することを目標として設定。PCトラブルにかかるコストの削減や社内でのPCリサイクルなどを進めた結果、1998年には1995年当時のTCOと比較して53%分のコストを削減できた。2002年のデスクトップPCにかかるTCOは年間2500ドルで、一般企業のTCOを下回るようになったという。
海老澤氏は効率的なPC管理の手法として、システムを複雑にし、コストを増大させる非標準プラットフォームを採用しないことと、人の関与を最小化することを説明。「オートメーション(自動化)とスタンダード(標準化)が実現のキーになる」と強調した。インテルは2006年までに、特定のビジネスプロセスで社内の生産性を50%向上させたうえで、IT製品とサービスにかかる1台当たりのコストを50%削減することを目指している。
(垣内郁栄)
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