[CeBIT america開催]
ピープルソフトCEO、基調講演でのオラクルのあしらい方

2003/6/24

米ピープルソフト 社長兼CEO クレイグ・コンウェイ氏

 米国ニューヨークで開催されたCeBIT americaで、現地時間18日、米ピープルソフト 社長兼CEO クレイグ・コンウェイ(Craig A. Conway)氏が基調講演を行った。本講演では、報道陣をはじめ聴講者が、Oracleによる買収問題へのコメントがあるのではないかと注目を集めていた。しかしコンウェイ氏は、これからのエンタープライズアプリケーションについて、今後もさらに必要になること、またその価値について強く説き、買収問題について直接的な言及を避けた。

 「Technology makes differences」と冒頭で語ったコンウェイ氏は、ボイスメールや電子メールがいかにビジネスに新しいチャンスを投げかけたかを語った。話題がビジネスにおけるオンラインの意味と、その延長線上にあるビジネスアプリケーションの役割へと移ると、コンウェイ氏は「すべてのビジネスプロセスにおいてアプリケーションはオンライン化される」と述べた(後述)。さらに「低コスト、トレーニングやアクセスのしやすさはもちろんだが、重要なのはビジネスプロセスが関係者(participant)に直結すること」だと語った(画面)。

画面 コンウェイ氏は、ビジネスプロセスとアプリケーションが直結することが、エンタープライズ系のビジネスアプリケーションでは重要だと述べた

 インターネット環境の利点についてコンウェイ氏は、「特別なドライバやソフトを必要としない、リアルタイムな情報、統合的、統計的、ニーズにあった適切なコンテンツ」といったキーワードで説明した。

 さらにこれからのビジネスアプリケーションの在り方について、「現在抱える問題があるとしたら、それが明日のソリューションになり得る」と語った。そして、コンウェイ氏は、現在抱える問題の1つとしてアプリケーションを導入する際のコストの高さを指摘した。これを低くすることが、ビジネスアプリケーションをさらに普及させることになるという。現在はパッケージを導入する場合、各会社の仕様に合わせてカスタマイズするのが普通だ。導入する会社にエンジニアが出向き、そこで作業し、納品する。このため導入コストが高くなってしまう。コンウェイ氏は、これをすべてオンライン化すれば導入コストはさらに低くなるだろうと語った。

 IT業界の展望についてコンウェイ氏は、1つのOSやハードに特化しては成長がないと主張する。「“業界標準”という考え方は信頼性、サポート性、生産性という意味で、利用者にとってもわれわれにとっても利益がある。しかし、1つのものだけに依存してしまうのは避けるべきだ。約20年前、IBMの独占はUNIXによって打ち砕かれたが、現在はマイクロソフトによる独占が残っている。われわれがLinuxをサポートするのは、マイクロソフトやIBMを否定するためではない。ただ、ハードウェア、OS、データベース、アプリケーションサーバなどを含め、業界とその関係者たちが自分自身で選択可能な環境が大切だと思っているたからだ。経済は厳しいが、いまが重要なビジネスを行う時である」と語り、IT業界が今後取るべき道を示唆した。

 また、「システムは、たった1つのパッケージで構築されることはない。例えば2つないしは、それ以上のビジネスアプリケーションが統合されて構築されているのが普通である。われわれの分野でもSAPとオラクル、ピープルが別々にやりながら、統合、共存する部分を持っていることが大切(integrated out of the box)」とし、1つのシステムですべてを統合するのではなく、いくつかの共存する部分があり、それを統合する大切さを強調した。

 コンウェイ氏は、オラクルによるピープルソフトの買収問題については触れなかった。だが、ピープルソフトによる米J.D.エドワーズ買収計画については、「説得力があり利益となるもので、それはウォールストリート(金融業界)、業界アナリスト、そしてライバル会社の関心を強く引いた」と述べた。つまりコンウェイ氏は、オラクルをライバル会社の1つとし、“ライバル会社の関心を強く引いた”という一言で軽くあしらってみせた。オラクルによる買収金額の引き上げによる新買収提案、それに対するピープルソフト経営陣による新提案拒否といった一連の流れの中にあって、このあしらいこそがコンウェイ氏によるオラクルへの返答だったのかもしれない。

(遠竹智寿子)

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