オラクルの次期DBは“ブラックボックス”になる
2003/6/10
日本オラクルは、次期データベースで自律機能を強化し、グリッドコンピューティングのインフラとして売り出す考えを明らかにした。「完全にブラックボックス化する」というのが、次期データベースのゴールになるようだ。
日本オラクル マーケティング本部 9iビジネス推進グループ シニアマネージャー 杉崎正之氏 |
日本オラクル マーケティング本部 9iビジネス推進グループ シニアマネージャー 杉崎正之氏は次期データベース製品について、「DB自身が考える自律機能を搭載する。DB自身がパッチを取りにいったり、SQLチューニングを行ったり、バックアップリカバリを行う」と説明。「DBのカーネルに自律系を埋め込むのが最終形となる」と述べた。管理ツールの指示を受けて、DBがさまざまな操作をするのではなく、DB自身が自らの状況を認識し、適切な対応を採れるようにする。杉崎氏は「管理者が困らないよう次期DBは完全にブラックボックス化する」と述べた。
オラクルが、コンピュータリソースをネットワークで共有する「コンピューティング・グリッド」を実現するソリューションとして強調しているのが、「Oracle9i Real Application Clusters」(RAC)。オラクルではRACをグリッドを実現するキーテクノロジととらえていて、「RAC+Intel+ブレード+Linuxが“勝利の方程式”」と説明している。また、杉崎氏はRACに今後盛り込むテクノロジとして、“自動チューニング”と“自動管理”、“自動認識”を挙げた。「必要になったらグリッド上のリソースを使っていくテクノロジがRACに盛り込まれる」と述べた。今後は、負荷に応じてイントラ内のRACが動的にリソースを割り当てるような機能が追加されるとみられる。
杉崎氏はオラクルのグリッドコンピューティング戦略を「既存テクノロジの線上にグリッドを構築すること」と語った。Unbreakableと仮想化、情報の共有をキーワードに、「インストールベースのすべてのオラクルのテクノロジをグリッドに導く」と注力する方針を強調した。
■オラクルがピープルソフトを買収へ
会見の席上では、米オラクルが6月6日に発表した米ピープルソフトの買収提案についても説明。日本オラクルは買収提案について、「コメントする立場にない」と述べたが、日本オラクルの取締役専務執行役員 セールス・マーケティング・開発統括担当 山元賢治氏は、「営業としては大変興奮している」と述べた。
米オラクルは、1株当たり16ドルで米ピープルソフトの公開買い付けを開始すると発表。ピープルソフトは6月2日に同じERPベンダの米J.D.エドワーズを買収すると発表したばかりで、オラクルの買収計画は、このピープルソフトによるJ.D.エドワーズの買収を阻止するのが目的と指摘する声もある。
ピープルソフトとJ.D.エドワーズの売上高を合算すると最大手SAPに次ぐ規模になると見れていて、オラクルは業界3位に転落することになる。米オラクルの会長兼CEO ラリー・エリソン(Larry Ellison)氏はピープルソフトの買収提案について、「オラクルはピープルソフトの製品を新規顧客に積極的には売るわけではないが、すべてのピープルソフト製品により高度なサポートを提供する。さらに、ピープルソフト製品からの先進的な機能をOracle E-Business Suiteの将来のバージョンに取り込む」と説明。つまり、ピープルソフトの製品ブランドを消滅させ、必要な機能はE-Business Suiteに盛り込むことを計画しているようだ。
ピープルソフトはオラクルによる買収提案に激怒。CEOのクレイグ・コンウェイ(Craig Conway)氏は、「性悪な企業からしかけられた暴虐な行為だ。買収提案は明らかに、ピープルソフトによるJ.D.エドワーズの買収を妨害するためだ」などと怒りのコメントを発表した。
(垣内郁栄)
[関連リンク]
日本オラクルの発表資料
米オラクルの発表資料
米ピープルソフトの発表資料
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